生きてく強さ2
琴子の様子がおかしかった。なんかあったのか?
俺は午後の診察中、琴子の考えそうなことを思い巡らせた。
今日は検診はなかったし、俺達はうまくいっている、と思う。
俺はさっぱり琴子の考えてることが思い当たらなかった。

仕事を終え、足早に家路に着く。

「琴子、なにかあったのか?」琴子に聞いてみる。

入江君が少し息を切らせて帰ってきた。
心配して急いで帰ってきてくれたんだね。入江君の優しさが心に染みた。
入江君を独り占めしたい。でも、美咲ちゃんの気持ちも大切にしてあげたい。
 
どうしたらいいかわからなくなったあたしは、入江君に今日のことを話すことにした。


「で、おまえはどうしたいんだ」
わからない…。でも、美咲ちゃんは…

「お前は美咲ちゃんがもうすぐ死んでしまうから、願いを叶えようなんて
思うのか?」

美咲ちゃんが死んでしまうから、という気持ちもある、でも大切にしたいんだ
美咲ちゃんの恋心を。

入江君は淡々と言葉を紡ぐ。あたしは、考えをまとめた。

「入江君、美咲ちゃんの想い、叶えてあげて。」

びっくりした。いくら子供といえども、デートしろなんて、琴子にいわれると思わなかった。
「いいのか。」

琴子はうん、とうなづいて、ぽろり、涙を流した。
「美咲ちゃんが入江君に恋した気持ち、あたしが一番わかるはずだもん。
大事にしてあげたいんだ。 でも…」
帰ってきてくれるよね、あたしのところに。
といって、潤んだ瞳で俺を見つめた。

こいつ…いまだに俺の気持ち信じてねぇんだな…
ふぅ、ため息をついて琴子を抱きしめる。
マタニティブルーなのか?
「俺の帰る場所はここだよ。今までもこれからもね。だろ?奥さん。」
琴子はふふっと笑ってやっと安心したようだった。


翌日、あたしは美咲ちゃんに会いに行った。
「美咲ちゃんのお願い、1日だけ叶えてあげようって、入江君と話したよ。
でも、美咲ちゃんの体のことがあるから、西崎先生に相談してからね。」

「琴子さんありがとう!」
美咲ちゃんは顔を赤くして、満面の笑みを浮かべた。


見ているよりも美咲ちゃんの体は衰弱していた。
「どこか出かけるのは無理だろうな。病院の中庭が限度だね。」
西垣先生に一日デートは了承してもらえたが、
晴れた日に少しの時間だけ、と念を押された。


「じゃぁ、明日晴れたら、迎えに行くからね。美咲ちゃんの具合が悪いと、
延期だから、しっかり眠って。あ、睡眠不足はお肌にも良くないんだから。」

美咲ちゃんとのデート前日、琴子がお見舞いに来た。なにいってんだか、
5歳のお肌だぞ。


明日は入江君が別の人とデートするんだ。
少し、やっぱりジェラシー。でも、おかあさんと影でみてるから、ね。
アキ
2003年10月24日(金) 01時59分10秒 公開
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■作者からのメッセージ
まとまらなーーーいっ
でも次かその次で終わる予定…

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o90GQQ Click!! Bradley ■2015-08-11 02:57:08 188.143.232.26
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