「一人で見た夢は・・・」


(注)このSSは真琴エンド後の話です。
   真琴は帰ってきたという事になっています。





「さて・・・」

明日の課題を終え、
時計を見ると深夜の二時。
名雪はとっくに寝ている頃だろう。

カーテンの隙間から外を覗くと、
そこは月明かりが僅かに雪を照らしていた。
きっと夜の風は凍りつくように冷たいのだろう。



コン、コン・・・

「はい?」

こんな時間に誰が・・・?

「あぅ・・・」
「ああ、真琴か。入っていいぞ」

カチャ・・・

遠慮がちにドアが開けられ、そこから真琴が入ってくる。

「どうした、眠れないとか?」
「うん・・・そんなところ」
「そっか・・・」
「・・・」

会話は続かず、
真琴は気まずそうに髪をいじっている。

やがて顔を上げ、決心したように言った。



「ねぇ、祐一・・・」
「ん?」
「真琴も、祐一と一緒に寝ていい・・・?」
「別に構わないけど・・・
 もしかして、怖い夢でも見たのか?」
「な・・・」

図星だったらしく、顔を真っ赤にして反論する。
分かりやすい奴だ。

「そんな子供みたいなことで・・・!」
「だったら、一人でも寝られるだろ?」
「あぅ・・・」

墓穴を掘ったことに気付いたのか、言葉に詰まっているようだ。



「・・・ったく・・・
 ほら、来いよ」
「うん・・・」

おずおずとこちらに近づいてくる真琴を、
ベッドの中に招き入れる。

「怖いなら怖いでいいんだよ。
 隠すこともない。そうだろ?」
「あぅ・・・」
「ま、いいか・・・
 お休み」
「お休み・・・」

そんなわけで真琴と二人で寝ることになった。




・・・で、朝。

「ん・・・」

昨日は多少ベッドが狭かったが、
特に問題なく眠れたのでよしとしよう。

「さて・・・」



着替えようと身を起こす。
と、

がしっ

何かに掴まれているような感触がする。

「え・・・?」

自分の胴のあたりを見ると、
真琴の腕がしっかりと俺を抱いていた。

「あぅ〜・・・ぴろ・・・」

どうやらぴろと勘違いされているらしい。



「やれやれ・・・」

無理やり引き剥がす訳にもいかず、
結局俺も真琴を抱きしめて二度寝を決め込んだ。




「ぅん・・・」

どうやら真琴は起きたらしい。

「おはよう、真琴」
「おはよう・・・
 って、どうしてこんな格好なのよぅ・・・」
「最初に抱きついてきたのは真琴だろ」
「うそっ!?
 は、放してよ、祐一っ!」
「放すけど・・・いいのか?」

耳元で囁くように言う。

「あぅ・・・
 ゃ・・・」
「だろ?」

「ねぇ、祐一・・・」
「ん?」

ぽすっ

真琴は俺の胸に頭をうずめて、

「大好きだよ・・・」

そう、ポツリといった。

「俺も・・・な」



真琴の温もりを体に感じつつ、
俺も真琴も目を閉じる。



・・・ちなみに。

「あぅ〜、祐一が悪いんだからっ!」
「元はといえば真琴だろうがっ!」
「間に合わない〜!」
「ぐは・・・HRの時間だ・・・」

俺は学校、
真琴はバイトに遅れたのは言うまでもない。