離れていても 21 |
日が差し込む病室には、綺麗に飾られたお花の香りに包まれていた。 ベッドの上で眠っていた直樹も、そっと目を開けた。そのまま視線を横にずらすと、ベッド脇のテーブルで、教科書を広げ、真剣に勉強している琴子の姿があった。 「・・来てたのか?」 「あっ、入江君!起こしちゃった?」 「いや、起きようと思ってたから。」 そっかぁ〜とふんわりと微笑み、直樹の傍へやってきた。おでこを触ると、 「熱、だいぶ下がったんじゃない?良かった〜。」 「あぁ。体も楽になったよ。」 「入江君、何か飲む?」 「あぁ。」 冷蔵庫の中からミネラルウォーターを出し、キャップを開けて差し出す。それを受け取り、喉を潤した。 「・・お前、いつ来たんだ?」 「う〜ん・・1時間前くらいかな?」 「起こしても良かったんだぞ?」 「だって、今までよりは息も楽そうに眠ってたから、起こしちゃ悪いと思って。」 渡されたペットボトルをまた冷蔵庫へと戻すと言葉を続けた。 「それにね、宿題もあったから、入江君が寝ている間に終わらせれば、後でお話できる〜!って思ってたんだけど・・もうちょっとあるんだよね〜。はぁ〜あ・・。あ、入江君、何かして欲しい事ある?」 「・・いや。俺はいいから、早くやっちゃえよ。」 「そう?じゃあ、すぐにやっちゃうから、入江君待っててね!!」 ソファーに戻り、教科書を真剣に見つめる琴子。 直樹も、傍に置いておいた医学書を手にとり、続きを読み始めた。 そんな2人の間に流れるのは、琴子の走らすペンの音と、時計の音だけ。どれ位そうしていただろうか。もうだいぶ前から、直樹の医学書は同じページ。教科書を見つめているであろうその後ろ姿を見つめていたのだ。そして、自分から「俺はいいから」などと言っておきながら、ずっと放置されているこの状態に、少しの苛立ちを覚えていた。 「・・なぁ・・まだ終わんないのか?」 「・・う〜ん。もうちょっと・・」 視線は教科書に落としたまま答える琴子に、イライラは募るばかり。 「俺が起きたときも、同じ事言ってたけど?」 「あはは。そうかも・・」 笑いながらも、相変わらず自分を見ない琴子に、等々苛立ちもピークに。 「琴子」 「ん〜?なぁに?」 返事をしたのに何も返さない直樹を不思議に思い、やっと振り返り直樹を見ると、そこには不機嫌そうな顔の直樹が琴子を見つめていた。 「どうしたの?」 「・・・」 「なっ・・なんだか怒ってる・・・?」 「・・怒ってる。」 「えええ!?ごめんね?私、なんかしちゃったかな?あ!宿題に、こんなに時間かけてるから怒ってる?何の勉強してきたんだって・・呆れてる?」 不安そうに直樹を見つめる。 「・・・」 何も答えない直樹を見て、泣き出しそうになり俯いた。 「はぁ〜・・・」 溜息をはく直樹に、ますます肩を落とす琴子。 「・・・琴子。」 「・・はい・・」 俯いたまま返事をする。 「琴子。」 もう一度呼ばれ、恐る恐る顔を上げた。すると、いつの間にかベッドの端に腰掛けていた直樹に手招きをされた。 「・・?」 琴子は、ゆっくり立ち上がると、直樹の方へと歩いていった。近くまで行くと、琴子の手をグッと引き寄せた。 「わっ!!」 直樹の突然の行動に驚く。 「いっ、入江君!?」 「・・・いつまで俺をほったらかしてるつもりだよ?」 「えっ?」 腕を握ったまま、上目遣いに琴子を切なそうに見つめる直樹に、ドキッっとする琴子。そして優しく微笑むと、ギュッと抱きしめ、直樹の髪をそっと撫でた。 「・・寂しかった?」 「・・・別に・・・」 拗ねた様に呟く直樹に、思わずクスッと笑う。 「・・・ごめんね?早く終わらせて、入江君と話していたかったから。」 「・・・じゃあ・・・」 「ん??」 「・・俺の機嫌・・直してみろよ。」 今度は、何か企んでいる様にニヤッと笑う直樹に、嫌な予感を感じて離れようとするが、直樹がそうはさせないとばかりに、腰に回していた手を更に引き寄せた。 「あ・・あの〜・・入江君・・・?」 「なに?」 「や・・あのぉ・・えっと・・」 「悪いって思ってるんだろ?」 「あ・・」 「折角、2人で居るのに、俺に背向けてばっかりだったしな。」 「そっ・・それは・・」 「さみしかったな〜。」 「うっ・・」 「ほら。早くしろよ。」 しばらく真っ赤になりながらも必死に考えた琴子は、直樹の額にチュッと軽いキスをした。 「・・はい・・」 「終わり?」 「おっ・・おしまい!」 