奥さんの定義
きょう、お昼休みに近くのパン屋さんに行く途中、でっかい犬が道路を一匹だけでお散歩していた。
首輪をしてて鎖もついてたので、つながってた鎖が外れて脱走してきたのだろう。
しかしその道路は4車線とけっこう広く車もビュンビュン走っていたので、犬は何台も車を止めていた。
命知らずというか能天気というか、お気楽な犬だ。(そういう問題なのか?)
わたしは信号待ちでその様子をちょっとハラハラしながら見ていると、後ろから来たおばさんが、
「あらやだ。危ないわねえ。どっか連れていくにもおっきいし、どうしたらいいのかしら」
と言いながらも、わたしと一緒に目の前のパン屋に入っていった。
パンを買って出てくると、まだその犬がウロウロしていて、今度はちゃんと歩道を歩いていた。
わたしが帰る方へ歩いていくので、
「わんこー。どーしたー」
と声をかけると、振り向いてわたしのすぐ前を歩き出した。
チラチラと時折振り返りながら、わたしを確認するように歩いていた。きっと
(なんてきれいなおねえさんなんだろう。)
とでも考えているかのように見えなくもない。
わたしは、うちの会社のそばに交番があるので、そこに連れていってあとはおまわりさんにおまかせしようと考えた。
でもあんまり大きい犬なので、下手に鎖を持つと、箸より重いものを持ったことのないわたしは
引っ張られてしまうと思い、後をついてなにげに誘導することにした。
すると、後から自転車に乗った飼い主らしき男の人がやってきて、何も言わずにその犬を連れてってしまった。
私がかまわず帰ろうとすると、そばにいかにも田舎のおじさんという感じのおじさんが2人いて、
「あんなでっかい犬が歩ってたら、おっかなくってしょーがねえよな」
とか言っていると思ったら、いきなり
「ねえ奥さん」
と、言っているので、(奥さんて誰だよ)と思ったが、それらしき人物はわたししか見当たらず、
おじさんを見ると確かにわたしを見ていたので、
「ねえー。さっきも道に出ちゃって危なかったんですよー」
などと調子よくとっさに答えてしまったが、通りすがりのおっさんに「ねえ奥さん」と呼ばれた事に
少なからずショックを覚えてしまった。
そこでこの「奥さん」という言葉の定義について考えてみた。
1.「奥さん」とは結婚している女のひとのことである。
2.「奥さん」の年齢層としては適齢期(今の時代だったら28才くらいからだろうか)から60代くらいまで。
70代くらいになると大抵「おばあちゃん」に呼び名が変わる。
3.初対面の女の人を「奥さん」と呼ぶ場合は、呼ぶ人が魚屋さんまたは八百屋さんである。
4.「奥」という名字である。
5.だんなが会社の人を家に連れてきた時に呼ばれがちな呼び方である。
6.団地に来た避妊具販売のセールスマンが使いがちである。
以上のことから推理して、
4で考えると、おっさんはわたしの名字を知らないから当てはまらない。
5で考えると、おっさんはだんなの会社の人ではない。その前にわたしにだんなはいない。
6で考えると、場所は団地ではなかった。しかもおっさんは手ぶらだった。
結論として、おっさんは魚屋さん、あるいは八百屋さんを生業としているか、わたしを一目見て
「年の頃なら28、9の当然結婚しているであろうきれいな女の人だ。
そうさこんな人が売れ残ってるはずがないだべさ」
という判断をとっさに下し、声をかけずにはいられなかったものと思われる。
ナイス判断!
奥さんばんざい!