キース・アウト
(キースの逸脱)


2000年5月

by   キース・T・沢木















2000.005.02

<主婦刺殺>私立高3年を殺人容疑で逮捕 愛知・豊川署

[毎日新聞5月2日]




 愛知県豊川市金屋元町、無職、筒井弘さん(67)方で1日夕、妻喜代さん(65)が顔など約40カ所を刺されるなどして殺害されていた事件で、同県警捜査1課と豊川署の捜査本部は2日午後7時57分、同県音羽町の私立高校3年の男子生徒(17)を殺人容疑で逮捕した。生徒は動機について「人を殺す経験をしたかった」と供述しているという。

 少年は、祖父母と教師の父親の4人暮らし。1歳半の時に、両親が離婚したが、特に別れた母に会いに行きたがることもなかったと祖父は話す。  「性格は少しきつくて声は大きいけど、明るくよくしゃべる子」だった。

 地元の私立高校に通学する少年は、近所でも「良い子」として評判が高かった。近くの主婦は「朝見かけると必ずあいさつしてくれた。礼儀正しいし、勉強も良くできた。
事件を起こすなんてとても信じられない」と驚きを隠さない。また、別の主婦も「勉強も部活も真面目にやっていた。悪いうわさなんて聞いたことがない」と話す。

 しかし、一方では「少年はバイクに乗りたいと希望していたが、祖父が許してくれなかったと聞いた。祖母も少年について“最近は大きくなって、言うことを聞かないことが多くなった”とこぼしていた。教育に厳しい家庭だったのかもしれない」と話す主婦もいる。 生徒が通う私立高校では2日午後8時半から理事長代行らが記者会見。生徒については「極めてまじめで、模範的な生徒だった」と述べ、動機についても「思い当たることは全くない」と語った。これまで生活面や家庭面での問題は一切報告されていないといい、「どうして事件を起こしたのか今も信じられない」と表情を曇らせた。

 今後の対応については、「人の命の大切さや他人への思いやりは特に重視してきたつもりだった。
もう一度原点に立ち返り、教育理念をしっかりやりなおさなくてはと考えているが、具体的な対策はまだない」と語った。

 生徒の通っている私立高校は、仏教系学校として創設。全校生徒約1800人。1学年16クラスのうち3クラスが、生徒のいた特進クラス。同クラスは、大学進学を目標に定以上の学力水準を持つ生徒が入る。6、7時限は授業かクラブ活動か選択でき、補習では大手受験予備校の受験講座放送を録画したビデオで勉強する。
このほか、生きた英語や海外の文化を学ぶため、外国人と一緒のバスツアーも行っている。

現代の小ラスコーリニコフ
「人を殺す経験をしてみたかった」は、ある意味で実に明快だ。明快過ぎて誰も理解できない。

この記事も最近流行の「普通の子が危ない」シリーズだ。
しかし基本的に何かをやらかす子が「普通」であったためしはない。
祖父が語る性格は少しきつくて声は大きいも、
祖母の語る最近は大きくなって、言うことを聞かないことが多くなったも、
よく検証すれば字句通りの穏やかなものではなかったのかもしれない。
別れた母に会いに行きたがることもなかった子どもというものにも、屈折はありそうだ。

学校は困惑している。
もう一度原点に立ち返り、教育理念をしっかりやりなおさなくてはと考えているが、具体的な対策はまだない
は正直な返答だ。
命の大切さや他人への思いやりは、本来幼児期につけるものであり、高校生になってからは容易に身につくものではない。
どうしたら良いのか。
メディア諸君、教えてくれたまえ。






<高校入試>女性として再受験不合格は不服 徳島の男性が提訴 [毎日新聞 05月01日]

 「女性として人生をやり直したい」と公立高校を再受験した徳島市内の30代の男性が、今春の入試で不合格となったのを不服として、高校の校長らを相手取り
入学不許可処分の取り消しと精神的苦痛の代償として300万円の支払いを求める訴訟を、1日までに徳島地裁に起こした。男性が受験した学区の競争率は1・01倍。


競争率は1・01倍なのに落とすことはないだろう、という趣旨か。
5月の初頭を飾るにふさわしいさわやかな記事をと思ったのだが、こんなのが出てきた。
彼が1・01倍の0・01であった可能性はないのだろうか。
女性として出願する書類に問題はなかったのだろうか。






5000万円恐喝 主犯格少年「親も悪い」家庭不和非行の引き金?