「・・こんなんじゃ機嫌直らないけど?」 「だっ・・だって・・」 困った様な顔をして見つめるが、直樹はそ知らぬ顔。 琴子は深呼吸すると、今度は直樹の唇に、軽いキスをした。 「・・もっ・・もう機嫌直してくれた・・?」 「・・まだ。」 「ええ!!もっ・・もうむっ・・きゃっ・・!?」 琴子が言いかけた時、琴子の手を引き、自分のひざの上に座らせた。 「いっ・・いっ・・入江くん!!」 「なに?」 「誰か来たらどうするの!?」 「いいじゃん別に。」 「よっ・・良くない!!」 「何で?だって、俺まだ機嫌直ってね〜よ?」 「///」 「琴子。」 直樹に促され、琴子は真っ赤になりながらもう一度キスを落とす。 「・・・ったく。分かってね〜な。」 フッと笑ったかと思うと、琴子の頭を押さえながらキスをした。でもそれは、琴子とは比べ物にならない様な深いキス。 「んっ・・・///」 驚いて逃げようとする琴子を、しっかりと捕まえたまま、何度も何度も、角度を変えながらのキス。もう抵抗をすることもしなくなり、直樹にしがみ付く琴子。 どれほどそうしていたのか。やっと顔を離すと、琴子は肩で息をしながら、下を向いた。 「・・・こっ・・今度こそ・・機嫌直してくれた?」 「・・・まぁ100%じゃないけど、今日はこの位にしておいてやるよ。いくらなんでも、ここじゃまずいからな。」 「*%#**&%////!?」 「なに?足りない?」 琴子は思いっきり首を左右に振った。 「じゃあ、退院してからのお楽しみだな。それまでは我慢するか。」 「なっ・・・」 真っ赤になりながら、直樹の膝から降りようとした瞬間、琴子は床にストンと落ちてしまった。 「・・・あ、あれ!?」 驚いている琴子を見て、直樹は噴出した。 「お前・・・あんな位のキスで、そんなになっててどうするんだよ」 「だっ・・だってぇ・・・!」 涙目になりながら直樹を見つめると、 「次はこんなもんじゃないから、覚悟しておけよ。」 そう耳元で囁かれた。 「いっ・・入江君!!」 先が思いやらせる琴子だった。 |
雫
2008年09月08日(月) 12時02分20秒 公開 ■この作品の著作権は雫さんにあります。無断転載は禁止です。 |
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eamamadoorさん、HPの方にもコメント書かせて頂きましたが、素敵な絵をありがとうございます♪イメージ通りで、驚いた位です^^みーたんさん、ホントにドキドキしちゃいましたよ〜!ありがとうございました^^ | 雫 | ■2008-09-10 09:06:01 | 211.18.37.123 | |
たまこさん、eamamadoorさんにリクエストして下さってありがとうございました♪すみません・・かなり決壊中です(照)ルナさん、私も入江君の独占欲ハンパないと思います(笑)kaniさん、機嫌直そうとする琴子、私も気に入ってます♪退院してからのラブラブ度、どこまで上げられるか分かりませんが、頑張ります☆ | 雫 | ■2008-09-10 09:01:49 | 211.18.37.123 | |
eamamadoorさんのイラストを見ていたら、その続きという設定で角度を変えてのキスを何度も・・・というところが描きたくなってしまいまして(笑)描いてしまいました(笑)だけど、ちびっと激しさに欠けてしまいました(汗) | みーたん | ■2008-09-09 23:32:18 | 121.118.16.247 | |
いや〜ニヤつきがとまりません(^^)ほっとかれてすねる入江君がなんともかわいいし、頑張って機嫌を直してもらおうとする琴子もいいです。退院したらラブラブ度パワーアップですよね。次回も楽しみに待ってます。 | kani | ■2008-09-09 23:25:58 | 220.29.138.50 | |
絵を描いてしまいました。でも、お話のような濃厚なちゅーはやっぱりかけませんが。病室しちゅはいいなぁ。 | eamamadoor | ■2008-09-09 17:24:13 | 222.225.21.20 | |
また | eamamadoor | ■2008-09-09 17:23:10 | 222.225.21.20 | |
