その日の夜…

「入江くん、見て見て三人からの今年のバースデープレゼント！！」

「……ふーん」

ベットにもたれながら鏡台に置かれた『餃子パーティーくる●んパオ』に
目を向けた直樹は一言。

「…これおまえ使えるのか？」

「ちょっと…失礼ね。子供用よ。大丈夫よ」

「具はどーすんだ？焼くのは？？」

案の定、考えてもいなかったところを突っ込まれた琴子は
あからさまにうろたえる。

「……うっ。だっ大丈夫よ。お姉ちゃんとお兄ちゃんに手伝ってもらうから。
今年の入江くんの誕生日はこれでご馳走を作るんだから」

「……あいつらが一緒なら大丈夫か…おまえのは期待しないでやるよ」

「何それ！！！」

いつもの様に頬を膨らます琴子を横目にその箱の脇に印刷されたロゴに
直樹は目を引いた。

−−パンダイ−−

…おいおいうちのじゃないか。
さすがに三人ともそこまで気が付かなかったらしい。
まぁ、少しばかり親父と裕樹に貢献できたからいいか…とそこまで考えて
直樹は待てよと、考えを中断させた。

……まさか、裕樹のやつ、琴子をヒントに商品開発してるとか？？？

最近、やたらめたら発売されている子供向けの料理玩具に眉をひそめた。
……確かめてみるか？？そう直樹が小さな決意を固めたその時、手紙を片手に
さっきの怒りはどこへやら？ニコニコしながら琴子が隣に座ってきた。

「これも、一緒にもらったんだ」

直樹は目の前に出されたたどたどしい字を目でおった。

「…パパがだいすきなママがすきか…」

「そう。なんかうれしかったな。三人ともそう言ってくれたんだよ」

ニッコリ微笑む琴子に直樹はまたもからかう。

「……おまえの取り柄は、誰よりも俺が好きだというパワーだけだもんな」

「う…確かに。でも、これだけは絶対、誰にも…子供たちにも負けないもん！」

からかったつもりが、自信をもって宣言され、直樹は吹き出した。

「……笑わなくても」

しゅんと落ち込む琴子を次の瞬間、直樹がそっと抱き寄せた。

「俺が大好きな琴子にバースデープレゼントやるよ」

「え！！ホント？？なになに？？」

期待に満ちたその瞳に…馬鹿な奴…毎年、決まってるだろ。
俺からのプレゼントは……直樹はニヤリと笑ってキスをする。

「もちろん、俺」

そう言って琴子をベットに押し倒した。


……ちなみに、俺の誕生日プレゼントはロシアンルーレット餃子より…
おまえでいいんだけど……

そんなことを考えながら電気を消した直樹だった。


＊＊＊＊その頃＊＊＊＊＊

「どーする？？パパのプレゼントは？？」
「馬鹿ね、毎年決まってるじゃない」
「あぁ…そうだった」
「今年は何処いこうか？」
「沖縄は？？」
「じゃ、おばあちゃん誘ってみるか！」

子供たちは、二人きりにするために家を空ける計画を立てていたのは言うまでもない…