Kanon−SS

 

"若き日の追憶"  Written_By ぜろ

 

 

LLLLLLLLLLLLLLLLLLLLLLLLLLLLL

前書:

このSSはCode:O.R.E.のSNUさんに捧げます。

一応、相互記念&お詫びってことでお納め下さいませ。

まぁ、たまにはこう言うのもいいかなぁ、なんて。

LLLLLLLLLLLLLLLLLLLLLLLLLLLLL

 

 

The long long ago...

 

遠い、遠い昔の話。

一人の女の子が男の子と幸せな日々を送ったと言う……

そんな……甘い……昔話。

 

さぁ、あなたにそんな話をしてあげよう。

 

 

 

「祐一さん〜、早く来て下さい〜〜。

 お姉ちゃんの結婚式、遅れてもいいんですかぁ?」

「そんなに急がなくても大丈夫だろ……

 式は三時からだろう? まだ一時じゃないか……」

 

そう、今日は北川と香里の結婚式。

一週間ほど前の事、急に北川から電話がかかってきて、

 

「相沢。証人になれ」

「はぁ? 何のだ?」

「俺と美坂の婚姻届けの」

「………………リピート」

「婚姻届の証人」

 

開いた口がふさがらないとはまさにこの事だった。

なんせまだあいつらだって大学入ったばっかりだろ?

って言うか俺だって東京の大学に来たばっかり……

 

栞? いまだに高校二年生をやってる。

まあ、一緒に居られた一年間が一番充実してたのは間違いないが……

逝かん、話が脱線だ。

 

大学入学直後に結婚だ?

一体全体どういうことだ?

 

「お前、何やった?」

「いや、少々手違いで、な」

 

頭に閃くものが有った。

確かに、香里と北川は栞が元気になって付き合ってたのは知ってる。

なんせ北川に告白しろとそそのかしたのは俺だからな。

 

あれは夏の暑い時だった。

夏祭りのとき……

 

「俺は美坂が好きでたまらないんだよ! 如何したら良いんだ、同志!」

「……コクってこいよ。

 ……漢なら面と向かって好きですって言って来い、馬鹿」

「そうだよな、よし。

 お前に栞ちゃんが居るんだから、おれに美坂が居たっておかしくないよな!」

「そうだ、漢なら当たって砕け散って来い!

 そのときはくたばるまで付き合ってやるぞ!」

 

俺はまさか香里がOKするとは思ってなかったんだが。

あっさりと二人は付き合い始めて……

はたから見れば恥ずかしいくらいにういういしいカップルだった。

 

俺が真面目に爆笑したのが、

 

「なぁ、美坂と手を握って歩いてたら栞ちゃんに、

 クスクスって笑われたんだが……お前ら、しないのか?」

 

真顔でそんなこと聞くもんだから大笑いしてしまった。

香里って顔に合わずシャイだし。

北川なんか輪をかけてシャイ。

 

真っ赤な顔して手を繋いでるのを想像して爆笑した。

その直後、香里に蹴り入れられて息が止まったけど。

……話を元に戻そう。

 

「手違いってまさか……

 俺がやったら香里に殺されそうな事じゃないだろうな?

 『来ないの』なんて言って泣かれたなんて事は無いんだろうな?」

「ああ、それは無い」

 

あんまりきっぱりそういったもんだから俺は何だろうかと考えてしまった。

 

「泣かれたんじゃなくて、電話でな。

 『潤、結婚するわよ』 『え?どうしたの、急に?』

 『責任とってもらうわよ』 『一体全体どうしたんだよ、急に』

 『出来たのよ』 『何が?』

 『子供が』 『……誰の?』

 『潤以外にいるとでも思うの?』 『思わない』

 『判ったわね』 『判った』

 『じゃあね』 『ああ、またな』

 …………………………ええええええええええええええええええええええ!?

 ってこんな感じだ」

「はぁぁぁぁぁぁ!?お前子供できたのか!?」

「そうらしい……」

「産婦人科で確認は?」

「取った。四ヶ月。正月に会ったときのらしい……」

「あの時みんなで初詣逝ってお前らだけ朝まで帰らなかったときの、か?」

「ああ。そのようだ」

「……まあ、何はともあれ。おめでとう、北川」

「ああ、有難う。そこで、お前にだけは先送りにしてしまったんだが。

 今日の夜速達で招待状と祝辞の依頼状が届く。

 よろしくな。 それから証人になってくれ」

「よろしくなって急にそんな……証人は良いとして祝辞って何だ?」

「お前以外に誰が祝辞を言うんだ?」

「俺が適任だ……」

「だろう、よろしくな!

