花見とカメ

 

きょう、夕方家に帰ると、兄達が、店を休みにして近所の公園に花見に行くというのでついていった。

平日だというのに、けっこう人が出ていて、みんなでこたつのあるほったて小屋みたいなお店に入り、

おでんとかところてんとかを食べた。

いろんな屋台が出ていて、きんぎょすくいのとこでカメすくいもやっていた。

そのうち、ゆうくんがカメすくいをやりたいと言い出し、こどもたちはカメをすくいたがった。

わたしは

(カメかよ〜)

と思ったが、なごやかな雰囲気に流され、いっしょに見に行った。

しょーちゃんとゆうくんがすくえずにいるなか、あやちゃんは何食わぬ顔でヒョイと1匹すくっていた。

「あっ、あやちゃん取ったよおー。すごおーい」

親のわたしがよろこんでしまった。

きんぎょすくいの袋に水とカメを入れてもらってみんな1匹づつもらった。

兄まで出てきてカメを2匹すくい全部で5匹になっていた。

そのあと、親戚のおばさんのスナックに行こうということになった。

わたしはゆうべ、会社の歓送迎会にこどもを連れて行って、帰って来たのが10時近かったので

こどもをお風呂に入れられず、きょうは早く帰ろうと思っていたが、やっぱり行くことにした(笑)。

兄達が先に出て、わたしの車にゆうくんとしょーちゃんとあやちゃんを乗せた。

行く途中で、しょーちゃんが突然

「あっ、カメの水こぼしちゃったあー」

と言って大騒ぎになった。

「やだもー。なんでよー。もおー。早く拭いてえぇ」

と、運転しながらダッシュボードの上のティッシュをシュッシュと取り出して後部座席に渡す。

もう一度シュッシュッと取って後に渡した時、ゆうくんがびちゃびちゃのティッシュを返してきた。

わたしはティッシュを渡しながらそれを受け取り、助手席の下のゴミ箱に入れようとした時だ。

  ガシャン!

おかまを掘ってしまったのである。

やってもうたのである。

前の車からお兄さんが出てきて、わたしも車を降りた。

「すみません。大丈夫ですか」

と言うと、お兄さんは無言で車をチェックしていた。

あまりスピードは出ていなかったので、バンパーがちょこっと浮いたくらいだった。

わたしは以前、会社の車に乗っていてどこかのおばさんの車をこすってしまったとき、警察を呼ばないで

修理代はわたしが払いますと言ってしまい念書まで書かされ社長に注意を受けたのを思いだし、

警察を呼ぶことにした。

その前に、一人だと不安なので、電話して兄と義姉さんに来てもらった。

わたしは相手のお兄さんとはほとんどしゃべれずにいると、兄が缶コーヒーを買ってやったり

自分の店の宣伝をしたりして、なごませようといろいろ話しかけたりしてくれていた。

車の中ではこどもたちが騒ぎまくっていて、わたしの車のカギを壊していて、

まさに踏んだり蹴ったりって感じだ。

30分くらい待ってやっと警察が来て、事情聴取してさっさと帰ってしまい、

そのあとわたしが保険に入っている親戚のおじさんにも来てもらった。

全て終わってお兄さんが帰るとき、兄が、気持ちだからと言って、なにか渡していた。

最初は頑なに拒んでいたお兄さんだったが、なんとか受けとっていた。

その時初めてお兄さんの笑顔を垣間見ることができたように思う。

お兄さんの顔はあまり見れなかったが、前髪がきれいにまっすぐ切り揃えてあったのだけは覚えている。

「どうもすいませんでした」

一族でごあいさつして見送った。

時計を見ると8時半になるところだった。

せっかくのお休みなのに時間を潰させてしまったことを兄と義姉さんに詫び、

このまま帰ろうかとも思ったが、それでは淋しすぎるので、やっぱりおばさんのお店に行くことにした。

お店では、さすがにお酒を飲む気にはなれなかったが、こどもたちはドタバタ走りまわり、

カラオケを歌い楽しそうだったのでつい帰りそびれてしまい、結局家に帰ったのは11時を回っていた。

途中、車の中であやちゃんは寝てしまった。

突然、「プププププププププププ・・・・」という音が聞こえてきたので、なんだろうと

しょーちゃんとふたりいぶかしく思っていたのだが、よく聞いてみるとそれは、

どうやらあやちゃんの寝屁のようだった。

そのあとけっこう強めの臭いがして、しょーちゃんとふたりで

「あやちゃんおならしたー!くさー!」

と大騒ぎしてしまった。しょーちゃんは

「あやちゃん、ブロックくずしたみたいなおならしたよね」

などと言うので、おかしくてまた事故りそうになった。

あやちゃんは車から降りて家に入ると、玄関に行き倒れのように倒れて寝ていた。

その日は仕方ないので洋服のままふたりをふとんに寝かせた。

しかし花見の時点でお酒を飲んでなかったのは不幸中の幸いだったとしみじみ感じた。

夜こどもを寝かせてひとりになってから、すごくおなかがすいている事に気づいた。

こんなに遅くまでこどもを連れまわして遊んだのは初めてで、いろいろ考えていたら眠れず、

次の日になって、事故ったことを思い出し一気に落ち込んだスウであった。

 

 

ばっく