離婚とこども
きょうはしょーちゃんの機嫌が悪く、あやちゃんをぶったりダダをこねたりしていたので
少し怒ったら、泣いてしまった。
泣くのはいつものことなのだが、いきなり、
「しょーちゃんのとーちゃんは死んじゃったの?」
と、哀しそうな顔で聞いてきた。
突然の問いに、わたしは何と答えていいのか、迷った。
ここで、この状況で、正直に離婚したことを言ってしまうべきか。
でも解ってくれるだろうか。今言って、新年を迎えても落ち込んでたりしたらかわいそうだし・・・。
「なんで」
「いいから、死んじゃったの?」
「・・・そうだよ」
「ふーん。そうなんだ・・・」
しょーちゃんは泣きだした。えーんって声を出して。こたつにもぐって。
そのあとしくしく淋しそうに泣いた。
「しょーちゃんね、涙が出ちゃう・・・」
心臓をぎゅっとわしづかみにされたようで、苦しかった。
何を言っていいかわからなかった。
「でも、かーちゃんいるじゃん。あやちゃんもあーちゃんもじーちゃんもゆうちゃんも、
みんないるからいいじゃん」
しょーちゃんはうなづいてくれなかった。
ぎゅうぎゅうと胸が締め付けられて息ができなくなりそうだった。
もう何も言えなかった。
しばらくして、あやちゃんが
「おなかすいた」
と言うので、
「そーだね。何食べたい?」
とわざと明るく聞くと、
「しょーちゃんカレーかラーメンがいいー」
少し元気になっていた。
空腹には勝てないのだろうか。
さっそく3人でカレーを食べに出かけた。
カレー屋さんではいつものしょーちゃんに戻っていたが、
わたしの中でこれでよかったんだろうかという思いがふつふつと沸いてきた。
お父さんが死んじゃったと伝えることの方が、しょーちゃんにとってショックだったのかも知れない。
でも、しょーちゃんのとーちゃんは、すでに再婚し、こどももいる。
ありのままを言おうかと思ったが、まだ早いと思う。
相手にこどもがいることを言わなければ、いつか会えると思って待つんじゃないだろうか。
でも、とーちゃんは会ってくれるかわからない。
できればこのままずっととーちゃんとは会わせたくないと思う。
離婚したころは、こどもたちに聞かれたらありのままを話して、現実を受け止めてもらおうと考えていたが、
今聞かれるとやっぱりどう答えていいのかわからなかった。
もっとしょーちゃんが大きくなってから、全部話そうと思った。
それまでは、あの人には死んでてもらう(笑)。
なんだか中途半端な感じがしていやだけど、そうしよう。
もう再会番組も見ないことにしよう。
実はわたしも幼い頃、父と母が離婚して、母に引き取られたのであった。
父は、すぐには再婚しなかったので、年に何回かは会っていた。
でも、ある時、父と遊びに行って家に帰ってから、父が一人で淋しそうに写っている写真を思い出して、
寝る前に急に涙が出てきたことがあった。
みんな一緒に暮らせればいいのに。
4人で笑い合う日を、心の隅で夢見ていた。
しょーちゃんには父親の記憶がまだ残っている。
いっぱいおもちゃを買ってくれた、やさしい父親の記憶。
しょーちゃんはそんな父親の思い出を、ずっと忘れないんだろう。
あしたもしょーちゃんは元気でいてくれるのかな。