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地球人類にとっての真のバイブル

シルバーバーチの霊訓(九)

シルバーバーチの霊訓(九)

  • Philosophy of Silver Birch
  • ステラ・ストーム(編)/近藤 千雄(訳)
  • アマゾン オンデマンド (ペーパーバック)版
  • 令和3年12月1日 発行
  • 本体価格 1,750円
  • ISBN 978-4-905275-22-0

内容

本書は、1987年に株式会社潮文社から出版され、その後絶版になっていた『シルバーバーチの霊訓(九)』を改題して復刻したものです。なお、復刻にあたって近藤千雄氏による翻訳時以降の状況の変化を考慮し、スピリチュアリズム普及会により、訳注などの一部を削除したり修正しています。

目次

巻頭言

まえがき

一章 シルバーバーチはなぜ戻ってきたか

二章 活字の効用

三章 霊の威力

四章 不変・不滅・不可避の摂理

五章 死別の教訓

六章 霊能者の責任

七章 魂を癒す―心霊治療の本質

八章 宗教とは

九章 青年部の代表と語る

十章 質問に答える──イエス・キリストについて

十一章 三つの出張講演から

十二章 自殺について二つの投書

十三章 おしまいに

まえがき

十二人の出席者が扇形に席を取った。みんなヒソヒソと話を交わしているが、私の目はソファーの右端に座っている小柄で身ぎれいな男性に注がれていて、まわりの人たちの話の内容は分からない。

その眠気を催すような低音の話声だけを耳にしながら、私はその男性が少しずつ変身していく様子をじっと見守っていた。ふだんは実に弁舌さわやかな人間が、そうした取りとめもない雑談から身を引くように物を言わなくなっていった。

やがて黒ぶちの眼鏡と腕時計をはずし、頭を下げ、両目をこすってから、その手を両ひざの間で組んだ。あごが、居眠りをしているみたいに腕のところにきている。

それから二、三分してから新しい変化を見せはじめた。背をかがめたまま顔を上げた。出席者たちはそんなことにはお構いなしに雑談にふけりながらも、すでに霊媒が肉体を離れていることを感じ取っていた。そして代わって主賓の挨拶の第一声が発せられると同時に、水を打ったように静寂が支配した。

その霊媒モーリス・バーバネルが肉体を離れ、代わって支配霊のシルバーバーチがその肉体を拝借≠オて、今われわれの真っ只中にいる。霊媒とは対照的にゆっくりとした、そして幾分しわがれた感じの声で情愛あふれる挨拶をし、いつものように開会の祈りを述べた。

「神よ。みずからに似せて私たちを造り給い、みずからの神性の一部を賦与なされし大霊よ。私たちは御身と私たち、そして私たち相互の間に存在する一体関係をいっそう緊密に、そして強くせんと努力しているところでございます。

これまでに私たちに得させてくださったものすべて、かたじけなくもお与えくださった叡智のすべて、啓示してくださった無限なる目的への確信のすべてに対して、私たちは感謝の意を表し、同時に、これ以後もさらに大いなる理解力を受けるにふさわしき存在となれるよう導き給わんことを祈るものでございます。

私たちは、これまであまりに永きにわたって御身をおぼろげに見つめ、御身の本性と意図を見誤り、御身の無限なる機構の中における私たちの位置について誤解しておりました。しかし今ようやく私たちも、御身の永遠の創造活動に参加する計り知れない栄誉を担っていることを知るところとなりました。その知識へ私たちをお導きくださり、御身について、私たち自身について、そして私たちの置かれている驚異に満ちた宇宙について、いっそう包括的な理解を得させてくださったのは御身の愛にほかなりません。

今や私たちは御身と永遠につながっていること、地上にあっても、あるいは他界後も、御身との霊的な絆が切れることは絶対にないことを理解いたしております。それゆえに私たちは、いかなる時も御身の視界の範囲にあります。いずこにいても御身の摂理のもとにあります。御身がいつでも私たちにお近づきになられるごとく、私たちもいつでも御身に近づけるのでございます。

