魅力



美人で、才女で、料理も出来て、このあたしでさえ足元にも及ばないような完璧な女性。

・・・だったら、諦めもつくって思ってたのに。



「はぁぁ・・・」
今日もまた初歩的なミスをして主任に怒られてる琴子を見てタメ息ついちゃうあたし。

「分かりましたかっ!あなたの元気と根性だけは認めますが、それだけではダメなんですよっ!!」
「・・はい、すいませんでした」
でも、主任。
その元気と根性で。
あの入江さんを落としちゃったんですよ、この子は。

「まったく、もぉ。まだまだ胃痛の治まることはなさそうね」
主任はブツブツ言いながら、ナースステーションを出ていった。

「モトちゃ〜〜〜ん」
途端に泣きついてくる。
「まったく。アンタも毎日毎日よくそこまでドジが出来るもんね、感心しちゃうわ」
半ば呆れ気味に言う。
「でも、あたし、一所懸命やってるんだよぉ」
「ふぅ〜。ま、1回でもミスしないように頑張んなさいよ」
あたしは琴子の頭を軽くポンポンとたたきながら励ました。
そう、入江さんがそうするように・・・。


「琴子」
背中から大好きな声。
でも、その声が呼ぶのはあたしの名前じゃないのよねぇ・・。

「入江くぅ〜ん」
甘ったるい声で振り返る琴子。

「はぁぁ・・・」
またタメ息が出ちゃう。

ドアに右手をかけて、左手を腰にあててる。
あたしの好きな格好。
でも、その視線はあたしを通り越してる。

「またドジやらかしたんだって」
「あ、アハハ、何で知ってるの?」
「さっき、主任さんとすれ違ったんだよ」
「そ、そぉなんだ・・」
苦笑いする琴子をムスッとしながら、でも、その瞳は少しだけ微笑んでいる。
きっと、琴子は気付いてないのよね。
「あ。ねぇ、入江くん。今日、一緒に帰れる?」
「話変えんなよ」
「んー。エヘヘ。ねぇ、ねぇ」
「・・ったく。・・帰れるよ」
「本当ー?嬉しいな。じゃ、あと2時間頑張ってくるね!」
「せいぜいあと2時間はミスしないように気をつけろよ」
「もぉー、入江くんてば!あたし、そんなにミスしてないよ?ね、モトちゃん」
ヤダ。急にこっちにふらないでよ。
第一、アンタがミスしないわけないじゃないの。
「あと2時間、怖いわ」
「もー、モトちゃんまでヒドイ」
「ま。帰れるように、ちゃんとやれよ」
そう言って、入江さんはスタスタと歩いていってしまった。
さっきまで、こっぴどく主任に怒られて、めげてたはずの琴子は、もうすっかり上機嫌。
「やんなっちゃうわね、もう」
「ん?なに?」
クルクルとした瞳でのぞきこんできた琴子。
思わず、ドキッとしちゃう。
こんな気持ち、かき消すように、琴子にデコピン。
「イタッ」
「なんでもないわよ〜。さ、仕事、仕事」
「モトちゃん!!」
ナースステーションに琴子を置いて、あたしは出ていった。

どうしてかしら・・。
あたしは物心ついた時から、女になんて興味なかったわ。
それなのに、琴子にはドキッとしちゃう。
ううん。でも、これは恋愛感情じゃない。
だけど、美人でも才女でも・・・そうじゃない琴子の魅力。
その魅力をあたしも感じちゃってるのかもね。
「ふふ・・」






ARK
2004年11月01日(月) 23時17分04秒 公開
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■作者からのメッセージ
モトちゃんの視点で書いてみました。多分・・続きます。

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みいなさん、いつも読んで頂き、ありがとうございます。続きも投稿させて頂いているので、良かったら読んでください。 ARK ■2004-11-05 09:14:20 61-27-120-235.rev.home.ne.jp
次々と素晴らしい作品をありがとうございます!!続きも楽しみにしています!! みいな ■2004-11-04 22:36:39 air32-e16.kcom.ne.jp
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