黄色いシミのひみつ

 

その黄色いシミが気になり始めたのは、1〜2週間前からだった。

最初は洗濯物を干している時に、あやちゃんとわたしの靴下に付いているのを見つけた。

(いったいこれは・・・)

その後も何度か、洗濯物に黄色いシミが付いているのを確認した。

ショックだったのは、買ったばかりのわたしのお気に入りのサマーセーターの袖と裾の所にも

黄色いシミが付いてしまった事だ。

シミ抜きで叩いても落ちない。

シミは落ちずにスウが落ち込むの法則って感じだ。(意味不明)

わたしは洗濯槽の裏があまりにも汚れていて、なにかの汚れがたまっているのではないかと考えた。

さっそく洗濯機のゴミ取りのたまったゴミを取りだし、洗濯槽クリーナーで裏の掃除をしてみた。

それでも黄色いシミは、また違う靴下に新たに付いてしまっていたのである。

靴下に付いていると、靴の中まで少し黄色くなってしまったところがあって、さすがのわたしも

のほほんとしていられなくなってきて、毎日黄色いシミのことばかり考えるようになってしまった。

靴下に付着しているということは、気づかずに黄色い液体を踏んづけているということだろうか。

気味が悪い。

そうこうしているうち、とうとう押し入れの前に敷いてあるふとんにまで

黄色いシミが付着しているのが、あやちゃんによって発見された。

その時ふと、わたしの頭の中で最悪の事態がよぎった。

なにかいるのだ。

わたしたち以外の、得体の知れない生き物が。

そして黄色いシミは、そいつのおしっこなのではないだろうか。

そういえばこの間、流しのところに5センチくらいのゲジゲジが這っていた。

わたしはとっさにクレンザーをかけてゲジゲジの動きを止め、ちょうど茹でていたうどんの

茹で汁をゲジゲジにかけて退治したんだっけ。(残酷?)

そろそろいろんな虫が出てくる頃だし、部屋の中は日中閉めっきりの上、洗濯物まで干してあり、

この時期じめじめ感もひとしおだ。

いや、虫なのか?考えてみれば虫がするおしっこなんてたかが知れているではないか。

もしかしたら、ヘビとか、ねずみとかの小動物が、この部屋の中に潜んでいるのかも知れない・・・。

いやいや、ひょっとしたら未だかつて見たこともないような生き物だったりしたら・・・。

そんな事を考えていたらいてもたってもいられなくなり、明日とりあえずバルサンを焚かなきゃ、

と心に決めた矢先、ついにシミの原因であろう黄色い液体を発見したのである。

それは思いがけずこたつのテーブルの上に付着していたのだ。

わたしは注意深くあたりを見まわし、なにかの気配を必死で感じ取ろうとしたが、気配といったら、

ゲームをしているしょーちゃんと、ハサミで何か切って遊んでるあやちゃんくらいだった。

わたしはそっとティッシュでそれを拭き取り、思いきって臭いを嗅いでみた。

・・・あっ!

わたしはとっさにひらめいた。

このにおいは!

電池の液漏れ!

見ると、テーブルの上に電動のおもちゃがデンと乗っている。

スイッチがONになっているが動いていない。

手に持ってみると、明らかにそれは黄色い液体で汚れていた。

「犯人わかっちゃいました」

わたしが中谷美紀だったらきっとそうつぶやくに違いない。

確信をつかんだわたしは、はやる気持ちを抑えて電池の入っているところを開けてみると、

果たして電池は液漏れしていた。

思ったとおりだ・・・。

わたしは、やっと黄色いシミの正体を突き止めた事に安堵し、ひとり薄気味悪くほくそえんでみせた。

そうか。いつも押し入れにしまわれているおもちゃを、こどもがふとんの上に出して遊んだり、

わたしがおもちゃを片づけたりした時に、靴下やセーターに黄色い液体が付着したのだ。

全ての謎が解けた。じっちゃんの名にかけて。

得体の知れない生き物なんて、この部屋には いるわけないのだ。

なに考えてんの。ばっかみたい。

今夜は枕を高くしてゆっくり眠ることにしようっと。

 

でもやっぱり朝会社に行く時は、トイレとか台所の窓を少し開けて換気をよくしとかなくっちゃね、

と思いを新たにしたスウであった。

 

 

ばっく