O.R.E〜胎動〜


 

 

「なあ、北川」

「あ?何だ、相沢」

放課後、俺と北川は二人で話をしていた。

北川には話さねばならないことがある。

「お前を男、いや、漢と見込んでの話だ」

「ああ」北川は真剣な顔になる。

「なあ・・・」俺は言葉を濁した。

言ってはならない気がする。だが、言わねばならない。

俺は意を決した。

「屋敷」俺がそう言うと、

「メイド」北川は淀みなく答えた。

「動物」

「獣娘」

「台所」

「裸エプロン」

「同志よ!!」俺は思わずそう叫んだ。

「ああ、やっと見つけたぞ、漢の浪漫を持つ奴に!!」俺達は強く抱き合った。

「やっと俺と同じ奴に出会えた!」北川は男泣きをしている。

むさいとかホ〇とかは言わない約束だ。

「お前を見た時からそうだと思っていたぞ」北川が言う。

「どうして分かったんだ」当然の疑問だ。

「お前は知らないみたいだな」

「何が?」

「まあ、論より証拠だ、見てな」

「北川、お前何を訳の判らな・・・

「はああああああああああああっっっ」

「うをっ!?」北川は俺の言葉を遮るように唸るような声を上げている。

「はあああああああああああああああっっっ」

何かが北川から出ているような気が・・・

「なっ!?」

北川から出てる物、それは、某漫画の‘気’っぽい物だ。

しかも、真っ赤な色をしている。

「かああああああああああああああああっっっっ」

「す、凄い・・・。」いや、マジで凄い。

って言うか、何だ、アレ?

しかも額に血管が浮かんでいる。

おっ、何かフィニッシュっぽい。

「メイド最高おおおおおおおおおっっっっっっ!!!」

ドシュウウウウウウッッッ!!!

北川の周りのオーラが一気に上空に放たれ、消えていった。

「どうだ、相沢」俺の方を向いてそう言う。

「いや、どうって・・・何なんだ、アレ?」当然の疑問だと思う。

「あれは・・・O.R.Eだ」自信たっぷりにそう言った。

「は?」

「O(漢の)R(浪漫)E(エネルギー)、略してO.R.Eだ」

「はい?」

「体を流れる漢の熱い魂が目に見える形になった物だ」解説されてる。

「・・・・・・」開いた口がふさがらない。

「ん、どうした?」北川が俺の方を怪訝そうに見る。

「い、いや、何でもない」とりあえず気をとりなおす。

「で、その意味は?」

「ない」それはもうきっぱりと言われた。

「まあ、一種の漢の浪漫を持つ者の証みたいなもんだ」

「はあ・・・」

「安心しろ、いずれお前もできるようになる」

「・・・安心できない」俺はそう思った。むしろ、口に出した。

「まあ、それはそれとして」北川は急に話を変えた。

「相沢、相談があるんだろ」「なっ・・・」図星だ。

「お前、どうしてそれを・・・」

「ふっ、第六感ってヤツさ」北川は遠い目をしてそう言った。

「で、相談ってのは?」

「ああ、その事なんだが・・・」

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「暖かくなってきましたね」

「ああ、そうだな・・・」

ある日曜日、俺達は公園に来ていた。

隣にいるのは美坂 栞。今年の冬、出会った後輩だ。

栞は病気で誕生日まで生きられないはずだった。

が、奇跡が起こった。

病気が治ったのだ。

それまでもそうだったが、その後、俺達はしょっちゅう一緒にいる。

いわゆる「恋人」というヤツだ。

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「おい」北川が口を挟んできた。

「何だ、話の腰を折るなよ」

「俺はノロケ話なんか聞きたくないぞ、早く要点をいえ」

「ああ、判ってるよ」俺は話を再開した。

 

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その日、俺は栞にある話を持ち出した。

「栞」

「何ですか?」

「俺のことを『お兄ちゃん』って呼んでほしいんだ」

「・・・そんな事言う人、嫌いです」

「ぐはあっ」

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「・・・とまあ、そういうわけだ」

「わかる、わかるぞ!」北川は号泣している。

「病弱な少女から『お兄ちゃん』と呼ばれるのは、まさに漢の浪漫だからな」

「判ってくれるか、北川」

「ああ」

「だがな、甘いぞ、相沢」

「何が」

「俺はもっと凄いプロジェクトを進行中だ」何か自慢げだ。

「いいか、まず俺が美坂と一緒になる」

「どうやって」

ちなみに美坂とは栞の姉で同じクラスの美坂 香里のことだ。

「それは秘密だ。そして、その暁には、お前の言う栞ちゃんに俺は『お兄ちゃん』  よりもグレードの高い『お義兄ちゃん』と呼ばれることになるのだああああっ!!」

「なにいっ!?」俺の体中に電撃が走った。

やるな、北川。

「義兄と義妹の禁じられた関係、まさに漢の浪漫だ!!」

「くっ、ならば俺は義姉と栞と三人で(放送禁止)とか(自主規制)を・・・」

「なっ、幻の姉妹丼(問題発言)をやるとは、貴様、漢だな!」

「へえ、その姉妹丼、興味あるわね」香里がそう言う。

え?香里?って・・・

「うおあああああああああああああっっっ!!?」

俺と北川は同時に叫んだ。そこには香里がいたのだ。

引きつった笑顔に青筋が浮いている。

「詳しく聞かせてもらおうかしら?」そう言ってにじり寄ってくる。

まずい。絶体絶命だ。北川も顔が真っ青だ。

「二人にはお灸を据えなきゃね・・・はっ!」

香里は俺達の口の中に何かをつっこんだ。

「ぐっ、この味は・・・」

間違いない。

「秋子さんのジャム!?」

「正解よ」香里は不気味な笑いを浮かべている。

「ぐああっ」北川が倒れた。

「あ、相沢、あとは・・・頼んだ・・・ぞ・・・・・」

そう言って北川は動かなくなった。

「北川ぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!」

お前の漢っぷりは忘れないぞ。

「相沢君もすぐに逝けるわよ」香里は凄いことを言っている。

くっ、俺も意識が・・・

俺は、薄れゆく意識の中で叫んだ。

「お、漢の浪漫よ、永遠なれっっっっ・・・」

  

 

 

 

−to be continued−