 証人と祝辞、美坂と俺で一人づつってことになったんだが、

 選ぶ前から決まってたみたいなもんだからなぁ!安心したよ!」

「ってことは、香里の選んだ人間って……」

「お前のいとこだ」

「……だろうな」

「そうだな、式の前日空けとけよ、この幸せ者が」

「勿論だ。独身最後を記念して呑もうじゃないか」

「判った……講義はサボる為に有るんだからな」

「その意気だ」

 

そんなこんなで式前日の昼下がり、

桜の咲く中思い出の地へ帰ってきたわけだ。

 

その夜水瀬家では俺と北川の酒を酌み交わす風景が見れた。

因みに名雪は美坂家へ。

秋子さんと栞は俺たちを見ながら夜中喋っていた。

さすがに二日酔いはまずいので、一升瓶一本が転がる程度で止めておいたが。

見かけによらず秋子さんは強かった。

呑んでも話し方が変わらない。

栞は少し呑んだだけで秋子さんとの話に興じ。

俺らは他愛の無い思い出話をしながら、

ただひたすら酒を酌み交わした。

 

そしてその宴も、一時ごろ二人がつぶれると終局を迎える。

二人の預かり知らぬことだが……

つぶれた二人に毛布を持ってきて毛布をかけ、

枕を持ってきて頭の下に押し込んだのは、

クスクスと笑いながら話ていた秋子さんと栞だったりする。

 

そして俺が十一時ごろ起きたとき、

北川はもう一足先に出た後だった。

北川だと思って、

「おい起きろ〜!」

と背中をたたいたら、

それが栞で吃驚するなんて言うアクシデントもあったけど。

 

おかげで秋子さんに朝飯と称して、

ジャムを食べさせられるという罰を受けねばならなかった。

金輪際やらんぞ、もう。

 

そんなこんなで時は現在へと戻る。

 

「ほぉ、ここが式場か」

「そうですね、ここの『飛天の間』ですね」

「ひっひてんのまぁ?」

「はい、そうですけど?」

「参加人数何人だ?」

「五百人です」

「はぁ、そんなもんか焦らすなよ、もう」

「……五百人?十分多くないか?」

「そうでもないですよ?」

「そうか、まあ良いや」

「そう言えば栞、何で普段着なんだ?」

「制服はホテルに先持って行ってくれたんです、お姉ちゃんが」

「へぇ」

 

俺のほうは今日の為に黒のスーツ買ったというのに。

いいなぁ、高校生は。

……でも栞の制服姿ってだけでそれはそれで良いかも。

まぁ、卒業式まで毎日見てたけど。

 

 

式中の事は詳しく語ってても仕方ないので割愛するが。

慎ましやかに、挙式された。

香里の御腹の事には一言も触れられなかった。

いろいろと大変なのだろう。

 

そしてその日は祝いとともに暮れた。

次の日の夜。

水瀬家においてささやかなパーティーが行われた。

秋子さんの心づくしの料理が並べられた。

出席者は主賓の二人、俺と栞そして名雪と秋子さん。

そして料理を食べながら、いろいろな思い出話をした。

今となってはいい思い出。

 

そして料理があらかた片付いたとき。

 

北川が黙って俺の前に一通の書類を出した。

その書類には、"婚姻届"そう書かれていた。

俺はひとしきり北川と香里の顔を眺め。

そして相沢祐一、と署名した。

そして名雪に渡す。

 

「おめでとう、香里。それから北川君」

 

そう言って微笑むと、水瀬名雪、そう署名して。

それで婚姻届の空欄は埋まり……

俺の友人たちの新たな出発を見守る事になった。

 

その夜、栞は水瀬家に泊まって行った。

そう、俺の部屋に。

 

栞がこう言ったことを俺は生涯忘れない。

 

「お姉ちゃんに北川さん、カッコ良かったですよね……

 私たちも何時か、あんなふうになりたいですよね」

 

いとおしく抱きしめたその人が、

俺の生涯のパートナーになると決まる日まで、

まだ三年程かかる、そんな日の夜の出来事……

 

 

私たちがそう、まだ若かったころの昔話……

 

 

FIN.

__________________________________

 

後書き:

いやぁ、なんとなく書いて見ました。

最後ちょっと転がってました、一人で(笑

別にこれで何か言いたかったわけじゃないんです。

ただなんとなくこんな話を書いてみたかっただけで(苦笑

単に俺が栞好き……美坂姉妹属性ってのもありますけど。

でも駄目。俺やっぱりシリアスの方が得意(爆

まぁ、特にこうって訳じゃないので、

簡単な気持ちで読んでくれればそれでいいかなって。

そんな気分です。

まだまだ描写が甘いです。

修行に励まねば(苦笑)

それではまたどこかでお会いしましょう♪

お付き合い有難うございました。

 


SNUからの感想。

ぜろさん、有難う御座いました。
ほのぼのしてますな。
北川と香里が初々しくていいですね。
香里の話はほとんどがシリアスなので、
こういうのも新鮮味があってグッドです。
一番効いたのは最後の栞の台詞ですけどね(^^)
もうごろごろ転がってました(爆)
ぜろさん、これからも頑張ってください。

ぜろさんへの感想のメールはこちら。
s-saitou@mti.biglobe.ne.jp


ぜろさんのHPです。

http://www5a.biglobe.ne.jp/~zero/