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1)輪廻再生思想をめぐる古代・近代・現代の動向

古代宗教・古代インドの輪廻再生思想

再生とは、一度死んだ人間が再び地上に生まれてくることで、太古の昔より、さまざまな地域の人々や宗教によって信じられてきました。それらの再生思想には、細かな部分では違いが見られることがありますが、「過去に生きた人間が、再び現世へ生まれてくる」という大枠では一致しています。

古代エジプトや古代ギリシアにも輪廻思想が見られますが、地球人類の歴史上、最も広く知られているのが古代インドの輪廻思想です。仏教は、その古代インドの再生思想を踏襲しています。古代インドに始まった「輪廻思想」は、その後もインド人に共通の信仰となって現在に至っています。このインドの輪廻思想では、人間が輪廻のサイクルにあることを“苦”と考え、そこからの“解脱”を宗教による救いの最終目的と考えています。インド人にとって救いとは、苦しみの輪廻から逃れることに他なりません。

輪廻は「カルマ(業)」によって引き起こされるとされます。カルマとは、前世の行為が目に見えない潜在力となったものです。善業を多く積めば次の生は幸福な境涯に生まれ変わり、悪業が多ければ次の生は今よりもさらに苦しみに満ちた境涯に生まれ変わるとされます。このように“善因善果・悪因苦果”という「自業自得の原理(因果応報の原理)」によって輪廻の在り方が決定されると考えたのです。今生の人生が不幸で苦しみが多いのは、前世において悪業(悪いカルマ)をつくり出したからである、ということになります。この輪廻のサイクルから抜け出すことを“解脱”と言い、解脱によって永遠に輪廻しない世界に至ることになります。その理想の世界を「涅槃(ニルバーナ)」と呼びます。涅槃は煩悩から完全に解放され、輪廻を乗り越えて生死を脱却した世界を意味します。

一方、古代インドの輪廻思想を踏襲した仏教では“六趣輪廻”といって、地獄・餓鬼・畜生・修羅・人間・天上の6つの世界をめぐると考えました。これが仏教の輪廻のサイクルの内容です。仏教も古代インド思想と同じように、この輪廻からの解脱を最終目的とし、そのために“欲望を絶ち正しい生き方をせよ”と教えるのです。それによって「覚者(真理を悟った者)」となり、二度と再生する必要のない涅槃の境涯に生きることができるようになるとします。

近代と現代の輪廻再生思想――神智学とニューエイジの輪廻思想

スピリチュアリズムの勃興直後の時期に、ブラヴァッキー夫人によって“神智学”が設立されました。ブラヴァッキーは古代インドのカルマと輪廻の思想を取り入れて、膨大な神秘主義の思想体系をつくり上げました。当初はスピリチュアリズムと神智学の境界は明確でなく、そのため多くの著名なスピリチュアリストが神智学のメンバーに名を連ねていました。スピリチュアリズムと神智学の違いが、それほどはっきりしていなかったのです。

やがて神智学が再生思想を前面に打ち出し、スピリチュアリズムの交霊会を批判するに及んで、両者の関係は決裂することになっていきます。またスピリチュアリズムのサイド(心霊科学協会)からインドに派遣されたホジソンが、ブラヴァッキーの調査に当たりました。その結果、彼女の詐欺行為が暴露され“ブラヴァッキーはペテン師である”と公表されることになりました。こうした経過があり、スピリチュアリズムと神智学の間には、歩み寄りができないような大きな溝ができてしまいました。スピリチュアリズムは、ブラヴァッキーの神智学を東インドの低俗な思想として厳しく非難しました。英国のスピリチュアリズムはこうした歴史的背景のもとに、20世紀半ば近くまで「再生論」を強く否定し続けてきました。

一方、20世紀後半に至り、アメリカを中心としてニューエイジ運動が急速な広がりを見せるようになりました。“ニューエイジ”は、キリスト教という伝統宗教に反対するところから発生しました。それまでの宗教にはなかった霊的要素・精神的世界を求める運動でした。その中で人々はアジアの宗教に関心を示し、多くの若者がヨーガや仏教などの伝統的インド思想や、老荘(道教)などの伝統的中国思想に接近し、これらを受け入れました。それと同時に従来、正統な宗教から軽視されてきた“神秘主義思想”にも関心が向けられるようになりました。そうした動きの中で、古代インド思想を取り入れて膨大な思想体系を確立した神智学にも、多くの人々の注目が集まるようになりました。

