seeds of discontent 2 |
幼稚園の大半の時間は子どもの自由な遊びの時間で占めている。 子ども達はそれぞれに自分がしたいように遊んでいる。薫もその一人だ。 薫にとって今一番面白いのが積み木で、今も色々な形の積み木で城を作り上げようと奮闘しているが、未だに斜めになった所へ積み上げたりして、せっかく高くなった建物がそのひとつの失敗によって崩れ落ちてしまう事が多々あった。 他の子よりかは頭が良いという風に認められていても、まだそこまで積み木を使いこなせるほどの知能はついていない。 カチンと、ひとつ積み上げてはバランスを見る。一人集中しているため、周りの声などまったく入ってこない。 「かおるくん、わたしもまぜて。」 一人黙々と積み木遊びに勤しんでいると、一人の子どもが傍らに座り込んできて声をかけてきた。 キラキラと瞳を輝かせて積み上げた城を見上げて、すごいね!と声をあげるが、薫は集中していて隣に誰かが来ていることに気がつかない。 「あ、これをココにおいたらどうかな?」 不意に思い立ったように女の子は傍らにある赤い三角の積み木を丸屋根の上に置いた。 「あっ!!!」 薫は驚きの声をあげた。 隣に女の子がそんな行動を取るとは思わず、無理に積み上げられた積み木はもろくもバランスを崩して周りの建物を巻き込みながら倒れていった。 「・・・・・・」 「ごめんね?くずれちゃったね。」 まるで人ごとのように謝る女の子。 薫はそれを無言で無視して、崩れ落ちた塊をかき集める。 怒りは頂点に達していたが、それで女の子を怒る事はしたいとは思わなかった。だけど、それでもせっかく築き上げたものが他人の手によって崩された事実はどうにもならないほどの悲しみをもたらしていた。だから、その気持ちを抑えるためにも無言で片付ける事に集中するしか、今の薫には出来なかった。 それなのに、無視されたことで女の子はさらに謝罪の言葉をかけてくる。 「ごめんね、ごめんね?かおるくん、おこってるの?おこってる?」 しきりに声をかけてくるが、薫はそれを無視する。 しまいには女の子が泣き出してしまった。 その泣き声に保育士が気がついて近づいてきた。 「あらあら、奈々ちゃん。どうしたの?どこかぶつけちゃったのかな?」 わあわあと、泣き叫ぶ女の子にやさしく声をかける保育士に、女の子〜奈々〜は、薫をただ指差して泣き叫ぶだけでそれ以上の言葉を続ける事ができない。 「薫くん?・・・何かしたの?」 原因が薫にあると察した保育士は質問する対象を奈々から薫に変えた。 「奈々ちゃんに何かした?」 「なにもしてないよ。」 「でも、奈々ちゃん泣いてるよ?」 「・・・つみきをくずしちゃったんだ。」 「積み木?」 そう聞き返すと、薫の手元にあるかき集められた積み木を見つめた。 確かに、さっきまで立派につみあがっていたはずの建造物はなく、それらしい積み木があるのがわかる。 「崩しちゃったから泣いちゃったのかな?奈々ちゃん。」 未だに泣き叫ぶ奈々を覗き込むように保育士は声をかけるが、いやいやと首を振るだけでそれ以上説明をしてくれない。 仕方なく薫に視線を向けるが、薫は何も言わない。 「・・・困ったなぁ。」 解決の糸口を見つけることができず、ただ泣いている奈々をなだめるだけしか出来ない保育士に、他の子どもが近づいてきた。 「あのね、かおるくんがななちゃんをいじめたんだよ。」 「いじめてた!!ななちゃん、だからないたんだ!」 口々に言う子ども達の言葉に、保育士は薫に聞き返す。 「そうなの、薫くん?」 「・・・ちがう。」 「でも、他の子はそう言ってるけど。」 「ちがうもん!せっかくつくったしろがこわれちゃっただけだもん!」 そう言うと、薫は部屋から飛び出して行った。 >続く |
希祥
2008年06月09日(月) 00時09分02秒 公開 ■この作品の著作権は希祥さんにあります。無断転載は禁止です。 |
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薫くん、頑張れ〜!!! | しげたん | ■2008-06-09 00:20:27 | 203.168.76.66 |