ミラクルdays 33 |
「・・・中村先生、千華ちゃんは・・・」琴子が中村医師に問いかける。 「眠ってます。あの子はお嬢さんのお友達だそうですね・・・。 もし、お嬢さんの体が大丈夫なら一度面会されますか?」 愛の顔を見ながら中村医師は言った。 「愛、どうする?」と直樹。 「・・・行こう・・かな。」愛が答えると、琴子はそっと彼女に微笑みを投げた。 愛は千華の病室に行く途中、優から今朝学校であったことを聞いた。 「千華・・・かわいそう・・・。」 「そうだね・・・。」 そんな会話をしているうちに千華の病室に着いた。 中村医師の配慮だろうか、そこは個室になっていた。 愛と優がそっと千華のベッドに近寄る。 二人がそばにあった椅子を引く音で千華が目を覚ました。 「愛・・優君?」 「あ、ごめん。起こしちゃったね」愛が言うと千華は少し微笑んで首を振った。 「・・・具合、どう?」愛の問いかけに千華は 「うん・・・お腹痛いのは治ったよ・・・。」 「そう・・・」 それ以上何も言えずに愛がうつむいていると千華が口を開いた。 「私・・・妊娠してるんでしょ?」 「え・・・」 「愛の家に行く少し前ぐらいから体の調子悪くて自分で調べたの・・・」 「・・・父親は・・誰なの?」 「・・たぶん舞の元彼。」 「そのこと彼には・・・?」 千華は首を振った。 「言うつもりはないわ。この子は私が一人で何とかする・・・。」 「なんとかって?」 「もちろん産んで育てるのよ。」 「え・・でも・・・」 「わかってる。まだ若すぎるし 産んだらきっとすごく大変なことも・・・。」 「千華・・・」 「私が産むって言うなんて思わなかったでしょ?私だって最初は産むつもりなんてなかったのよ。 でもね・・・産もうって思ったのはあんたたちのおかげよ。」 「え・・・?」 「今まで私は自分のことを幸せだって思ったことなかった。 でも、優君にたたかれて あんたに抱きしめてもらって・・・私は気づいたの。 こんな風に自分と真正面から向きあってくれる友達がいて私は幸せだったんだって。 生まれてきてよかったって・・・。だから・・・せっかく宿った命を消し去ることが出来なくなった。 だって・・・生まれてきちゃいけない命なんてないんだって思えるようになったから。」 「・・・・・」黙って愛は彼女を抱きしめた。 千華は愛を抱きしめ返し、優を見ながら続けた。 「それにね・・・私、優君のことは本気だったよ。 今までとは違って優君のことは本当に大好きになったのよ。」 「千華・・・」抱きしめた腕をゆるめて千華を見る愛。 「でも・・・もうあきらめる。どう頑張っても愛を思う優くんの強い気持ちには勝てないもの・・・。 ま、一瞬お腹の子の父親だったらいいのにとは思ったけどね」イタズラな笑みを浮かべる彼女に愛も微笑んだ。 そのとき、病室のドアが開いて直樹と琴子が入ってきた。 「具合・・どうかな?」直樹の問いに千華は「大丈夫です」と答える。 「千華ちゃん・・・今、君に会いに来てくれた人がいるんだよ」 「え・・・」 琴子がそっとドアを開けると一人の女性が入ってきた。 その人物を見て千華は目を見開いた。 「・・・おばあちゃん」 「千華・・・!」千華のベッドに駆け寄る彼女。 「愛たちのおばあちゃんに連絡先を聞いて連絡を取ったんだ」 千華の瞳からポロっと涙がこぼれた。 「千華・・・ごめんね。つらかったね・・・。」 そういうと千華の祖母は彼女を抱きしめた。 「おばあちゃん・・・私・・・」 「大変だけど・・・おばあちゃんも手伝うから・・・。何も心配しなくていいよ。」 「おばあちゃん・・・!」 そんな二人を見て琴子と直樹、愛と優は顔を見合わせて微笑みあった。 面会も終わり、琴子たちと千華の祖母は病室を出た。 「千華が・・・お世話になりました。あの子とこれからのことをゆっくり話し合っていきたいと思います・・・。」 「そうですか・・・」 直樹と琴子に深く頭を下げ、彼女は病院を後にした。 「よかったね」 「ああ」 直樹は琴子の肩をそっと抱いた。 少しして愛と優も病室から出てきた。 「千華ちゃんは・・・?」琴子の問いに愛は「眠ったよ」と答える。 「・・・そう」 「ねえ・・ママ・・・」愛が琴子をまっすぐ見る。 「ん?」 「ママ、ありがとう。千華は私が力になるまでもなかったわ」 「え?」 「ママのおかげで彼女、すごく変われたんだよ。とても・・・強くなってた。」 「愛・・・」 「ママが・・私のママでよかった・・・」 そういって抱きついてきた彼女を琴子は優しく抱きしめ返す。 「ママも・・・あなたのママで嬉しいわ・・・」 直樹と優はそんな二人を優しい目で見つめていた。 