eamamadoorさんの絵を見てからこのお話を読みました。どちらも素敵です! 結構直樹は独占欲強そうですよね。 | ルナ | ■2008-09-09 13:35:32 | 220.152.68.41 | |
朝からこんなににやけていいのかってくらい読み返してはにやついています。実はたまこさんから雫さんの離れていても‥のシーンで琴子から直樹へのデコチューリクエストうけて、いまウルトラ超特急で描いてみたのですが‥もしイメージと違っていたら、ごめんなさい! | eamamadoor | ■2008-09-09 10:14:59 | 210.189.146.159 | |
きゃぁ〜、こちらもダム決壊ですか?やっぱり、入江くんと琴子はラブラブじゃなくっちゃダメですよね〜。 | たまこ | ■2008-09-09 08:29:46 | 220.213.210.181 | |
蝗虫ば太郎さん、いつも読んで下さってありがとうございます☆やっぱ、入江君と琴子がラブラブなのは、書いてても本当に楽しいです!もっとこういうお話を増やして行きたいと思います☆ | 雫 | ■2008-09-08 22:21:52 | 124.83.159.208 | |
続き、お待ちしておりました!! 私もパソコンの前でニヤニヤしながら拝読しておりました(苦笑) やはり、こういうラヴラヴな雰囲気が、この2人には似合いますねvv 次回も楽しみにしております。 | 蝗虫ば太郎 | ■2008-09-08 21:32:03 | 118.3.249.151 | |
アリエルさん…そうなんです…(泣)皆さんの素晴らしいお話の数々が、続々とupされてるので、正直焦っちゃいます!(笑)でも、皆さんが温かく優しいので、頑張って作って行きたいと思ってますんで待ってて下さい♪多分、次回位には退院です☆(笑) | 雫 | ■2008-09-08 20:21:39 | 124.83.159.203 | |
お忙しそうですね。こちらのサイトに参加(私は皆さんの力作にコメントさせていただくだけですが…)する暇がないのって、今この盛り上がりの中辛いですよね〜(泣) 待ってます!待ってますから、是非入江君を退院させてタガ外して差し上げて下さい(笑) しかしまぁ…琴子のかわいいこと(萌) | アリエル | ■2008-09-08 19:51:07 | 124.83.159.211 | |
さあやさん!待っててくれてありがとうございますぅ〜♪すっごい嬉しいです!琴子って、天然で凄いじらしたりとかするから、ある意味怖いですよね(笑) | 雫 | ■2008-09-08 19:32:30 | 124.83.159.200 | |
雫さん♪お仕事お疲れ様です^^すっごく、すっごく雫さんを待っていましたよぉ(喜)ニヤニヤしながら読ませてもらいました。おいでおいでする入江君にも落ちましたが入江君がじらされている姿が目に浮かびニヤニヤが止まらなくなりました^^是非もう少し続けて下さいね^^ | さあや | ■2008-09-08 17:40:08 | 122.29.153.63 | |
藍さん、そうなんです!病室なのに、入江君たら…という感じで(笑)みーたんさん、仕事の事も気遣って下さってありがとうございます♪お話も、楽しんで貰えたみたいで嬉しいです!入江君、アマアマなんです(笑)ayaさん、萌ちゃって下さい!!(笑)シチュエーション、大事ですよね!仕事も、こっちも頑張ります☆ | 雫 | ■2008-09-08 16:24:22 | 124.83.159.217 | |
私もニヤニヤが止まりません…///病室って言うシチュエーションがまた萌えますね!!ハァァ…この後の入江君がすごそう☆雫さん、お仕事頑張りつつ、こっちも頑張って下さい〜。待ってます! | aya | ■2008-09-08 13:32:39 | 124.83.159.213 | |
いやん!私もニヤニヤが止まりません(笑)直樹、琴子とよっぽどいちゃいちゃしたかったんだなあ(笑)続き、待ってます^^あ、お仕事で疲れださないようにしてくださいね。 | みーたん | ■2008-09-08 12:49:09 | 121.118.16.247 | |
いやぁ〜!ニヤニヤがとまりませんよっ!直樹クン!ここ病室ですよね!?ラブラブの続きが早く読みたいですっ!待ってます! | 藍 | ■2008-09-08 12:37:01 | 209.85.138.136 |