約束4 |
直樹先生が、女の子が一人でホテルに泊まるのもなんだから 好きなだけ泊まっていくといいと言ってくれた。 私は素直に甘えることにした。 直樹先生の横で青ざめる琴子さんを見てくすっと人知れず笑った。 もとより琴子さんになんとかしてもらおうなんて思ってない。 裕樹君のことは琴子さんに聞いたことがきっかけで興味はわいたけれど 自分の目で確かめて嫌なら結婚なんてしたいと思わないし、 だからといって琴子さんに何かしようとも思わない。 自分のことは自分で何とかする。好きになったのならなおさら・・・。 だから琴子さんには言っておこうと思った。 夕食のあと、彼女をリビングの外に呼び出す。 「心配せんでええよ。約束は無しにしたるわ。 私、自分のことは自分で何とかするって決めとるから。」 「それって・・・」 「好きになっちゃった。裕樹君のこと」 「えっ えぇ!!」 「しーっ!!声が大きいねん!」彼女の口を慌てて手でふさぐ。 「だっだって・・・」 「・・・話はそれだけやから」 琴子さんが何か言いたそうにしていた。 けれど私はそのとき、どうやって裕樹くんに気持ちを伝えたらいいのか・・・ それだけしか考えてなかった。 「はー」寝室で深くため息を吐く琴子に直樹が目を向ける。 「なんだよ、そのため息。あの時の約束を奈美ちゃんが守ってくれとでもいったか」 「いっ入江くん覚えてるの?あの時の約束のこと」 「奈美ちゃんを手術できたのはあの時の約束があったからだろ。 守れもしない約束が。」 「うっ で、でもその約束を無しにしてあげるって奈美ちゃんが言ったんだよ」 「ふ〜ん。じゃあ何のため息だよ」 「・・・好きになっちゃったんだって。裕樹君のこと。」 「はあ?」 「ねえ、入江くんどうしよう・・・。好美ちゃんだっているのに。 私、どうしたらいい?」 「そんなこと知るかよ。」 「そぉんな〜」 「もう寝る」直樹はさっさとベッドにもぐる。 「いっ入江く〜ん」 「・・・もうお前が首をつっこむ話じゃなくなってきているのは確かだよ」 直樹の言葉に琴子はまた深くため息をつき、自分もベッドに入った。 「それにしても・・・なんで奈美ちゃんは裕樹君のこと好きになっちゃったんだろう。 私が言ったルックスなんて一目裕樹君を見れば嘘だったんだってわかりそうなもんなのに・・・」 「お前・・・自分で奈美ちゃんに言っといて よくそんなこと言えるよな。」 「だっだって・・・本当に来るなんて思ってなかったんだもん」 は〜とため息をつく直樹。 「でもまあ・・・ルックスだけじゃないと思うぞ」 「奈美ちゃんが裕樹君を好きになった原因?」 「・・・もうキリがないから寝るぞ」 「え〜」 とりとめのない話をしても仕方がない。 きっかけを作ってしまったことに責任は感じるが もはや自分たちが安易にかかわれない問題になってしまっているのだから。 |
みーたん
2008年07月19日(土) 21時57分14秒 公開 ■この作品の著作権はみーたんさんにあります。無断転載は禁止です。 |
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ますます続きが楽しみです…。 | しげたん | ■2008-07-19 23:25:40 | 203.168.76.66 |