科学的手法を用いた再生の研究

ニューエイジの中ではこうしてアジアの宗教や神秘主義思想に関心が高まりましたが、それと同時に、科学的な手法を用いて死後の世界や前世にアプローチしようとする動きも起こりました。そして臨死研究や退行催眠・前世療法といった、これまでに全くなかった新しい研究分野が起こるようになりました。

また輪廻再生に関するアカデミックな研究も始められるようになりました。アメリカの心理学者イアン・スティーブンソンは、厳格な面接調査によって客観性が認められる事例を収集しそれを分析するという手法で、再生現象の真相の究明に乗り出しました。彼の研究では、特に前世の記憶を持つとされる子供を対象とする調査が、世界レベルで徹底して進められました。

2)スピリチュアリズム内部の再生論をめぐる大分裂

再生に否定的な英国スピリチュアリズム

19世紀半ばに勃興したスピリチュアリズム運動は、出発当初から「再生論」をめぐって2つに分裂しました。再生を否定する英国系のスピリチュアリズムと、再生を思想の土台・中核とするフランス系のスピリチュアリズム(スピリティズム)が真正面から激しく対立することになりました。英国系スピリチュアリズムは、先に述べたように“神智学”との軋轢・対立を経る中で、徹底した否定論に傾いていきました。神智学を「東インド哲学の非論理きわまる子供騙しの思想であり、教義としてはほとんど無価値なものであり、危険性をはらむもの」として非難してきました。英国人の著名なスピリチュアリスト指導者の中には、当初は神智学との交流があり、神智学協会のメンバーに名を連ねていたような人物もいました(エンマ・ハーディング、モーゼス、クルックス、ウィリアム・ステッドなど)。

しかし先に述べたように、神智学の創始者のブラヴァッキーの不正が暴露されるなどの出来事もあり、英国のスピリチュアリズムは神智学と決裂し対立するようになります。英国スピリチュアリズム史上、最高の大霊媒の一人とされるD・Dホームは――「私は多くの再生論者に出会った。そして光栄なことに私はこれまで少なくとも12人のマリー・アントワネット、6人ないし7人のメリー・スコットランド女王、ルイ・ローマ皇帝ほか数え切れないほどの国王、20人のアレキサンダー大王にお目にかかっているが、“横丁のおじさんだった”という人には、ついぞお目にかかったことがない。もしもそういう人がいたら、ぜひ貴重な人物として檻にでもいれておいてほしいものである」と皮肉たっぷりに再生論者を非難しています。

このホームの言葉には、当時の英国スピリチュアリズムの思想傾向がよく示されています。

英国スピリチュアリズムと、仏国スピリチュアリズムの対立

英国スピリチュアリズムからの非難の矛先は、神智学に向けられただけでなく、神智学と同様に「輪廻再生」を説くフランスのスピリチュアリズムにも向けられました。フランスのスピリチュアリズムは、再生を思想の土台とし、再生を前提としないスピリチュアリズムは存在しないと考えていました。したがって英国スピリチュアリズムが再生を全面否定したことで、仏国スピリチュアリズムと決定的な対立状態に陥りました。

こうした全面対立と非難の応酬の中で、フランス(仏国)スピリチュアリズムの創始者アラン・カルデックは、英国系スピリチュアリズムとの決別宣言をし、自らの立場を“スピリティズム”と命名しました。こうして仏国スピリチュアリズムは、英国スピリチュアリズムと一線を画して別々の道に踏み出すことになりました。

やがてフランス系スピリチュアリズム(スピリティズム)はイタリアに広がり、さらには南米に伝播し、特にブラジルで広く普及することになりました。現在でもブラジルには多くの信者がおり、“スピリティズム”は熱烈な支持を得ています。英国系スピリチュアリズムが英語圏を中心として普及していったのに対し、仏国系スピリチュアリズム(スピリティズム)はラテン諸国を中心に拡大していきました。そのため「ラテン系スピリチュアリズム」とも呼ばれています。

このように「再生論」をめぐってスピリチュアリズム勃興当初から発生した分裂状態は、20世紀に入ってからもそのまま続きました。

英国スピリチュアリズム内部から「再生論」が登場

英国系スピリチュアリズムは長期にわたって再生論を否定してきましたが、20世紀に入るとその内部から、再生を肯定する強力な霊界通信が現れるようになりました。『霊訓』は、英国スピリチュアリズム最大の思想的拠りどころとされ“スピリチュアリズムのバイブル”と呼ばれてきました。『霊訓』は世界三大霊訓の1つとして、現代に至るまでスピリチュアリズム界におけるロングセラーとなっています。これはステイントン・モーゼスを霊媒とした、高級通信霊インペレーターからの霊界通信です。モーゼスの死後、『霊訓』の未収部分を編集したものが『続霊訓』として出版されました。そのインペレーター霊からの霊界通信の中には、アラン・カルデックの『霊の書』ほど積極的ではありませんが、再生の事実をはっきりと認めている箇所が見られます。

