3ないシリーズact.1「うぐぅの怪談」
(注)3ないシリーズとは
「オチがない、つまらない、意味がない」シリーズです。
投石とか剃刀入りの封筒とかなしの方向で。
祐一「なあ、あゆ」
あゆ「なに、祐一君?」
祐一「こんな話聞いた事あるか…?」
俺はあゆに近付き、話を始めた…
ある街で起こった出来事だ。
彼は友達と学校から帰る途中だった。
歳は16、7。
どこにでもいる高校生だ。
友達とくだらない話に興じていると、向こうから女性が歩いてきた。
ロングヘアーで、マスクをつけているようだが遠くから見ても美人だと分かる。
大人の魅力、みたいな感じが溢れてる。
まあ、あゆとは正反対だな。
あゆ「うぐぅ…いじわる…」
祐一「分かりやすいだろ?」
あゆ「うぐ…」
祐一「話を続けるぞ」
まあ別に知ってるわけでもないから普通に通りすぎようとしたんだ。
だけど、彼女は彼らの前で立ち止まったんだ。
そして、マスクごしにこう言った。
「ねぇ…私、綺麗…?」
あゆ「あ、その話知ってるよ」
祐一「いいから黙って聞け」
彼の友達は青い顔をした。
何故なら目の前の彼女にぴったり当てはまる『噂』を聞いていたからだ。
「悪い…俺用事思い出した」
そういって彼の友達はそそくさと去っていった。
彼もその噂は聞いていたが、しかし頭から信じていなかった。
目の前の女性を見て、言った。
「綺麗ですよ」
すると、彼女はゆっくりとマスクに手をかけた。
「これでも綺麗…?」
あゆ「うぐぅぅぅ!」
祐一「やかましい!」
あゆ「だ、だって…」
祐一「ったく…これからいいところなんだから…
続けるぞ」
彼女はマスクを外した。
すると、頬の辺りまでぱっくりと口が開いているじゃないか!
にたあっ、と笑って彼女はもう一度聞いた。
「これでも、綺麗…?」
「馬鹿野郎っ!」
「ぇ…?」
「そんだけ大口開いたら意味ないだろうがっ!
いいか、俺が極意を叩き込んでやる!」
「あなた怖くないの…?」
「あなただぁ?
コーチと呼ばんかい!」
「は、はひ…」
「まず!口をそんなに開くんじゃない!
小さく見せるんだ!」
「はぃ、コーチ…」
彼女は言われるままに開いていた口を閉じ、小さく見せようと努力していた。
「よし、次は視線だ!
上目遣い、コレ即ち王道也!」
「はぃぃ…」
逆らう事もできず、彼女は恥ずかしそうに上目遣いで彼を見た。
「OK、じゃあ最後だ!
尋ね方だ!
もっとしおらしげに、目を潤ませて言え!」
「わ、わかりましたぁ…」
「よし、じゃあ実践だ。
俺に試してみろ」
「はい…」
彼女は瞳を潤ませ、頬を赤らめて上目遣いでおずおずと訊いた。
「あ、あの…
私、綺麗ですか…?」
「…合格だぁぁぁっ!
うぉぉぉ、萌えぇぇぇぇぇ!」
「えっ?
きゃぁっ…!」
その後、街では男性が道端で悶絶しているという事件が多発したそうだ。
祐一「どうだ、面白かったろ?」
あゆ「うぐぅ…よく分からないよ…」
終劇っ!