第百九話
ユイは以前、ゲンドウを愛しているといっていたが、
その割には再会直後にコアにしたりと扱いが酷かったように見受けられた。
しかしそれはただ単にユイが
「それはそれ、これはこれ」
と、極端に割り切りの出来る人間だというだけにすぎず、
ユイのゲンドウに向けられている愛情は偽りではなかった。
その証拠に近い将来、ユイがゲンドウとの間に第二子を出産することで証明される。
生まれたのは三つ子の女の子だったという。
しかも気づかなかったとはいえユイが妊娠中にコアに戻ったりしたためか、
生まれた三つ子は特殊な能力を持っていたとかいなかったとか。
閑話休題。(話を本筋に戻すとき、または本題に入るときに用いる言葉)
エヴァンゲリオングレーテル
時田さんがネルフにやってきた。
この人は以前、ジェットアローンとかいうかっこわるいロボットを作った人だ。
その時にJAは初号機と模擬戦をしたけど全く相手にならず散々な結果だったのに、
また作ったらしい。全く懲りていない。
よくスポンサーがついたわねえとミサトさんは驚いていた。
今回は遠隔操作ではなく、人工知能の搭載に成功したのだという。
確か母さんですらまだそういうのは大きくなりすぎるので搭載は無理だとか
言ってたはずだけど、本当ならすごいことだ。
・・・で、実際にそのジェットアローン改を見てみると、もんのすごく大きな、
本体の数倍あるランドセルを背負ったロボットがいた。
後ろから見たらぬりかべにしか見えない・・・無理やり背負っただけじゃないか。
とても重そうだ。
ミサトさんなんて指をさして大笑いしながら床を転げまわっている。
こんなに大きいのでは背負うのがやっとで使徒と戦うだけのパワーは残ってないんじゃないかと聞いたら。
「原子力だから大丈夫、ハハハ」
と言う。
防御力は、ATフィールドは展開できるのかと聞くと。
「それも時間の問題ですよ、ハハハ」
とまた笑う。
・・・つまりまだなんだ。
だったら使徒戦には使えないじゃないか。
放射能の詰まった風船じゃないか。
もうなんかこいつには近づきたくない。
母さんが言ってたね、小型化する暇があったら他にやることたくさんあるし人を乗せたほうが早いって。
それに時田さんの作った人工知能とは、目の前の状況を認識し、
次の行動を選択するコンピュータらしい。
それはそれですごいけど、当然ATフィールドは展開できない。
母さんの目指しているのは意識レベルまで人工化することで、JAの人工知能とは所詮、
人間の思考パターンに似せたプログラムに過ぎないという。
まるっきり目指している次元が違うんだとわかった。
人工意識とは生命を創造する神の御技に等しく、搭載可能な大きさにならないとはいえ、
やろうと思えば出来るというユイ博士はすでに神のとなりに座っている。
とリツコさんは言う。
そんなものなのか。
どちらにしても上機嫌な時田さんが持ってきたJAは使えないことに違いはなく、
ネルフの面々は興味なさげに適当に相槌を打って相手していた。
そんなところに、時田さんが驚くことを話してくれた。
JAのAIはサンプルにした人格パターンがあるのだという。
その人の協力を得て人格パターンを移植したのだとか。
誰かと思えばなんとトウジだった。
・・・・どうしてここでトウジが出てくるのだろう。
全員がリアクションに困っていると、時田さんが得意げに話し出した。
「チルドレン三人が在籍するクラスは実は、全員がチルドレン候補だということの
調べはついているのですよ」と。
そうだっけ?とリツコさんを見ると、ああそうだったわね。
と、非常に気のない返事が返ってきた。
僕らが万が一使徒に負けて死んだ場合は彼らから新しいパイロットが選ばれるのだから
結構重要事項のはずで、リツコさんが気のない態度を取る理由がその時はわからなかった。
後から教えてもらったのだけど、もし僕らが、というより僕が死んだらあと誰が
エヴァに乗ろうが人類は絶対に勝てないことがわかってたらしい。
何故僕でないと駄目なのかはこの時は教えてくれなかった。
だいたい時田さんにトウジを紹介したのはリツコさんらしいし、いい加減なものだ。
時田さんは話し続ける。
「全世界から選ばれたチルドレンなのだからAIのモデルに相応しい」と。
実際にはネルフ関係の家庭でコアになりそうなのをとりあえず選んだだけだったようで。
もうこの時点で互いの認識は大きく隔たっているが、
それは正さないのが大人の対応ってものだろう。
まあ、つまり、あのロボットの中身はトウジだってことで・・・・
僕は知らないからね、どうなっても。
・
・
・
時田さんの薀蓄を二時間程聴かされた後、
間の悪いことに、使徒がやってきた。
しかもエヴァ五号機が輸送中にその使徒に乗っ取られたという。
大変だ。でもこの記憶はある、だいたい思い出した。
たしかトウジが乗っていて助けたけど大怪我させたような。
で、エントリープラグにパイロットは乗ってないの?
と聞くと。
なんで輸送にパイロット乗せる必要があるの?