琴子と愛は入院せずにすみ、4人揃って家に帰ることができた。 琴子は久々に紀子とキッチンに立つ。 入れ替わっていたときはボロが出ないように愛にまかせていたのだ。 なんだか嬉しくて鼻歌まで出てしまう。 「どうしたの?琴子ちゃん。なんだか昨日までとは違うわよ?」 「え・・・そ、そうですか?」 「う〜ん 本来の琴子ちゃんに戻った感じ?」 「ほ、本来って・・・?」 「クールな感じがぬけたっていうか・・・」 「え、あ、あはははは・・・」 笑ってごまかすしかなかったが紀子は大して気にした様子もなくうまくごまかされてくれた。 夕食も済み、それぞれシャワーもあびると各部屋へと戻っていった。 だが、琴子は次の日からの仕事のために病院のことを把握しなければならない。 そのために、愛が書いたものを参考にして看護計画を練ろうと書斎の机に向かった。 一方直樹もシャワーを浴びると寝室に入ってくる。 だが、先に上がってきたはずの琴子がいない。 すぐに戻ってくるだろうとベッドに横たわり、いつものように本を読み始めた。 時間は刻々と過ぎ、寝室に入ってから2時間ぐらいが過ぎる。 琴子はいっこうにここへ入ってくる気配がない。 琴子が入ってこないことに我慢の限界に達した直樹はベッドから降りると 勢いよくドアを開ける。 さっき自分がシャワーから出たときはリビングの電気も消されていたので そこにいる可能性は薄い。 そして元に戻った今、当然ながら子供部屋で寝る必要もない。 だとしたら一つしかない。―書斎。 直樹は書斎のドアを勢いよく開けた。 |
みーたん
2008年09月09日(火) 18時53分00秒 公開 ■この作品の著作権はみーたんさんにあります。無断転載は禁止です。 |
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ダム決壊に向けて、妄想絵を書き散らしましたよ。これで明日の準備、もっばっちりです! | eamamadoor | ■2008-09-10 01:51:17 | 210.189.146.67 | |
妄想グルグルのみーたんです(笑)コメントどうもありがとうございます^^千華も現実は厳しいですが気持ち的には助けてあげられたかなあって思います。それこそ琴子の愛のパワーってやつです!そして、このダム決壊のあとも千華がちょっと出てきます。優がいい感じに書けたらな・・・って思ってます。私だったらフラれてもまたよけいに好きになっちゃいそうなシチュエーションで書いてみたいと思ってます^^ | みーたん | ■2008-09-09 23:50:16 | 121.118.16.247 | |
やっぱり琴子はすごいですね。千華ちゃんもこれから頑張って。後は今夜の入江君ですね^^散々待たされたんですから、いよいよダム決壊ですね(^m^) | kani | ■2008-09-09 23:40:23 | 220.29.138.50 | |
千華ちゃん、よかったね〜。やっぱり琴子は百人力!凄いパワーです!でも「今夜の」入江君の琴子「へ」の愛のパワーはもっと凄いぞ〜〜!!ミラクルファンの皆さんの期待も凄いぞ〜〜(笑) | アリエル | ■2008-09-09 18:02:57 | 124.83.159.211 | |
やっぱり琴子のパワーは凄いですね^^千華ちゃんを救ってくれました。幸せを与えるオーラが琴子の凄いところです^^「ママがママで良かった」の台詞にはじーんと来ました。それを直樹と優が見詰める・・・幸せな気持ちになりました。(特に私いま暗い話を書いてますので) | さあや | ■2008-09-09 17:57:39 | 122.29.153.63 | |
思わず、ナイチンゲールの誓いの扉バーンを思い描いてしまいました。そんな勢いよく開けると優君と愛ちゃんに気付かれちゃいます〜。なんて。次回は救命胴衣を着けて流されることにします。まってます! | eamamadoor | ■2008-09-09 15:58:32 | 222.225.20.174 | |
お久ぶりです。週末から忙しくなかなかPCが出来ませんでした。久々に読んでびっくり!ますます目が離せません。直樹がもう琴子切れですね。 | ルナ | ■2008-09-09 13:29:02 | 220.152.68.41 | |
やっぱり琴子パワーってスゴイですよね。千華ちゃん、素直になってくれて良かった。次回いよいよ・・・期待しちゃってもいいですか!?洪水に流されないようにボート用意して待ってます! | たまこ | ■2008-09-09 13:27:27 | 220.213.210.181 |