シンディー
   ・ワーク

《小学校教師の2月》

除雪序説A

雪かきが不十分で抗議の電話が入ったことは先月書いた。
その三日後、今度は市教委に直接抗議の電話が入った。
「今日で三日間、子どもは学校で勉強もしないで雪かきばかりさせられている。教育委員会はどういう指導をしているのだ」
・・・・・・雪は、毎日二時間ずつかいてもかききれないくらいに降った。

雪かきをしなくてもダメ、してもダメ。
私は、キレた。




雪遊び

私の小さいころだって子どもは犬と同じで、雪が降ると反射的に、バカみたいに外へ飛び出したものだが、近頃の子たちはさっぱり出ない。
「だって寒いんだもん」

今日は体育だというので張り切ってスキーウエァまで持参し、
「さあ、雪合戦やるよ〜!」
と叫んだら、一斉に浮かぬ顔になってしまった。体育館でドッジ・ボールの方がいいという。
雪かきもしないくせに、子どもが雪嫌ってどうするんだとも思ったが、子どもの不興を買ってまでもやらなければならない教育的意義も見つからず、結局止めてしまった。

「子どもたちは自然と戯れる機会を奪われている」なんていうけど、奪われているのは「機会」なのかしら?

そう言えば去年の春、教育懇談会の席で、
「最近は自然もすっかり減ってしまって・・・」
と発言して、私の眠気を一遍に吹き飛ばしたお母さんがいた。
(オイオイ、ここは10分も歩けば平地林がウジャウジャある土地柄だよ!? ナンデ自然がないの?)

それよりも驚いたのは、発言者の言葉に、周囲のお母さんたちが一斉にうなづいたことだった。




クラス替え?

転出の児童が多かったためにわずかい1年で学級減の危機。
3クラスが2クラスに減ってしまうかもしれない。
一クラス29人から、一気に40人学級に1.5倍増ということになりかねない。

おまけに学校全体の学級数が規定値を割ってしまい、理科専科の先生まで減らされてしまうそう。大事じゃ!

それで戦々恐々としているのは、けれど教師ばかりではない。
2月になって急に「お話したい」という保護者の申し入れが重なり、何かと思って恐る恐る会うと、
「先生は来たばかりでご存知ないと思いますけど、ウチの娘は保育園のころ毎日のようにAちゃんにいじめられていて、今年小学校に上がってやっと別のクラスにしていただいたと思ったのに、また今年も・・・」
そんな話ばかり。

内容を聞いてもこれがいじめと言えるのか首を傾げるものばかり。
だいたい小学校の低学年なんて口さがないガキばかり、バカだのアホだの言われてそのたびに傷ついていては先が思いやられる、とノド元まで出掛かるのだが、後の面倒を考えるとそうも言ってはいられない。

結局「できるだけ最優先で配慮しましょう」と口約束してお引取りいただくのだが、そんな話が三つも四つも重なるとウンザリしてくる。

中にひとつ、「Bちゃんのお母さんとはトラブル続きで・・・」というのもあった。
フムフム、親たちの人間関係も考えて学級編成しなくちゃならないわけだ・・・。




で・・・

クラス替えに関わるそんな話を3人の担任で持ち寄って話したら、どこのクラスも同じような話でもちきりだという。

CちゃんとDちゃんは仲が悪く、EちゃんはFちゃんからいじめを受けている。
GちゃんはHちゃんとどうしても一緒じゃないと学校に行かないといっているが、そのHちゃんと仲のよいIちゃんまで一緒だと、結局Iちゃんにいじめられてしまうから学校に行けない。
JちゃんとKちゃんは双子だから一緒にするわけには行かない。

Lちゃん・Mちゃんはお母さん同士が犬猿の仲。
Nちゃんのお父さんは会社でOちゃんお父さんの上司。しかし部下の娘の方が圧倒的に成績がよいので社内で余計な気を使うことが多い。
PちゃんとQちゃんはお姉ちゃん同士が中学校で不良仲間・・・

それをわずか2クラスの中にはめ込むのだ。

私は久しぶりに高校の数学用語を思い出した。

解なし!