本格的なシンクロテストはこっちに来てからなのにいきなり乗せるなんて無茶はしない。
大体、ドイツで調整が完璧に終わっていた弐号機だって実戦はともかく輸送中は
エントリープラグに乗せてなかったでしょう。
とリツコさんの返事。
言われてみればその通りだ。
じゃあトウジが乗ってたって記憶はなんだったんだ、
確かうろ覚えの記憶では、トウジが乗るまで使徒は出てこなかったハズ。
違う理由はなんだろう。
仮に使徒も前回の記憶があったとして、トウジが邪魔だと判断したとか・・・
よくわからないのでやっぱりまた判断は保留しよう。
時田さんは
「使徒はまかせてもらいますよ、フフフ」
とやる気満々でJA改の発進準備をしている。
どうして勝てると思えるのだろう。
かくして、使徒対JA改(中身トウジ)の戦いが始まった。
二体が対峙しているのは第三新東京市からはまだかなり遠いので僕らは見物・・・
ではなくデータ収集をしている。
既にこっちの発進準備も完了している。
母さんをコアにした初号機はあっさり起動した。
コアが違うとこうも安心するのか。
「よし、JA、セイバーとライダーを装備!」
時田さんが大声で命令する。
前回のJAは命令を遠隔操作で実行されるまで動かなかったが、
今回はAIなので命令も聞けるし自律行動も可能のようだ、結構すごいな。
と思ってたらJAから返事が返ってきた。
「オトコハイツモステゴロヤ」
「・・・・・・・・」
なんとJAは時田さんの命令を拒否した。
「な、なんだとぉ!」
時田さんは驚いている、そりゃそうだろう。
だがAIの元が彼ならあり得る。
「あのー、時田さん、使徒が接近中ですが」
狼狽する時田さんに親切に教えたのはマヤさんだ。
見ると確かにエヴァ使徒が猿みたいにヒョコヒョコした小走りでJAに向かっている。
「応戦、いや、相手の攻撃方法がわからん、一旦距離をとるんだ!ライダー使用!」
時田さんが叫ぶ。
時々意味の解らない命令があるが、
結構冷静で的確な命令にミサトさんがちょっと感心していた。
だがしかし。
「オトコハイツモショウメンカラタタカウンヤ」
JAはさがるどころか真正面から突撃していった。
しかも武器なしの素手で。
しかしトウジだったらこう動くんじゃないかっていうそのまんまの動きだ。
今の一連の行動も前の昼休みにトウジが男同士の決闘方法について熱く語っていたことと同じだ。
つまりこのAIはある意味すごくいい出来なんじゃないか。
リツコさん達技術部も感心していた。
そうこうしているうちにエヴァ使徒が腕をゴムみたいに伸ばしてJAを掴んだ。
真正面から突撃中だったJAはあっさり捕まった。
ってゆうか避けるつもりもなかったろう。引き寄せられる。
このままではカウンターでまともに殴られる。
「よけろーーー!」
時田さんが絶叫する。
だがやはりしかし。
「オコトハヨケタリセエヘン・・・アイテノワザハスベテウケキリ・・・
ソシテジブンノワザデカツ・・・ソレガ・・・プロレスラーヤ」
・・・・・あんたプロレスラーじゃないだろ。
とはもはや誰もツッコまなかった。
・・・・・・・・・・・で、JA改の大破後、どうするかをみんなで検討した。
完敗の時田さんは真っ白に燃え尽きていたが、AIをここまで人間みたいに作りこんだ
プログラミング技術にネルフ内での彼の評価はすごく上がっていた。
JAの炉心は緊急停止と隔離はちゃんとできたらしく、二次災害は免れたようだった、
それくらいの機能はあったようだ。
最後はマウントポジションでボコボコだったが、殴られただけなのが幸いした。
レーザー系で切り取られていたら大惨事だ。
ちなみにJA改の起動停止直前のAIのセリフは
「キョウハコノクライニシトイタラア」
だった。
でも実際のところ、JA改の戦闘はたいへん参考になった。
相手の装備がはっきりしたからだ。
使徒が乗っ取ったのはエヴァだからね、強力な鞭を持ってたり、加粒子砲を撃ったり、
分裂したりするわけでもなし。
エヴァ自身は強力な必殺技を持ってるわけじゃないんだから。
さっき見たように腕を伸ばしたり、人間離れした動きはするだろうけど、それだけだ。
こっちはフル装備のエヴァが三体もいるんだから圧倒的有利だ。
エヴァを乗っ取ることで逆にこの使徒は自らの可能性を狭めてしまったような気がする。
おそらくこの使徒は、無機物有機物を問わず自らと融合することでその対象の能力を
取り込むことができたのだろう。
まるでデーモン族のように。
融合する対象次第ではとんでもない強敵になる可能性もあったのにラッキーだ。
結局、弐号機をフォワード、初号機は弐号機をフォロー、零号機は後方支援で出撃した。
・・・・・・で、三体でボコッてあっさり終わった。
簡単に経過報告すると、アスカの弐号機は素手で使徒とやりあい圧勝。
腕や足を伸ばして攻撃してきたが、わかっていたので簡単に捌かれていた。
ATフィールドを中和され、上空に蹴り上げられた使徒は空中で零号機の射撃で
穴だらけにされ、落ちてきたところを初号機の光牙でコアの大部分を削られて終わった。
弐号機に蹴り上げられた時点で勝負はついたも同然だった。
エヴァ使徒は狂った猿の様なトリッキーは動きをしてたけど、今のアスカの敵ではなかった。
コアの母親のことがわかってからのアスカの心技体の充実度は生半可ではなく、
僕との婚約が決まってからだろうか機嫌もすこぶるいい。
この前たまたま部屋で二人っきりになった時にキスをねだられて困った。
「暇だから」と顔を真っ赤にしながら言ってたけど、なんて理屈だよ、したけど。
いいのかな中学生なのに。
おまけ:
使わなかったけど装備はしていたJAの七つ武器。
セイバー:接近戦用の長剣。
ランサー:中距離戦用の槍。
アーチャー:遠距離用の弓。
ライダー:足の裏のキャタピラで高速移動。
アサシン:至近距離用射出ニードル。
パーサーカー:リミッターカットで出力を一時的に3倍。
マジシャン:JAの周囲数十メートルの雷撃。
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