願いが叶った夜 (前編)

ああもう嬉しいわっ!私はずっとずっとこの日を夢見ていたのよ―――

相原さんがこの家をでていく事を私たちに告げ、
しんみりとしていた我が家のリビングの空気は
帰宅したお兄ちゃんの爆弾発言によって一変した


「お嬢さんと…琴子さんと結婚させてください」


◇    ◇    ◇    ◇    ◇    ◇    ◇    ◇    ◇


琴子ちゃんがあまりの衝撃に目をまわしてしまったので
(私も腰をぬかしそうになったわ・・・)
まずはお風呂に入ってもらうことにした
その次はお兄ちゃんにもお風呂をすすめた
なにせ二人ともずぶぬれだったんですもの

私としては一緒に入ってもらってもよかったんだけれど
これ以上琴子ちゃんがパニックになったら困りますもんね!

それにしてもお兄ちゃん、でかける時は
確か傘を持ってでた筈なのに、どうしたのかしら―――?
ずぶぬれで帰ってくるなんて・・・


「おばさん、ご心配おかけしてすみませんでした…」
「いいのよ とりあえず風邪はひいてなさそうね…よかったわ」

お風呂からあがり、琴子ちゃんは幾分か落ち着いてみえた

「それじゃあお先に休ませてもらいます」
「あ…琴子ちゃん、本当にもう大丈夫?」
「はい…大丈夫ですおやすみなさい」

ペコっと頭をさげて琴子ちゃんがリビングを後にする

「おやすみなさい…琴子ちゃん」

ああ、琴子ちゃん…本当ならもっとお話を聞きたいのだけど…
根掘り葉掘り徹底的におしゃべりしたいのだけど…もう寝ちゃうのぉぉぉ…

そんな私の心の叫びを知ってか知らずか、お兄ちゃんが琴子ちゃんの後をすっと追っていった

ひょっとしてこれから2人きりかしら♪♪さあ、私もいきましょう!!
もっちろんビデオカメラを手にしてね♪撮影タイムよ!


ビデオカメラ片手に私が二階に忍び足で向かうと
二人がちょうど寝室の前の廊下で何やら話をしていた 

あらぁんvかなりいいムードじゃないのぉ〜♪
これは是非とも撮影させてもらわなくてはっ

「ねえ本当に私でいいの?」
勿論いいに決まってるじゃないのっ琴子ちゃん!

「ああ…すっかりマゾにされたみたいだ」
もうマゾだなんて!せめてぞっこんといいなさい!

「大好きだからね入江くん」
きゃーんもう〜何てかわいいのかしらっvv

「知ってるよ 十分」
まっ何て言い方なのお兄ちゃん!

「でも入江くんが私を好きなのは知らなかったわ」
そうよ琴子ちゃん!私も知らなかったわよ!

「おまえには降参したよ…」
まあああ〜〜!降参ですってお兄ちゃんが降参ですってぇ!

「大好きだよ」
二人の熱いハグ!!!ス・テ・キ・・・・

きゃーきゃーきゃー♪いいわっいいわよ〜お兄ちゃん
そのままもう、押し倒しちゃいなさいっ!!
かまいません!ママが許可します!!!

待ち望んでいた光景が目の前にあるだけに
ついついビデオカメラをまわす手にも力がはいる

「・・・ママ、いい加減にしなさい」
「・・・しーっ!」
パパが横から何度目かの忠告を私にするけれども
でもでも今夜という今夜は譲れないわ!!!

待ちに待ったふたりの愛の記録なのよぉ〜〜!!

「じゃあな…おやすみ」
「うん…おやすみ入江くん」

・・ってええええっ!?おしまい??ちょっと待ちなさいおにいちゃん!
キスもなしなの?そのまま寝ちゃうの?別々に???

せっかくのチャンスなのに???

お兄ちゃんたらなんて意気地なしなのっ!
こういうときは男の子がさっとリードしてあげなきゃだめなのよー
琴子ちゃんからじゃあ恥ずかしくっていえないのよ・・・


ああん、なんてことかしらっ!こんなに早く撮影タイムが終わっちゃうなんてぇぇぇ
藤夏
2009年08月06日(木) 18時20分07秒 公開
■この作品の著作権は藤夏さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
コンパクトにまとめるはずが紀子ママが走り出してしまいましたので(笑)、前後編にわけることになりました。

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