Calling You vol.2

6日ぶりにマンションに戻った。
留守番電話のメッセージを再生する。ピ〜〜〜ィッ、用件は12件です。
ジャケットを掛けたハンガーを手に持ったまま、ボタンを押す。

「入江君、お疲れ様。あのね、今日ね、注射が上手にできて誉められたんだよ。でね・・・」
「入江君、お帰りなさい。幹ちゃんがね、ひどいんだよ〜 聞いてよぉ、あのね・・・」
「入江君、お帰り〜っ。ガシャガシャン...ごめんね。手がすべっちゃった。何だっけ?そうそう・・・」

まったく...何やってんだか。思わず笑みが漏れる。
琴子のヤツ、何件メッセージ入れてるんだ。
まぁ、一日に何十件も入れてた最初の頃に比べたら、随分な進歩だよな。
そんなことを思いながらも、琴子の声を聞くだけで、部屋に戻ってきた時に
背中に張り付いていた疲れが軽くなり、癒されている自分を感じる。

「入江君、お疲れ様。ごはんちゃんと食べれてる?
 ほんとに寒くなってきたから、栄養摂らないと風邪ひいちゃうよ。
 あったかくして、ベッドで眠ってね。机で居眠りしちゃダメだよ。
 それから...ピーーーーィッ」

ぷっ…お前は、まぁだ、一度でメッセージも入れられないのかよ。
もう俺がこっちに来てから、何回メッセージ入れてると思ってんだ。

「それから...入江君、大好きだよ。おやすみなさい。」

あぁ、わかってるよ...俺も大好きだよ...琴子には言えない一言をつぶやく。
こんなに好きになるなんて、出会った頃は思ってもいなかった。
いつの間にか、俺の中に入ってきて、俺の中心に居座ってしまった琴子。
...メッセージだけじゃ物足りなくなって受話器をとる。

「はい、入江でございます。」
「お袋、俺。琴子は?」
「あら珍しい。琴子ちゃんは幹ちゃん達とお勉強よ。何かあったの?」
「何でもない。当分電話できなかったから。家の方に変わりは?」
「ないわよ。みんな元気よ。琴子ちゃんも、と〜っても元気。
 何かいいことあったのかしらね〜。ふふ〜ん♪」
「何だよ。気持ちわりぃな。切るぞ。」
「お兄ちゃん、まさかとは思うけど、週末、誰かと約束してないでしょうね?」
「誰と約束するって言うんだよ!せいぜい静かな誕生日を満喫するよ。じゃあな。」
「ほんと可愛くないんだから!!こんな子のために琴子ちゃんは…なんていい子!!」
「おやすみ。」

返事を待たず、受話器を置いた。
...琴子が元気?...週末、誰かと約束...ふっ、琴子、こっちに来る気だな。
我慢するって言ったのに、しょうがないヤツ。そう言いながら、緩む頬を抑えられない。
少し片付けとくかな。さっきまでの疲れが完全に吹き飛び、浮き立つ気持ちに苦笑する。

おっと、まだ2件メッセージが残ってる。ボタンを押す。

「あっ、あの、いつもお世話になっています。あ、相川です。
 えっ、えっと、明日の土曜日、入江先生は日勤ですよね。
 もし、もしでいいんですけど、よ、よか...ピィ〜〜〜ッ」

くくっ...ここにも一度でメッセージ入れられないヤツがいたよ。
マジかっ。こんなところまで似てるなんて。

「す、すみません。よ、よかったら、お仕事の後、お、お時間をいただけませんか。」

直樹は、すぐに携帯を手に取り、メールを打った。

「待ってる」

一言だけに想いを込めて、直樹は送信ボタンを押した。
ぴろりお
2010年11月01日(月) 17時10分26秒 公開
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■作者からのメッセージ
2回を終わってまだ会えてません…
次回、会える予定です。

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DfXKe6 Click!! JimmiXS ■2016-08-12 09:46:36 188.143.232.41
GTufBQ oqfktgiqspvl, [url=Click!! [link=Click!! Click!! ilzdwmit ■2013-07-06 13:33:40 95.56.77.104
>吉キチさん
コメントありがとうございます。
ふふっ、続き、読んでくださいね♪
ぴろりお ■2010-10-21 15:02:57 58.183.238.139
もちろんメールは愛しのお相手ですよねぇ? 吉キチ ■2010-10-21 13:38:55 221.190.9.179
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