カクテルは、どうして生まれたのでしょう

『トマトに塩をかければサラダになる』料理界の名言だそうです。それならば『酒は混ぜ合わせればカクテルになる』と言ってもいいはず。お気にいりの酒を持って山にのぼり、清らかな湧き水で割り、爽やかな空気とともに飲み干すのもカクテル。都会の夜のざわめきの中で、バーテンダーの絶妙なテクニックで作られたカクテルを、二人で見つめあいながら味わうのもカクテル。ひとときの酔いを楽しむのがカクテルの心。野暮な質問はなし,というのが最上のマナー。

しかし、カクテルにはエピソードも充分に添えられています。ただし、その真贋を確かめないのが粋というもの。カクテルを日本語に直すと「コックのテール」。雄鳥の尻尾というふざけた名前。

ある説によれば、十八世紀アメリカで、ホテルの主人の軍鶏が行方不明になり、見つけた者は主人の美しい娘と結婚させるといったら、若い士官が軍鶏を抱えてきた。お祝いにホテルの酒場でいろんな酒をまぜて飲んだら美味しかったからとか・・・。

別の説によれば、メキシコの酒場を水兵たちが訪れ、ミクスト・ドリンクを小枝でかき混ぜていた少年にその酒の名前を聞いたら、彼はその小枝の名前を聞かれたと思い、コックテールと呼ばれていた木の名を答えたからという。

かと思えばメキシコの古い王国にコキテルという王女がいて、敵軍を追い払った若い兵士に酒を混ぜた飲み物を作り、妻となったという話もある。

かなり本当っぽい話としては、アメリカはニューオリンズのフランス系の薬屋がアルコールに卵を混ぜて売った。これが評判になり、フランス系アメリカ人のあいだでコクチュと呼ばれ、これがなまってカクテルとなった。

いやそうではない実は・・・という珍説、奇説入り乱れ、実のところはよく分からない。

気に入った話が本当の話、気に入ったカクテルが最高のカクテル。こだわってもカクテル、こだわらなくてもカクテルである。