あんときゃ夜走り朝帰り



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開設2000/05/20






山田深夜is?

1961年、福島県須賀川市生まれ。
地元の高校を卒業後、神奈川県横須賀市で私鉄職員として約20年勤務。1997年、文筆業に専念するために退職。バイク雑誌各誌に小説を発表。
2005年、寿郎社より『横須賀Dブルース』、『千マイルブルース』の二冊を上梓。
2005年、『横須賀Dブルース』が「本の雑誌」上半期ベストテンに入る。
2007年、角川書店より『電車屋赤城』を上梓。

2007年、『電車屋赤城』が第29回吉川英治文学新人賞にノミネートされる。
2008年、講談社より『ひとたびバイクに』を上梓。
2009年、『リターンズ』(徳間書店「問題小説」にて前年掲載)が、日本推理作家協会賞短編部門候補となる。
2011年、徳間書店より『ロンツーは終わらない』を上梓。
2017年、双葉社より『横須賀ブロークンアロー』を上梓。
2018年、双葉社より『ひとたびバイクに』を『ひとたびバイクに ツーリングを愛する者たちへ 』として文庫化。





 




今日の雑記

私は白いソックスの上に、黒い悪魔を見つけた。
再びの、ノミである。
居室内は隈なく清掃し、除去したはずで、
数週間振りの再発現であった。
もちろん、喰われる前に迅速に除去した。
それで、である。
その忌まわしい粒を目にしたとき、
なぜか私は「懐かしい」と感じてしまったのだ。
なぜ、そのように感じたのか? 
私はとても困惑した。
マゾではあるまいし、
あの眠れぬほどの痒みを懐かしがるわけはないのだ。
そしてよくよく考え、思い至った。
あの、ノミとの格闘の日々を懐かしく感じたのだ。
バルサンを焚き、粘着テープを持って床を這い、
庭では汗だくになり薬を撒いた。
仕事をしていても数分に一度、足首を確認した。
それら作業と全身の猛烈な痒みで、精神がおかしくなりそうだった。
だが努力の甲斐あり、庭にも室内にもノミはいなくなった。
その時の達成感は言葉に尽くせない。
その格闘の日々を懐かしがり、
そしてもう一度あの達成感が味わえることを喜んだのだ。
それでさらに深く考えると、
あれは「戦い」だったのだと気づいた。
大袈裟ではあるが、
数千、数万の敵とひとりで戦った戦争だったのである。
当て嵌めてみればバルサンはガス攻撃であり、
ジョウロでの薬品散布は絨毯爆撃であった。
あとには累々とした屍。
私はそのジェノサイド、大量殺戮に快感を覚えた。
それでも生き残りゲリラ化した敵には、
とてもてこずったが、この索敵にも高揚感を覚えた。
そうして私は最後の一兵を執念で見つけ出し、
喜びながら捻り潰した。
私は平和を勝ち取ったのである。
そこに再び敵の発現。
そして「懐かしい」という感慨。
つまり私は再現したノミに「戦争」を懐かしがり、
勝利のカタルシスを懐古したのだ。
ともかく私は、ノミ駆除を戦争として楽しんでいた。
談志師匠は、
「戦争はなくならないよ。人間は好きなんだよ、殺しっこが」
と話されていた。
私も、戦いというのは人間の本能であり、
後付けの諸々が蓋をしているだけなのだと思っている。
だからこそ、そんなタブーを解き放つ、
戦争映画なり暴力小説が好まれるのだ。
つまり誰もが心の奥底で「殺しっこ」を欲している。
私は白いソックスの上に、黒い悪魔を見つけた。



双葉社 ひとたびバイクに



( 2018.8.13 )