暖かいこたつのある生活
こたつが壊れた。
夕方、ご飯が出来てさあ食べようと足を入れるとなんか寒い。
スイッチを見るとちゃんと「入」になっている。
コンセントも抜けていない。
「あれ、こたつつかないよ」
と言ってみたが、しょーちゃんもあやちゃんもぼーとしている。
「しょーちゃん何かした?」
と聞いてみたが、
「しょーちゃん何にもしてないよ」
「あやちゃんも何にもしてないよ」
という答えが返ってきた。
わたしは、この寒いのにまさかこたつが、こたつが・・・と少々パニックになり、
中のヒーターの部分を足でガンガン蹴りあげた。
「つかないよー。こわれちゃったよー」
と言うと、しょーちゃんが、
「かーちゃんが蹴ったからじゃない?」
などとぬかすので
「かーちゃんは壊れてるから蹴ったの。なんでかーちゃんなのよ」
とオトナゲなく喧嘩腰になってしまったが、壊れてしまったものは仕方ない。
このこたつは、わたしが一人暮しを始めて初めて迎えた冬に買ったピンクの家具調こたつだ。
思えば10年は軽く超えている。寿命なのだろうか。
中のヒーターは一昨年付け替えて、コンセントはこないだ買い換えたばかりだというのに。
しばらくそのまま夕ご飯を食べていたがやっぱり寒くて、エアコンはついているものの、
足元が寒いのがこんなに心細いとは思わなかった。
その日はわたしも早めにふとんに入って寝ることにした。
翌朝、こたつのスイッチを入れてみたが、やっぱりつかない。
朝ご飯を食べていても寒くて、わたしは膝を立てて体育座り、
こどもたちは毛布を持ってきて体に巻き付けていた。
あやちゃんはそれでも寒くて
「さむーいよー」
と震えて体に余計な力が入ってしまったらしく、
ぷー
とおならが出てしまった。
わたしはおかしくて、不覚にも大笑いしてしまい、
「あっはっは。あやちゃん寒くて力が入っちゃって ぷー だって」
と言ったらしょーちゃんも一緒になって笑いだした。
一家団欒と思いきや、あやちゃんは怒って、でも自分でもおかしいんだけど
そこはプライドが許さなかったらしく、少し顔をゆるめたものの鼻の下を伸ばして必死でこらえ、
「あやちゃんぷーしてないもん!」
と訴えながら泣きそうになっていた。
そんなあやちゃんを見て、わたしは思った。
(このままでは家庭崩壊に陥りかねない)
そして今日、こたつを買ってくるしかないと決断した。
仕事が終わって保育園にふたりを迎えに行き、家に帰ってこどもたちを母に預け、
いちおう、こたつが余ってないか母に聞いてみた。
母は、でっかいのならあるけどそれを置いたらわたしたちが座るスペースがなくなるだろうと言った。
わたしもでっかいこたつは嫌だ。
「なんでこたつ?」
と母が聞くので、
「こたつ壊れちゃったん」
と言うと、イトーヨーカドーの商品券を5000円分くれた。
現金じゃなかったのは残念だが、ほぼ狙い通りだ。
さっそくイトーヨーカドーへ急いだ。
が、こたつは1万円と1万5千円のが2つ置いてあるだけだったので、仕方なくヤ○ダ電気に行ってみた。
そこにはけっこう豊富な品揃えでこたつが並んでいた。
一番安いのが5980円で、それでも高いなと思ったのだが、背に腹はかえられなかったので
それを買って店員さんに車に積んでもらった。
家に帰って、重いこたつをひとりで運び込み、しょーちゃんとさっそく開けてみると、
足につける部品が1つ割れていた。
それが無くてもこたつとしての機能は充分なのだが、不良品なのが悔しくて、
「なんだよー割れてるよー」
と、わたしも夕飯の支度をしなきゃいけないのに時間が忙しくなってイライラした口調で
こたつにあたってしまった。
そばにいたしょーちゃんは、そんなわたしをなだめるかのように
「ほんとだー割れてるよねーあたまくるよねー」
と同調してくれた。
急いでこたつを梱包し直して、また重いこたつを命がけで車に詰め込み、
再び家電屋に車を走らせ、新しいのと交換してもらって帰ってきた。
また不良品だったらどうしようと思ったが、今度はだいじょうぶだった。
しょーちゃんとふたりで組み立てて、はやる胸を抑えてスイッチを入れた。
カチ。
ついた。
ついたし、ちゃんと暖かいのだ。(当たり前だ)
わたしは、いまだかつてこたつが暖かいということに、これほど感動したことがあっただろうか。
「しょーちゃん、あったかいよ!」
「うん、よかった!」
(抱き合って涙するふたり)
そのころ、そんな母の苦労を知らないあやちゃんは、
実家のこたつでぐうぐうと高いびきをかいていたのであった。
朝寒すぎて放屁したくせに(笑)。
しかし、翌日のヤ○ダ電気の新聞チラシに1080円のこたつが出ていたことは、
この時のスウには知る由もなかったのである。