約束2
東京駅におりる。さらさらと腰まで伸ばした黒髪を風がさらう。
私はゆっくりと歩き出した。

誰もが私を振り返る。なぜなのかさっぱりわからない。つばの大きい帽子をかぶり、
薄い水色のワンピース。素足に白いサンダル。手には数日分の着替えが
入った鞄。荷物以外は普通に夏の格好だと思うのだけど、
何かおかしいのだろうか。そんなことを思いながら街を歩く。

さすがに東京だけあって人の往来が激しい。神戸もたいがいだが
東京はまだ上をいく。目移りするほどの店が立ち並び、どこもかしこも人で
ひしめいている。中には目を丸くしてしまうようなファッションの人もちらほら・・・。
「あんなんが 東京では流行っとるんか?」ボソッとつぶやいてしまう。
そうこうしているうちに「君、可愛いね。うちの事務所に入らない?」
と声をかけられた。
「え・・・」私は声の主をみた。見た目かっちりしたスーツをきて
いて別に怪しい雰囲気ではないが、見ず知らずの若い娘に
声をかけてくるということ自体やっぱり怪しい。

「いっいえ、私は結構です」知らない土地で知らない人、おまけに怪しいという三拍子そろった
今の状態に私はかなりうろたえた。
いつもなら「うるさいっ いらんもんはいらん!」と言えるのに。
私のうろたえた姿を見て、もうちょっとおせば何とかなると思ったのか
男は執拗にスカウトしてきた。
「いっいやですったら!そんなのに興味ないんです!ええかげんにせんと・・・」
「しばくで!」と言う私の声と「いいかげんにしろよ」という
男の子の声が重なった。
私はその声がしたほうをみた。
腕組をして目を半目に開き、機嫌の悪そうなきれいな顔つき・・・。
どっかでみたことがある。
男の子は続けて男に言う。「いやがってんだから いいかげんあきらめたら?」
「ちっ」っと舌鼓を打って男は去って行った。
「・・・ばーか」男の背中を見やって男の子がつぶやいた。
「あの・・・助けてくれてありがとう」私は素直にお礼を言った。
「いいよ。あんた、この辺の子じゃないよね。気をつけなよ。結構ああいうのウロチョロしてるから」
「え・・・うっうん」
「じゃあな」後ろでに手を振って彼は立ち去った。
・・・あの子、やっぱり誰かに似てる。
それに、この胸のドキドキはなんなのか。
ほんの一言二言しゃべっただけなのに。
顔が徐々に蒸気していく。
忘れかけていたこの感覚・・・直樹先生といた日々がよみがえる。
私・・・もしかして・・・。小さくなっていく男の子の背を知らず知らず
追いかけていた。










みーたん
2008年07月19日(土) 11時07分18秒 公開
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■作者からのメッセージ
奈美ちゃん、ちょっと胸のドキドキにとまどっております。さて、誰に?「ばーか」というあたりで男の子が誰なのかわかっちゃいますね(笑)

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逝ってよしd(´∀`*)グッ◎ Click!! ありません ■2012-05-01 08:49:43 49.240.241.168
波乱の始まり。続きが気になります! ざき ■2008-07-19 13:09:03 221.119.3.85
早く続きが読みたいです 龍一 ■2008-07-19 12:10:28 124.83.159.135
私も誰かわかっちゃいました。みーたんさん、続きをよろしくお願いします。 しげたん ■2008-07-19 11:17:29 203.168.76.66
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