カエル逝去

 

昨夜未明、天森スウさん(自称25)宅のカエルのピョン太(仮名)が、水を張った昆虫の飼育箱の中で

死亡しているのが見つかった。

調べによるとピョン太は、一昨日朝、育ての親であるスウさんによって、おたまじゃくしからカエルに

進化していたのが目撃されている。箱内に争った形跡はなく、ピョン太に着衣の乱れもなかった。

凶器等も見つかっておらず、死因は不明。

スウさんの話では、12匹飼われているおたまじゃくしの中でピョン太が一番早くカエルとなったが、

まだしっぽが5ミリ程度残っていたという。

箱内の大きなサザエの貝殻の上に乗ったまま、目はうつろでじっと動かず、思い悩んでいた様子だった。

スウさんは「一番早くカエルになったので、まわりから妬まれたり嫌がらせを受けていたのでは。

本人はとても悩んでいたようだったが、何もしてあげられず、残念です」と唇をかみしめた。

その後、「このままでは1匹カエルになる度に、また死者が出るのではないか」というスウさんの配慮から、

残り11匹のおたまじゃくしは、ピョン太の亡骸と一緒に近所の公園の川に放された。

川の中を元気に泳ぐおたまじゃくしを見送りながら、スウさんとその子供達は

「立派なカエルになれよ。亡くなったピョン太のためにも・・・」

と願わずにはいられなかったようだ。

 

・・・という新聞記事が、5月28日の売売新聞の朝刊に載っていましたが、何を隠そう、あれは

うちのカエルの事だったんです。

どこから聞き付けたのか、朝から記者の方が来て、お茶を出したり写真を撮られたりお化粧直したりで

大忙しでした。

数日前から、飼育箱の水の中でぴょんぴょん跳ねるおたまがいて、こどもたちと

「おお〜。おたまが跳ねた〜」

なんて言いながらおもしろがって見ていたのでした。

そのおたまが、あんなに悲しい最後を迎えるとは・・・。

わたしは、夏になるとよく兄や知り合いからかぶとむしをいただくのですが、夏の終わりになると

しょーちゃんを説得して、森みたいな木がいっぱいのところに逃がしてしまいます。

そのまま飼ってると死んでしまいそうで、飼育箱の中で最後を迎えるより自然の中に帰したいからです。

夏の間、充分こどもたちと遊んでくれたことだし。

それに、わたしがもし死ぬ時は、いろんな管を入れられて病院で死ぬより、木陰の籐のいすに寝そべって

家族に見守られながら静かに死にたいと思うからです。

だから、ピョン太がカエルになってすぐ死んでしまったのはちょっとショックでした。

ひとりぼっちのカエルのままで。

ごめんね、ピョン太。

君が成長する姿を見せてくれるたびに、しょーちゃんもあやちゃんも、ゆうくんも喜んでいました。

さようなら。そしてありがとう。

 

 

ばっく