(こんな気持ち、誰にも言えないよ…)
琴子の最近見る夢はいつも一緒。
同じような夢を繰り返し見てしまう。
それは…それは、幸せな夢のはずだった。
みんな笑顔で笑っている幸せな夢。
あんな笑顔の入江くんなんて、めったに見れなくて。
――私にだってなかなか見せてくれないよ。
その眩しい入江くんの笑顔の先には、私と入江くんの愛の結晶。
入江くんの腕の中で、愛情を一杯に受けていた私たち家族の宝物。
お義母さんも、ずっと欲しがっていたし。(特に女の子だけど)
入江くんも、職業柄というより元々から子供好きみたいだったし。
気持ちも受け取って貰えなかった頃に比べたら、まるで夢みたいで…。
なのに、嬉しくて出た涙のはずが、なんでこんなに悲しいんだろう。
『イリエクン、ダイスキ!!』
いつだって叫んでるの。
だって私は入江くんへの「好き」って気持ちでできてるんだもん。
―― じわじわと夢が彼女を追い詰める ――
どうすることも出来ないジレンマを抱え込んで眠る琴子。
どうしよう…
誰にも言えないよ…
…入江くん。私はね…
「入江く…ん」
琴子は直樹を呼ぶ。
すると、夢の中の直樹が振り向いて手を差し伸べてくれて。
『…俺を呼べよ』
夢の彼はそう言うのだ。
そう彼の手はすごく気持ちが良くて…
安心出来て…眠れる…よ…。
――直樹が見つめているのも知らず、琴子は眠る。
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