黒いKanon
(注)この作品は『Kanon』の世界を壊す可能性がありますので、
注意して読んで下さい。
夢。
夢を見ている。
毎年見る夢。
終わりのない夢。
黒い雪。
流れる闇。
黒く染まった世界。
誰かの泣き声。
野郎の泣き声。
真っ黒い空を覆うように、大の男が泣いていた。
どうすることもできずに、
ただ闇に染まる野郎の顔を見ていることしかできなかった。
だから、せめて・・・。
流れる涙を拭いたかった。
だけど、手は動かなくて・・・。
頬を伝う涙は雪に吸い込まれて・・・。
見ていることしかできなくて・・・。
悔しくて・・・。
悲しくて・・・。
大丈夫だから・・・。
だから、泣かないで・・・。
言葉にならない声。
届かない声。
「義理チョコだから・・・」
それは、誰の言葉だっただろう・・・。
夢が、別の色に染まっていく。
「うん・・・義理チョコ、だよ」