いたづら秋子さん 浪漫ってなんですか?(前編)



初めましての方、初めまして。F.coolです。
お茶目な秋子さんのシリーズです。
この作品は、SNUさんの作品O.R.E.シリーズに多大な影響を受けています(^^;

設定:祐一と北川、秋子さんにラヴラヴ(笑)

注意:ほのかにえっちです。それを踏まえてGO!(爆)

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

「おい、相沢」

 ある日の放課後、帰り支度を始めていた俺は、唐突に北川に話しかけられた。

「なんだよ」

 北川は言いづらそうに一旦言葉を切ると、

「秋子さんの事だが…」

 正直俺は、またか、と思った。
 北川は、何故か最近秋子さんにお熱なのだ。
 まぁ、秋子さんの人柄を考えるに、無理からぬ事なのかも知れないが。

 だが、秋子さんは俺の大事な女性…もとい、保護者だ。
 北川と秋子さんが接触を持つのは、あまりいい気がしない。

 と、言うわけで。

「またな」

 俺は素っ気なく言い放ち、鞄を持って教室を後にしようとする。

「ま、待て! 相沢!」

 うるさい奴だな。

「話は最後まで聞け! これを見ろ」

 そう言って北川は手に持っていた紙袋を俺の眼前に突きつける。

 なんだ?

 その紙袋は、中に何か大きな物が入っているのか、ぱんぱんに膨らんでいた。
 だが、北川が軽々と持っている様子を見る限り、さして重い物でも無いようだ。

「ちょっと、中身を見てみろ」

 促されるままに、紙袋の中身を覗き込んでみる。

 中には、フリルのカチューシャとエプロンドレスが入っていた。



 ……なにぃっ!?


「き、北川、これは」

 狼狽する俺を見て、北川がニヤリと不敵な笑みを浮かべる。

「ふふ…そうだ、相沢。お前なら分かってくれると思っていたぞ」

「…メ…メイド服セット…」

「その通りだ」

「どこでこんな物を手に入れたんだ?」

「秘密だ」

 …不思議な奴だ。

 だが…

「で、これをどうしようと言うんだ?」

「相沢、まだ分からないのか?」

「…? …っ! まさか、お前」

「多分、そのまさかだ」




「秋子さんに、これを着せる…と」

「ご名答」







 瞬間的に、俺の脳裏にメイド服姿の秋子さんが浮かぶ。

(『祐一さ……いえ、ご主人様。なんでもお申し付け下さいね♪』)

(『じゃあ、夜伽を』)

(『まぁ』)

(『できないのか?』)

(『いえ…その……………了承(ぽっ)』)







「ごふっ」

 卒倒しかけた俺を北川が慌てて支える。

「相沢、しっかりしろ」

「すまん。……しかし、どうやって?」

「別に難しいことはない。これを、『文化祭で使う』などとかこつけて、秋子さんに預かって貰う。以上」

「しかし…だからといって、秋子さんが、そう易々とこれを着ると思うか?」

「お前は、どう思う?」

「うーむ…」

 確かに、あの秋子さんなら…興味が高じて着ることもあり得る、な。

「どうだ相沢。日時は次の日曜日に決行。そのかわり、その…だ」

「そのかわり?」

 北川は、言いづらそうに声をひそめると、

「秋子さんのお着替え姿を…俺にも見せて貰う」

「な、なんだとぉっ!?」

「ば、ばか、声がでかい」

 気が付くと、まだ教室に残っていた幾人かの生徒がこちらに訝しげな視線を向けていた。

 俺は誤魔化すように咳払いをする。

「…すまん。しかし…」

「実行すれば、俺も見るんだが、当然お前も見れる」

「ぐっ」

「下着姿の秋子さん」

「ぐはっ」

「メイド服姿の秋子さん」

「ぐはあっ」

「やるか? 相沢」

 その間は、一秒を切った。

「了承!」



「…………同士!」

 感極まった北川が、潤んだ瞳で俺の前に右手を差し出す。

「おう!」

 俺は力一杯その手を握り返す。


「……はぁ」

 そんな俺たちを、ひとり香里が冷ややかな目で見つめていた。







 ―――――――さて。
 今日はもう日差しも暖かくなってきた、五月の日曜日です。

 夕飯の支度も済ませましたし、名雪は部活で疲れたのか、シャワーを浴びて早々にベッドに入っちゃいました。
 あとは、北川さんの家に遊びに行った祐一さんの帰りを待つばかりです。

