カズンズ!! no.3
 
「俺、はやまったかも」


ぽつり・・・と突然、それでもきっぱりと入江君が言った。


おそるおそるその続きを聞く。答えはなぜだが予想がついていた。
・・・・何を?


「結婚。」



がーーん、といきなり頭を岩で殴られたような感じで、一瞬よろけるが、それでも持ち直して入江君の服をゆすりながら、今にもあふれてきそうな涙をこらえながら問いとだす。
なんで、なんで?



「なんで?そんなの、琴子さんの魅力がないからに決まってるんじゃない。ね、直樹。」
ひょこっと、直樹の背後から美しく、それでいてかわいい女の子が現れる。

「あぁ。琴子なんかよりも、ずっと理加のほうがーーー」

そういって、入江君はあたしの目の前で理加、という女の子の頬に手を添えて、ゆっくりと顔を近づけて言った。・・・・





++++++++


「だ、だめめめぇぇぇ!!!!!!!!」

がばっと、起き上がって琴子はあたりを見回した。
そこには、みなれたベッド、時計、スタンド・・・。
琴子が思い描いていた世界とはまるで違っていることに少し時間がたってから気がつく。


ゆ、夢・・・・・


少し涙目の琴子は心から安心した。

あたしはほっと胸をなでおろす。・・・・夢でよかった!!!

と、思ったのもつかの間。
愛する夫がいるはずの隣はものの見事に抜け殻だと知る。おそるおそる時計をみるとセットした時間から1時間もまわっていた。


「きやぁぁぁ!!!!」


ばたばたばた!と急いで階段を駆け下りる琴子。

も、もう、あたしったらまた寝坊しちゃって・・・
入江君だって起こしてくれたっていいんじゃない!?

「お、おはようございますっ、すみません、お母さん!」

毎日のように言っている言葉を口に出して、頭をさげる琴子・・・が、いつもと話しかけているはずの人間にすこし違和感・・・


「琴子さん、起きるのおそ〜い」

明るくて、ころころしていて若々しい声。
琴子の目の前には夢の中で出てきたのと全く同じ女の子がエプロンをつけてたっていた。



その瞬間、すべてを思い出した琴子。
なぜ、あんな夢を見たのかも・・・・・


「はい、直樹♪」
「ん?あぁ。そこにおいといてくれ」


新聞をよんでいる直樹に自分で作ったであろう朝食を運んでいる。そして、去り際には直樹の肩に触れ、笑いかける。
その光景は、まるで新婚!

お、思い出したわ・・・・
昨日来た入江君のいとこの理加ちゃん・・・
昨日の夜も、あんなふうに入江君にべたべたとひっついてて・・・
あたしの知らない話ばっかりでもりあがって、
そ、それに、入江君だってなんの抵抗もみせてなくてーー!!



昨日の夜を思い出し、わなわなと震えている琴子。
琴子にとって、初めてみせる直樹の異性に対する行動と、自分にはとうてい及ばない完璧な魅力を持つ女の子の出現が琴子に今朝の夢をみさせたのだった。


そのようすに気づいた直樹は、早く支度しろよ、の一言。
もう直樹のしたくはは完璧で、がたり、とイスをひいて立ち上がる。

まってぇぇ!!


置いていかれると悟った琴子は急いで荷物をかため、したくを整えて、朝はいりません、と言って直樹を追いかけた。


その後ろからの冷たい視線には気づかずに。


はぁはぁ、

何よ何よ、すこしくらいあたしにだって優しくしてくれてもいいんじゃない!?

やっとのことで追いついた直樹に少し怒りをまぜて腕に飛びつく。

「まってってば!!」
「・・・っ、重い」
「罰よ!!」と叫ぶと直樹が何のだよ?と問いただす。

「まず、起こしてくれなかったことと、あたしをおいてきそうになったのと、それと、・・・・い、入江君、理加ちゃんに、その、すごく・・・やさ・・」

最初は勢いよく言い出す琴子だったが、『やさしくて』と言いそうになるとだんだんと威勢が落ちてくる。

あたしったら、何言ってんだろ!?
よく考えたらいとこなんだから、当たり前なんじゃないの??

黙って下にうつむいて、少し赤くなる琴子。やっぱりなんでもないっ!といって、直樹の腕を放そうとしたが直樹はそれをさせなかった。


「お前、理加にやいてんの?」


面白そうに、そしてからかうように琴子に問う。
ち、ちが!!!ぱっと顔を上げて赤くなりながら否定する。


「ふーん、てっきり昨日の夜のことかとおもったんだけどな。昨日の夜、お前さんざんうなされてたから。」

とくすっと笑う。
入江君がいじわるする時にいつもする顔。
ゆっくりと手が伸びてきて、
ひんやりとした手があたしのあごをかすめてあがってくる。
あたしは冷たさにかすかに震えた。
それでも手は移動して口元に近づく。
そして、入江君はそっとあたしの下唇をかるくつまんだ。


「いろいろしゃべってたぜ、この口が」


ぼっと赤くなる琴子。
あたし、寝言いってたの!?
そういうと直樹はまぁいつものことだけど、といって手を離し、スタスタと歩き始めた。



触れられたくちびるが熱いーーー
琴子の心臓は、はねていた。


ねぇ、入江君、あたしは今、こんなにドキドキしてるんだよ。
結婚しても私はいつまでも、日々入江君に恋してる。
ねぇ入江君。
入江君も、少しはこんな気持ちになってくれてるのかな?



琴子はそう考えながら、またしても距離の開いた愛する背中をおいかけた。














maro
2009年09月28日(月) 00時11分48秒 公開
■この作品の著作権はmaroさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
続きものって難しい・・・ほんと難しいです・・・(><)!!
最近、無謀なことしたかもって本気で思ってます(苦笑)
しかも27日中にアップしたかったのに、時間かかりすぎてもう28日に・・・く、悔しいです(><、)
読んでいただいてありがとうございました。


この作品の感想をお寄せください。
ByoRYG Click!! Bradley ■2015-08-11 02:57:57 188.143.232.26
maroさん、こんにちは
夢の中とはいえ、直樹と理加ちゃんがと思うと、琴子は辛い夢を。
起きるとエプロンをした彼女が。
直樹が出かけるぞと一声。
たぶん気配を察して仕事へと声をかけたのでしょうね。
外へでた二人、直樹が夜魘されていたと。
昨日二人が仲良くしているのを見てうなされていたんだろうと。
お前理加にヤキモチかと。
琴子の唇を触る直樹。
もう熱いね。心配しなくても直樹は琴子以外は興味ないよ
本当に大丈夫ですよね。


tiem ■2009-09-28 09:23:26 114.153.181.186
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