しかし、子等の中には自分が永久に忘れ去られたと思い込んでいる者が大勢おります。その者たちを導き、慰め、心の支えとなり、病を癒やし、道案内となる御身の霊的恩寵の運び役となる栄誉を担った者が、これまでに数多くおりました。

私たちは死のベールを隔てた双方に存在するその先駆者たちの労苦に対し、また数々の障害を克服してくれた人たちに対し、そしてまた、今なお霊力の地上へのいっそうの導入に励んでくださっている同志に対して、深甚なる感謝の意を表明するものでございます。

どうか私たちの言葉のすべてが常に、これまでに啓示していただいた摂理に適っておりますように。また本日の交霊会によって御身に通じる道を一歩でも前進したことを知ることができますように。
ここに常に己を役立てることをのみ願うインディアンの祈りを捧げます。」

私(女性)はバーバネル氏のもとで数年間、最初は編集秘書として、今は取材記者として、サイキックニューズ社に勤めている。

私にとってはその日が多分世界一といえる交霊会への初めての出席だった。英国第一級のジャーナリストだったハンネン・スワッファー氏の私宅で始められたことから氏の他界後もなおハンネン・スワッファー・ホームサークルと呼ばれているが、今ではバーバネル氏の私宅(ロンドンのアパート)の一室で行われている。

その日、開会直前のバーバネル氏は、チャーチル(元英国首相)と同じようにトレードマークとなってしまった葉巻きをくわえて、部屋の片隅で出番を待っていた。一種の代役であるが、珍しい代役ではある。主役を演じるのは北米インディアンの霊シルバーバーチで、今では二つの世界で最も有名な支配霊となっている。そのシルバーバーチが憑ってくるとバーバネルの表情が一変した。シルバーバーチには古老の賢者の風格がある。一分のスキもなくスーツで身を包んだバーバネルの身体がかすかに震えているようだった。

そのシルバーバーチとバーバネルとの二つの世界にまたがる連携関係は、かなりの期間にわたって極秘にされていた。シルバーバーチの霊言が一九三〇年代にはじめてサイキックニューズ誌に掲載された時の英国心霊界に与えた衝撃は大きかった。活字になってもその素朴な流麗さはいささかも失われなかった。

当初からその霊言の価値を認め、ぜひ活字にして公表すべきであると主張していたのが他ならぬスワッファーだった。これほどのものを一握りのホームサークルだけのものにしておくのは勿体ないと言うのだった。

初めはそれを拒否していたバーバネルも、スワッファーの執拗な要請についに条件つきで同意した。彼がサイキックニューズ誌の主筆であることから、もしも自分がその霊媒であることを打ち明ければ、霊言を掲載するのは私の見栄からだという批判を受けかねない≠ニ言い、だから私の名前は出さないことにしたい。そしてシルバーバーチの霊言はその内容で勝負する≠ニいう条件だった。

そういう次第で、しばらくの間はサークルのメンバーはもとより、招待された人も霊媒がバーバネルであることを絶対に口外しないようにとの要請をうけた。とかくの噂が流れる中にあって、最終的にバーバネル自身が公表に踏み切るまでその秘密が守られたのは立派と言うべきである。

あるとき私が当初からのメンバーである親友に「霊媒は誰なの?」とひそかに聞いてみた。が、彼女は秘密を守りながらも、当時ささやかれていた噂、すなわち霊媒はスワッファーかバーバネルかそれとも奥さんのシルビアだろうという憶測を、否定も肯定もしなかった。

当時の私にはその中でもバーバネルがシルバーバーチの霊媒としていちばん相応しくないように思えた。確かにバーバネルはスピリチュアリズムに命を賭けているような男だったが、そのジャーナリズム的な性格は霊媒のイメージからはほど遠かった。まして温厚な霊の哲人であるシルバーバーチとはそぐわない感じがしていた。

