しょーちゃん、チョコをもらう
きょう、帰り際、仕事が抜けられなくなってしまい、母にこどものお迎えを頼んだ。
5時ころ家に帰ると実家の方に誰もいないので、どうせ兄の店にラーメンでも食べに行ってるんだろう
と思っていると、案の定、兄から電話があり、母とあやちゃんが来ていると言う。
しかし、しょーちゃんは、保育園のゲーム友達のだいちゃんのとこに遊びに行っているというので
5時半ころ迎えに行った。
その子の住んでいる団地に着くと、部屋の庭の垣根の外に女の子がひとりたたずんでいた。
「こんなところに女の子が?」
と思って通りすがりにちらっと見ると、あけみちゃんだった。
あけみちゃんといったら、しょーちゃんとラブラブの、
ほんとうはチラチラなんだけどホワイトファービーを持っているという、あの子があけみちゃんである。
去年はあかずきんの劇で主役を張った経験を持つ、ほんとにかわいい女の子なんである。
「あ?あけみちゃん?」
と声をかけると、ターと逃げてしまった。
なんであけみちゃんが???と思いつつ、しょーちゃんを迎えに行くと、
しょーちゃんは借りてきたスーファミのソフトを抱えて出てきた。
二人で車に向かって歩いていると、あけみちゃんが待ってましたとばかり飛び出してきて、
見ると手に何か持っている。
そこでわたしはやっと気がついた。
そうか!あけみちゃんはしょーちゃんにチョコを渡したくて、しょーちゃんが出てくるのをずっと待っててくれてたんだ!
なんてけなげな子なんでしょう。
しょーちゃんは、
「なんであけみちゃんがこんなとこにいるんだよー」
などと言いながらも顔はうれしそうである。
しばらく二人の間に沈黙があり、ふたりの真ん中を歩いていたわたしは端っこによけた。
するとおもむろに、あけみちゃんがソフトを抱えたしょーちゃんの胸に、
持っていた包みをぎゅっと押し付けると
「これあげる」
と言って笑顔で去っていった。
しょーちゃんはテレながらもニコニコして受け取った。
あけみちゃんが走って行った先には、車の中からその様子を見守っていたおかあさんの姿があった。
「ばいばーい!」
と手を振るあけみちゃんにしょーちゃんも
「ばいばーい!」
と答えた。
車の中で見せてもらったら、手作りらしきポケモンの形のチョコが
ミッキーマウスのハンカチに包まれていた。
きっとおかあさんとふたりで一生懸命作ってくれたのだろう。
うちに帰ってから、しょーちゃんが生まれて初めて女の子からもらった正式な?記念すべき
チョコなので、写真を撮ろうということになってわたしが撮ったが、
しょーちゃんも撮ると言うので2枚も撮ってしまった。
しょーちゃんが1個食べて、わたしとあやちゃんが1個づつおすそわけをもらって、
あやちゃんがもう1個食べようとするのをしょーちゃんが制して
「あとは取っとこう」
と言ってちゃんと包みなおして大事にしまい込んだ。
しかしわたしもあの時、もっと機転を利かして
「あっ、だいちゃんちのママに用があったんだった」
とかなんとか言ってふたりっきりにさせてあげればよかったなーと後悔した。
あけみちゃんがせっかく勇気を出して寒い中ずっと待っててくれたのに、悪いことをしてしまった。
ホワイトデーにはもうちょっと気を利かそうと思いを新たにしたスウであった(笑)。
そんな二人だが、春になると別々の小学校に行くことになってしまう。
あけみちゃんの初恋の人として、しょーちゃんがずっとあけみちゃんの心の片隅にでも残っててくれたら
うれしいなと思う。