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心霊番組に見る日本人の霊性レベルの向上

――NHKスペシャル「超常現象 科学者たちの挑戦」

No.9/2014年4月12日

これまでの心霊番組とは一線を画する、質の高い番組

「幽霊は本当にいるのだろうか?」「超能力は本物なのだろうか?」――常識では考えられないような現象に人々はさまざまな疑問を抱き、その正体を知りたいと思っています。「超常現象(心霊現象)」は、人々の好奇心をかき立てる絶好のテーマであることから、これまで多くのテレビ番組で取り上げられてきました。しかしその大半は、心霊現象を面白半分に扱ったようなものだったり、現象そのものが信憑性に欠ける怪しいものでした。

そうした中で、3月22日に放送されたNHKスペシャル「超常現象 科学者たちの挑戦」今年の1月にBSプレミアムで2週にわたって放送された番組のダイジェスト版)は、これまでの心霊番組とは一線を画する質の高いものとなっていました。この番組では、幽霊・臨死体験・生まれ変わりなど、人間の魂や死後の世界に関するものと、念力・透視・テレパシーといったいわゆる超能力と呼ばれているものを取り上げています。不思議な現象を体験した人々や超能力者たちを取材し、心霊現象を科学的に解明しようと試みている研究者たちの姿をドキュメンタリー形式でまとめています。

これに先立ってNHKは、昨年から「幻解!超常ファイル ダークサイド・ミステリー」と題して、世界中の不思議な現象にスポットを当て、その真相を解き明かそうという番組を放送してきました。これらも単に超常現象を紹介するのではなく、研究者の客観的な解説を交えた内容となっていました。

超常現象(心霊現象)というオカルト的なテーマに正面から取り組むことは、NHKの内部でもさまざまな意見があったことと思います。NHKスペシャルの制作統括にあたった大野智之氏は、「企画から10年の歳月を費やして、やっと今回の完成に至った」と話しています。超常現象と真摯に向き合い真っ当な番組をつくろうとする姿勢は、民放の心霊現象への取り組みとは大きく違っています。

“視聴率稼ぎ”の民放の心霊番組

これまで民放で放送されてきた心霊番組は、人々の好奇心を煽るだけの低俗なものがほとんどでした。真偽の程が定かではないものを心霊現象と称して、恐怖と不安を与えるだけのものや、心霊現象の肯定派と否定派が根拠のない議論をし合うものなど、視聴者はバラエティー番組の一つとして割り切って見るしかない放送がたくさんありました。ニセ霊能者とテレビ局が示し合わせてインチキをし、堂々と人々を騙したものもありました。心霊現象に対する好奇心につけ込んで不正を働くニセ霊能者と、視聴率を稼ぎたいテレビ局が一緒になって、“ウソ”を放送した悪質な番組もあり、その最たるものが「オーラの泉」(テレビ朝日)でした。

私たちが「オーラの泉」をインチキだと言うのは、江原氏がいかにも本物らしく見せかけて、実はスピリチュアリズムの知識を使って人々を騙していたからです。テレビ局と江原氏はスピリチュアリズムを利用して詐欺行為を行い、ペテンの現場を大衆の前に放送したのが「オーラの泉」です。こうしたニセの行為によってスピリチュアリズムを汚すことは、許されるものではありません。私たちが江原氏を批判してスピリチュアリズムを守ることは、スピリチュアリストとして当然の責任と言えます。

テレビ番組は国民の意識の反映

民放では、視聴率の高さがそのまま番組の評価となります。そのため視聴率を稼げるような“大衆受け”する番組づくりが要求されます。テレビ局は、多くの人々の好みに合わせて番組を制作し、視聴率を上げなければなりません。大衆の要求に応えることができなければ、いくら熱心に取り組んでも視聴率は下がり、その番組は打ち切りになってしまいます。

