情報編

 

1  山小屋・登山登録

 マウントクック国立公園の大部分の小屋には、マウントクックビレッジにある国立公園ビジターセンターの無線機が設置され、常に受信状態になっている。また、毎日19時に定時交信があり、各小屋の滞在パーティ名の確認と、天気・風・雪崩の予報の通報が行なわれる。ただし、天気予報はしばしば外れる。おそらく下界の天気予報をそのまま使っているため、山の天気には当てはまらないことが多いのだろう。

 マウントクック空港と連絡して下山用飛行機を頼むための無線機は、タスマンサドル小屋だけに設置されている。他の小屋から飛行機を呼びたいときには、ビジターセンターの無線機を使って、タスマンサドル小屋に中継してもらうか、あるいはビジターセンターから空港へ連絡してもらうようだ。雪が降っている場合、ビジターセンターの無線機では明瞭に交信できたが、マウントクック空港用の無線機では電波の減衰が激しかった。

 タスマンサドル小屋には、食堂兼寝室になっている大部屋と入口の小部屋がある。ベッドは16人分あり、マットが敷かれている。なべ・フライパン・まな板・包丁・食器も備わっている。太陽電池式の照明もあるが、1週間くらい悪天候が続くと使えなくなるようだ。無線機用のバッテリーは照明用のものとは別になっており、ビジターセンターが定期的に充電している。入口の小部屋には、スキー置き場や燃料戸棚がある。トイレは立派な別棟にある。夜間や吹雪でトイレまで行けないときには、入口の小部屋にあるバケツをトイレ代わりにし、汚水は入口左手の崖下へ投げ捨てる仕組みになっている。

 入山前と下山後には、ビジターセンターで入山・下山の登録証を提出するべきである。この登録の際に、小屋代も払うことができる。センターの玄関右手には、営業時間外に登録証を記入・投入するコーナーが設置されている。

 

2 入下山用の小型飛行機

 Mount Cook ski planes(ホームページhttp://www.mtcookskiplanes.com)が、マウントクック空港からタスマン氷河・マーチソン氷河・フォックス氷河・フランツジョセフ氷河などのあちらこちらへ、4人乗りと7人乗りの飛行機を飛ばしている。山の西麓にあるフォックス氷河ビレッジとフランツジョセフ氷河ビレッジからも同社の飛行機が飛んでいるが、こちらの方が料金は高い。

 天気が悪くて下山用の飛行機が来ない場合に備え、最低2日間の予備日が必要である。そして、登山計画を立てる段階で、下山予備日の長さや使い方について、次の作戦のうちどれを採用するか決めておくべきだろう。

* 作戦1:下山予備日を使い果たしても、飛行機が迎えに来るまで小屋で待ち続ける。日本行きの飛行機に乗り遅れるのは仕方無い。日本の留守本部への連絡は、国立公園ビジターセンターに無線で頼む。

* 作戦2:下山予備日1日目の朝になっても天気が悪ければ、すぐに歩いて下山し始める。

* 作戦3:登山期間を短くしてでも、下山予備日を3〜4日間、あるいはもっと長くしておく。

 飛行機に乗るときには、ホワイトガソリンやガスカートリッジをザックから出して手元に置かなければならない。飛行機に緊急事態が発生した場合に、それらを窓から投げ捨てられるようにするためである。

 

3 山スキー適季

 タスマン氷河やマーチソン氷河の山スキー適季は、冬〜春(6〜11月)である。この時季の登山者は少なく、静かな山行が楽しめる。タスマンサドル小屋の宿泊者ノートにも、1ヶ月当たり数パーティの名前しか書かれていなかった。ただし、ヘリスキーやセスナスキーはしばしば行なわれていて、タスマン氷河・マーチソン氷河周辺の山頂や稜線へスキー客を降ろすヘリもいるようだ。こういうヘリがたくさん飛んで来るようだと、幻滅するかもしれない。8月上旬に照明無しで行動できるのは、7時から18時までである。

 

4 装備

 氷河用の登攀具が必要である。行動中はカッパを着ていれば十分だが、小屋で停滞しているときは寒いのでダウンベストなどを持参する方が良い。今回の山行中の気温はマイナス10〜プラス5℃だった。ホワイトガソリンやプリムス互換のガスカートリッジは、クライストチャーチのリッチフィールド通りとコロンボ通りの交差点付近に数軒ある登山用品店で購入できる。食料や雑貨は、クライストチャーチのサウスシティ・ショッピングセンターなどで買える。

 

5 地図・ガイドブック

 タスマン氷河とマーチソン氷河の山スキーに必要な5万分の1地形図は「I35 Whataroa」「I36 Godley」である。歩いて下山するには「H36 Mt Cook」も要る。クック周辺の山域全体を見るには、11万分の1のParkmap「Mount Cook & Westland第5版, Department of Conservation発行, 1999年」が良い。これらの地図は、東京のマップハウス(ホームページhttp://www.maphouse.co.jp/)へ注文することができる。

 ガイドブックには下記のものがあり、ニュージーランド山岳会(ホームページhttp://www.alpineclub.org.nz)へ注文することができる。

* Aoraki Mount Cook第3版, Alex Palman著, the New Zealand Alpine Club発行, 2001年

* New Zealand Backcountry Skiing, James Broadbent著, the New Zealand Alpine Club発行, 2004年

 

6 レンタカー・宿

 移動にレンタカーを使うなら2WDの乗用車で良い。クライストチャーチ〜マウントクックビレッジ間の道路に積雪は無いからである。冬にはスキーキャリア付きのレンタカーも多い。希望の車種を確保したければ、予約しておく必要がある。クライストチャーチ空港のレンタカー営業所は24時間開いているわけではないが、営業時間外用の鍵返却口はある。

 マウントクックビレッジの宿は、山小屋を除けば、ハーミテージホテルと同ホテル系列のモーテルか、マウントクック・ユースホステル(ホームページhttp://www.stayyha.com)だけである。ツイン1部屋1泊当たりの料金は、ハーミテージ系列の宿で1万7千円以上、ユースホステルで5千円である。ユースホステルは冬でも混むので、予約しておく方が良い。朝食は、ハーミテージホテル内のレストラン(1,400円くらい)で取るか、ユースホステルの台所で自炊するしかない。夕食時は国立公園ビジターセンターの隣のレストランThe Old Mountaineersも開いているが、通常の営業時間は20時頃までのようだ。

 

7 主な費用

* 日本〜クライストチャーチ往復の航空券:1人当たり16万円

* マウントクック空港〜タスマンサドル小屋間の小型飛行機:4人乗り3万4千円、7人乗り4万8千円(1機当たり片道の料金。定員には操縦士も含む。)

* レンタカー:フルサイズセダン9日間で1台当たり8万円(任意保険・税込み)

* タスマンサドル小屋:1人1泊当たり1,600円

積雪構造へ

ニュージーランド タスマン氷河とマーチソン氷河