20世紀に入って、地上時代を熱心なスピリチュアリストとして過ごしたフレデリック・マイヤースからの霊界通信も始まります。マイヤース霊はその中で、これまで人類が知ることのなかった再生の事実を明らかにしています。そしてその後、満を持して登場したのが“シルバーバーチ霊”からの霊界通信です。シルバーバーチからの通信によって、それまでスピリチュアリズム内部を大分裂に陥れてきた再生論争に終止符を打つ方向性が示されることになりました。シルバーバーチは地球人類に、初めて明瞭で深遠な「再生思想」をもたらしたのです。

シルバーバーチによる英国系・仏国系スピリチュアリズムの統合化

『シルバーバーチの霊訓』は再生論としてばかりでなく、スピリチュアリズムに関するあらゆるテーマについても、これまでにはなかった多くの霊的知識と霊的情報を地上人類にもたらしました。ほぼ半世紀という長期にわたる高級霊からの霊界通信は、まさに前代未聞の出来事でした。この高級霊界通信によって、地球人類の霊的知識のレベルは一気に高められることになりました。シルバーバーチの霊界通信の登場によって、頑(かたくな)に再生否定論を主張してきたスピリチュアリストの多くが、考え方を変更し再生論者になりました。そうした動きにともない、それまで再生論に強固に反対してきた英国スピリチュアリズム界の方向性も大きく転換されるようになってきました。

シルバーバーチの登場によって、19世紀半ば以来、英国系と仏国系に分裂していたスピリチュアリズムは、初めて1つに統合される道が示されることになりました。シルバーバーチによって示された「再生論」によって、それまで英国系スピリチュアリズムが主張してきた再生否定論の論拠と、仏国系スピリチュアリズムの再生論主張の根拠が「高次元の霊的真理」を通じてともに整理され、整合性がつけられることになりました。『シルバーバーチの霊訓』によって、両者間の主張の食い違いが解消されることになりました。スピリチュアリズムにおける再生論をめぐる分裂は、シルバーバーチの示したより進化した高次元理論・再生論のもとで、初めて1つになる道が開かれたのです。

スピリチュアリズムは、シルバーバーチによってもたらされた霊的思想のもとに一丸となり、スピリチュアリズム自体の霊的レベルをアップさせる道が開かれました。こうして21世紀以降には、“ハイレベル・スピリチュアリズム”が地球上の隅々にまで普及拡大する態勢が整ったのです。

3)再生論によって決定される今後の宗教の運命

人間が神によって永遠に生き続ける霊的存在として創造されている以上、人間の霊的本能は常に「霊界」という永遠の世界と、霊的成長のプロセスである「再生」についての真実を求めるようになっています。地球人類は太古の昔より、永遠の霊的世界(霊界)と輪廻再生に対して強い関心を持ち続け、それに関する霊的知識を宗教から得ようとしてきました。そして死後の世界である霊界については、19世紀以降“スピリチュアリズム”を通してその事実がかなり明らかにされるようになってきました。

しかしもう1つの「再生の問題」については、いまだにその真実は地球人類にとって大きな謎のままです。言うまでもないことですが現在の地球上には、明確な再生論を示すことのできる宗教などありません。現在、地球上で圧倒的多数の信者を抱えるキリスト教は、輪廻再生論を否定します。一方、ヒンズー教や仏教のように輪廻転生を説く宗教はあっても、そこで示される再生の内容はもはや時代遅れとなり、とうてい現代人の知性を満足させることはできません。

そうした中で“シルバーバーチ”によって明らかにされた「再生論」が地球上に普及するようになれば、人々はこれまでの伝統宗教に見切りをつけるようになります。スピリチュアリズムによってもたらされた「霊的事実」に反するようなことを教える宗教は、自動的に淘汰されるようになります。どれほど霊界の存在を否定し、再生を否定しても、霊界と再生が事実である以上、それを受け入れない宗教は地球上に存在できなくなっていくのです。

この意味ですべての宗教が“スピリチュアリズム”を通じてもたらされた「再生論」によって今後、生き残れるかどうかの運命の岐路に立たされていると言えるのです。