大衆の要求とは、人々が持っている日常意識の表れです。どんなことに興味を持ち、何に価値を置いているかが、その国の人々の意識レベル(霊性レベル)ということになります。テレビ番組は大衆の要求に応えようとするものであるため、国民の霊性レベルがそのまま反映されます。人々が低俗なものに惹かれるということは、国民の霊性レベルがきわめて低い次元にあるということを意味します。

今回のNHKスペシャルは、多くの日本人が関心を持っている心霊現象をテーマにしたという点ではこれまでと変わりませんが、そこから徹底的な取材と科学的観点からの検証へと踏み込んだことは、民放と大きく違うところです。科学的データの集積と最新理論を駆使することで「心霊現象がどこまで解明されたのか」を詳細に紹介し、現時点では“謎”として残されている事柄についてもありのままに伝えている内容は、従来の番組と比較すると格段に向上していると言えます。

NHKが初めて真剣に取り組んだこの心霊番組は、新聞やインターネットなどで取り上げられ、多くの日本人の注目を集めました。「良質な情報を人々に伝えたい」という意図を持って制作されたテレビ番組が国民から支持されたということは、日本人の霊性レベルがわずかとはいえ進歩したということです。

科学は万能ではない

番組に、超能力者として有名なユリ・ゲラー氏が登場しました。彼は今から40年ほど前、“スプーン曲げ”で世界中に超能力ブームを巻き起こした人物です。「彼の超能力は本物なのか?」という疑問は当時からずっと続いています。日本でも金属のスプーンが飴のようにグニャリと曲がる映像を見て、人々はゲラー氏の超能力に驚きました。しかしその後、子供たちが次々と“スプーン曲げ”ができるようになったことから、日本人の多くは彼のことをインチキだと思っています。

また、マジックによって超能力(心霊現象)と同じことができると断言するマジシャンもいます。「超能力はトリックを使ったマジックではないか?」という疑念は、100年以上前からありました。スピリチュアリズムの初期に、心霊現象のトリックを暴こうして著名な科学者たちが研究に乗り出しました。しかし科学者たちは、その疑念を晴らすどころか、心霊現象に直接触れる中で、それらを認めるようになったのです。

マジシャンが言うように、トリックを使って心霊現象と同じようなことができたとしても、それが超能力を否定することにはなりません。スピリチュアリズムから見れば心霊現象や超能力は間違いなく存在するものです。ゲラー氏の念力や透視もトリックではなく本物であり、サイキック能力を使ったありふれた現象と言えます。

今回の番組で取り上げられた心霊現象は、地上の霊能者(超能力者)の能力だけで引き起こされる「サイキック現象」ばかりでした。霊的観点から言えば、霊界によって演出される「スピリチュアル現象」にこそ価値があります。しかし心霊番組で「スピリチュアル現象」を扱うことは、当分の間は難しいと思われます。

また番組では、心霊現象の科学的解明に重点が置かれています。しかし科学は、どこまでも物質世界の現象を明らかにしようとするものであるため、霊的世界に由来する現象については解明することはできません。科学で立証されなくても、真実であること・疑いようのない事実は、世の中にはいくらでも存在します。私たちスピリチュアリストは、科学だけが真実を証明するものではないことを知っておかなければなりません。

心霊現象というテーマを扱うためには、正しい霊的知識が必要です。スピリチュアリズムから見れば今回の番組には多くの不満が残りますが、NHKが従来の興味本位で低俗な心霊番組から脱却し、アカデミックな観点から心霊現象を扱ったことは、高く評価できるものです。NHKは、質の高いドキュメンタリー番組で定評のあるイギリスのBBC放送と、やっと肩を並べることができたと言えます。

これから日本中にスピリチュアリズムが普及するにともなって、日本人の霊性レベルは徐々に向上していきます。私たちはテレビだけでなくさまざまなメディアが、日本人の優れた霊性を反映する良質な情報を、世界に発信するようになることを心から願っています。