 まだかしら。

 うずうず…

 ううん、最近はあまり祐一さんを構っていませんし、なんだか体が疼いてしまいます。


 えっ あっ 違うんです
 体が疼くって言うのは、いたづらがしたくて、と言うことです

 いたづらというのは、ニュースでよく報道されるような、
 変わった性癖を持つ男性が幼い少女にするようないたづら


 ――――――――ではありませんっ!


 コホン。
 一人誰もいない居間で、顔を赤らめてしまいます。


 と。
 あら?
 玄関先で、物音が…


「ただいま」


 わ、祐一さんのお帰りのようです♪


「お帰りなさい」


 私が玄関先までお出迎えに行くと、あら?
 祐一さんの他に、もう一人可愛い顔だちの少年が。


「お邪魔します」


 あらあら♪
 北川さんまで一緒なんですか。


「北川さん、いらっしゃい」

「あ…ども。秋子さん」

「はい?」

「いつみても、綺麗ですね」

 まぁ。

 おだてても、なにも出ませんよ♪ もう。

 あらあら。
 言った本人が照れているのか、北川さんは俯いちゃってます。

 ううん、やっぱり可愛い子です。


「あー。げほんげほん」

 あら、祐一さん。
 私が北川さんに構っているのが気に入らないのか、わざとらしく咳払いなんかして。

 困った子ですね♪


「玄関先でなんですから、どうぞご遠慮なくあがって下さい」

 私は微笑みながら、二人を誘い入れ

 誘い?

 誘い。

 誘惑。


 二人の少年を誘惑して入れる。


 きゃっ

 違うんです 違うんですぅ

 もう♪ もう♪



 …



 ……気が付くと、一人身悶える私を、二人が呆気にとられて見ていました。


 あ、あらあら。
 私ったら。


 居づらくなった私は、誤魔化すようにきょろきょろと視線を動かします。


 …あら?
 よく見たら、祐一さん、手に紙袋を持っていますね。
 なんでしょう。


「と、秋子さん、突然なんですが」

 祐一さんがその紙袋を私の前に示します。

「はい?」

「ちょっと、これ…なんですが」


 祐一さんが中身を取り出して、私に渡します。


 えっと? ビニール袋に包まれた、これはなんでしょう。

 洋服のようですね。

 うん?


 ひらひらのエプロンが付いたドレスと、フリルのカチューシャ。


 こ、これは。

 いわゆる、メイドさんルックじゃないですか!

 ご丁寧にコルセットまで付いてます。



 ゆ、祐一さん



 あうあう


 こ、これを私にどうしろと


 ま、まさか着ろと言うんじゃないでしょうね?



 そんな
 恥ずかしいです




「で、あの、秋子さん」

「な、なな、なんですか」


 どきどき
 私は鼓動が早くなるのを感じながら祐一さんの次の言葉を待ちます。



 そして、祐一さんは―――






「それ、文化祭で使うので、ちょっと預かっていて欲しいんですが」


「え?」


 文化祭。

 なんだ、文化祭ですか。

 私が着るものじゃないんですね


 残念
 違います


「でも、なんで私に?」

「俺じゃあ、服の扱いとか分かりませんから」

「名雪は?」

「名雪には秘密の、びっくりイベントなんです」


 ははぁ。
 祐一さんも、名雪にいたづらをする気なんでしょうか。


 そう言うことなら…


「はい、分かりました」

「ホントですか?」

「了承、です」


 私がニッコリとそう言うと、


 …あら?

 何故か、北川さんが小さくガッツポーズを取りました。




(後編に続く)

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

何故か長くなってしまいました(^^;
それでは、また次回でお会いしましょう。