「あの空を越えて」
(注)このSSはあゆエンド直後の話です。
「祐一君、そんなにボクの髪型ヘン?」
「いや、よく似合ってるぞ。
実にお子様らしい」
「うぐぅ、ひどいよ・・・」
あゆは不満そうにしながらもやはり髪型が気になるのか、
しきりに髪を触っている。
「あんまり触ると、禿げるぞ」
「うぐぅ・・・禿げないもん」
「いや、きっと禿げるぞ。
この間テレビでやってたからな」
「えぇっ、本当?」
「いや、冗談だ」
「うぐぅ・・・」
本気で心配そうなあゆを見て、
冗談だと訂正しておく。
あゆは今まで眠っていたせいか、
どこか・・・というかかなり子供っぽいところがある。
すぐに人の言うことを信じてしまったり、というのは悪い例だ。
まあ、それがあゆのいい所でもあるんだが。
あゆの持っている純粋さ、悪く言えば単純とも言うが、
そういったところに俺は惹かれているのかもしれない。
「とりあえず、たい焼きでも食うか」
「でも、お店春はやってない・・・」
「秋子さんが作ってくれるらしいぞ」
「えっ、本当!?」
「今度は本当だ」
「うぐぅ、嬉しいよぉ・・・」
無邪気に喜ぶあゆが可愛くて、
思わず抱き寄せる。
「うぐぅっ!?」
あゆからはあからさまな香水の匂いではなく、
石鹸の匂いと、
臭い言い方になるが太陽の匂いがした。
「うぐぅ・・・祐一君、恥ずかしいよ・・・」
「大丈夫、俺も恥ずかしい」
「だったら・・・」
「だけど、もう少しだけ・・・
嫌か?」
俺がそう聞くと、あゆは少し赤くなって
「祐一君、意地悪だよ・・・
嫌なわけ・・・ないよ」
俺の腕の中で恥ずかしそうに笑顔を見せるあゆとなら、
この輝くような空を越えてその先に行ける、
そんな気がした。