しょーちゃんのホワイトデー

 

きのうはホワイトデーだった。

しょーちゃんは何を返したらいいだろうと考えて、先週、とりあえず棒のアメの花束を買った。

しょーちゃんは、

「あけみちゃんは黄色が好きだから」

とかなんとか言いながら、これにしようかな、あ、こっちの方が、って感じで選んでいた。

これだけじゃさびしいかなと思い、クッキーを作ることにした。

日曜の夜から生地を作って一晩寝かして、前の日にあやちゃんも交えて3人で形を作った。

型抜きで小さい花をいっぱい作った。

しょーちゃんは

「これ、オタチ」とか「チコリータ」と言いながら、ポケモンを作っていた。

作ったはいいが、オタチは大人のこぶしくらい大きかった。

焼き上がってから板チョコを湯煎で溶かして顔を描いた。

点々の目と一本線の口だけど、不思議とこどもの描くものってかわいい。

小さく型抜きした花には、チョコでひとつひとつに文字を書いた。

 

   あけみちゃんありがとう

 

よく乾いてから、しょーちゃんが作ったドラえもんの箱に詰めた。

「しょーちゃん、オタチ入んないよ」

「ビニールに入れればいいじゃん」

オタチだけビニール袋に入れて箱と一緒に黄色いハンカチに包んで花束を添えた。

しかし、問題はあけみちゃんの家がわからないことだ。

保育園の帰りというと他の子もいて渡しづらいと思うし・・・。

しょーちゃんが聞いたところによると、だいちゃんちの近くの赤い屋根の家らしい。

(そんだけじゃわかんねーよ!)と思い、とりあえずあけみちゃんの家を探しに行くことにした。

だいちゃんちの団地付近を車でウロウロしたが同じ苗字の家が多くてわからなかった。

あきらめて帰路につこうとしたその時、なにげに駐車場で車を拭いている人を見たら、

偶然にもあけみちゃんのおかあさんだった。

「あ!あれあけみちゃんのおかあさんだよ!」

なんて叫びながらバックミラーで必死に確認していたら、電柱にぶつかりそうになった。

あぶないあぶない。

よし、これであけみちゃんちはバッチリだ。

3人は翌日を待つことにした。

 

14日。

保育園が終わって、さっそく車であけみちゃんちに向かった。

あやちゃんはアメの花束を持ちたがり、

「これ、あやちゃんがあげるー」

とはりきっていた。

あけみちゃんちに着いてさあ行こうというときに、しょーちゃんの様子がおかしい。

「しょーちゃん、おしっこ?」

と聞いてみると、そうだと言う。

「もおー。なんでちゃんとしてこなかったん!」

その辺で立ちションしてるとこを関係者に見られるとカッコ悪いと思い、

また家に帰ってトイレを済ませ手を洗って、再びあけみちゃんちに向かった。

途中であやちゃんは寝てしまっていた。

しょーちゃんがあやちゃんを起こそうとしていたので、

「寝てるからほっときな」

と言うと、しょーちゃんは

「だってあやちゃん、楽しみにしてたのに」

と残念がった。

家についてしょーちゃんが門のとこのインターホンを押すと、おばあちゃんが出た。

「入っておいで」

というので、しょーちゃんだけ行かせた。

渡したらすぐ帰ってくると思ったら上がりこんでしまったらしく、なかなか帰ってこないので、

おばあちゃんを呼んで話し合い、1時間後に迎えにくることにした。

家に帰ってあやちゃんを起こしたら、あけみちゃんちに行くーと言って泣いて怒られた。

1時間後に迎えに行くと、しょーちゃんはアンパンマンのひなあられをもらって出てきた。

「なにして遊んだの〜?」

と聞くと、

「メダロット!」

と、元気に答えたしょーちゃんであった。

 

 

ばっく