サイキックニューズとツーワールズの二つの心霊誌の主筆としてみずからも毎日のように書きまくり、書物も出し、英国中の心霊の集会に顔を出してまわってミスター・スピリチュアリズム≠フニックネームをもらっているほどのバーバネルが、さらにあの最高に親しまれ敬愛されているシルバーバーチの霊媒までしているというのは、私には想像もつかないことだった。そのイメージからいっても、シルバーバーチは叡智あふれる指導者であり、バーバネルは闘う反逆児だった。

今から十年前(一九五九年)、バーバネル自身によるツーワールズ誌上での劇的な打ち明け話を読んだ時のことをよく覚えている。

永いあいだ秘密にされていたことをようやく公表すべき時期が来た。シルバーバーチの霊媒はいったい誰なのか。その答えは―実はこの私である≠ニバーバネルは書いた。

「それみろ、言った通りだろう!」―こうしたセリフがスピリチュアリストの間で渦巻いた。

シルバーバーチが霊媒の第二人格≠ナないことの証拠としてあげられるのが、再生説に関して二人が真っ向から対立していた事実である。バーバネルは各地での講演ではこれを頭から否定し、その論理に説得力があったが、交霊会で入神して語り出すと全面的に肯定する説を述べた。が、バーバネルもその後次第に考えが変わり、晩年には「今では私も人間が例外的な事情のもとで特殊な目的をもって自発的に再生してくることがあることを信じる用意ができた」と述べていた。

シルバーバーチの叡智と人間愛の豊かさは尋常一様のものではない。個人を批判したり、けなしたり、咎めたりすることが絶対にない。それに引きかえバーバネルは、みずからも認める毒舌家であり、時にはかんしゃくを起こすこともある。交霊会でシルバーバーチの霊言を聞き、他方で私のようにバーバネルといっしょに仕事をしてみれば、二人の個性の違いは歴然としていることが分かる。
バーバネルは入神前に何の準備も必要としない。一度私が、会場(バーバネルの自宅)へ行く前にここ(サイキックニューズ社の社長室)で少し休まれるなり、精神統一でもなさってはいかがですかと進言したことがあるが、彼はギリギリの時間まで仕事をしてから、終わるや否や車を飛ばして会場へ駆け込むのだった。交霊会は当時はいつも金曜日の夕刻に開かれていたから、一週間のハードスケジュールが終わった直後ということになる。

私も会場まで車に乗せていただいたことが何度かある。後部座席に小さくうずくまり、いっさい話しかけることは避けた。そのドライブの間に彼は、間もなく始まる交霊会の準備をしていたのである。と言っても短い距離である。目かくしをしても運転できそうな距離だった。

会場に入り、いつも使用しているイスに腰を下ろすと、はじめて寛いだ様子を見せる。そしてそれでもうシルバーバーチと入れ替わる準備ができている。その自然で勿体ぶらない連係プレーを見ていて私は、いわゆる職業霊媒が交霊会の始めと終わりに大げさにやっている芝居じみた演出と比べずにはいられなかった。

シルバーバーチが去ることで交霊会が終わりとなるが、バーバネルには疲れた様子はいっさい見られない。両眼をこすり、めがねと時計をつけ直し、一杯の水を飲み干す。ややあってから列席者と軽い茶菓をつまみながら談笑にふけるが、シルバーバーチの霊言そのものが話題となることは滅多にない。そういうことになっているのである。

シルバーバーチを敬愛し、その訓えを守り、それを生活原理としながら、多分地上では会うことのない世界中のファンのために、シルバーバーチとバーバネル、それにサークルの様子を大ざっぱに紹介してみた。霊言集はすでに八冊が出版され、世界十数か国語に翻訳されている。その世界にまたがる影響力は計り知れないものがある。

本書はそのシルバーバーチのいつも変わらぬ人生哲学を私なりに検討してまとめ上げた、その愛すべき霊の哲人の合成ポートレートである。

ステラ・ストーム