[西日本新聞2000年05月01日] )

 名古屋市の少年(15)が中学三年生当時に同級生らに総額約五千万円を脅し取られた事件で、主犯格の少年(16)が愛知県警少年課などの調べに対し「自分が悪いことをするようになったのは、両親の不和が原因」などと自分自身の生い立ちを振り返る内容の供述を始めていることが二十九日、分かった。中学入学後の急激な非行化、被害少年に対する限度のない暴力など一連の犯行の特異性を解明する手掛かりとして、注目している。

 調べでは、少年は会社員の父と看護婦の母、姉の四人家族だが、かつては祖父母も同居。供述によると、少年は幼少時はおばあちゃん子で「お父さんもお母さんも仕事忙しくて家にいなかった」「大好きなおじいちゃんとおばあちゃんにかわいがってもらった」と振り返っている。

 三世代同居の家庭は少年が小学校のころ、祖父母の別居で終わったといい、当時の心境について「おじいちゃんとおばあちゃんが追い出された」と受け止め「お父さんとお母さんに憎しみを感じた」と話しているという。

 さらに、祖父母との別居をきっかけに、両親が少年の目の前で口論する場面が増えたといい「自分が悪いことをするようになった原因の一つ」一連の犯行について「自分も悪いが、親も悪い」といった内容の供述をしているという。

 少年は、小学校六年時の学級の人気投票で「明るい人」「楽しい人」「面白い人」の各項目とも一位を独占するなど人気者で、卒業文集にも「日本一のお笑い芸人になるぞ!」と夢をつづっていたが、中学入学後二年もしないうちに、不登校となり粗暴な面が目立ち始めた。急激な素行の変化に家庭環境も影響している可能性もあるとみて、慎重に事情を聴いている。



前にも言ったと思うが「本人がこうだといってるから真実はこうだ」というなら、犯罪捜査も心理学もいらなくなる。
人間は、ましてや子どもは、自分自身を正確に表現することなどできない。
小学校六年時の学級の人気投票で「明るい人」「楽しい人」「面白い人」の各項目とも一位を独占するなど人気者で、
も、単に軽薄な人物像を浮き彫りにするに過ぎない。
「明るい」「楽しい」「面白い」だけでは中学生はやっていけない。
もちろん社会人としても、
それだけで生きていくことは到底できないのだ。

両親が少年の目の前で口論する場面が増えたといい
「自分が悪いことをするようになった原因の一つ」。
一連の犯行について「自分も悪いが、親も悪い」といった内容の供述をしているという。

「自分も悪いが〇〇も悪い」という言い方は常に「自分も悪いが〇〇はもっと悪い」という言い訳に過ぎない。
おヤが問題というなら、子どもの前で口論したことではなく、
こうした責任転化の人格をつくりあげた、そのことをむしろ問題にすべきなのだ。







2000.05.10

「もっと給料を、もっと敬意を」米教師の叫び

[CNN.co.jp 5月10日]



米国の教師が一番望んでいるのは、給料の値上げ、そして教師に対する「敬意」だ。戦後のベビー・ブーム以来、教師不足が最悪の状況と言われる中、教育省は、2002年までに新たに200万人以上の教師が必要と発表したが、優秀な教師を獲得するには相応の給料と敬意を払わねばならない。

生徒から「先生の車を見たら、将来教師になりたくない」と言われたり、自分の給料の中から学校の備品を買わなくてはならないなどの実態が最近の調査やCNNの取材で明らかになった。

調査は、悪化する米の教師不足解消を目指す、国と州の優秀教師賞を与えられた400人を対象に行われた。そのうち、10人に8人が給料の値上げやより充実した福利厚生の必要性を指摘。しかし、それにも増して、学校管理者や社会一般から、敬意を払ってもらいたいとする教師が非常に多かった。

ペンシルバニア州の地理の教師は、「教育は国民から広く尊重されていかなくてはならない。私が教えている中で最も優秀な生徒たちは、教師は敬意を持たれない職業と判断し、教師にはなりたくないといっている」と答えた。

さらにニュージャージー州の高校で社会学を教える教師は、「教師は、批判の的にされるケースが多いが、尊敬されていかなくてはいけない」と答えた。

面白い記事だ。しかし日本の教師たちは
学校管理者や社会一般から、敬意を払ってもらいたい
などと甘えたことは言わない。
日本では、教師が敬意を払ってもらえないのは教師の努力がたりないからだということになっている。
したがって
敬意を払ってもらいたい
などと言えば墓穴を掘ることになりかねないからだ。
しかし、それにしても、
いずこも同じ秋の夕暮れ・・・・・・。




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服装で学校改革 大規模な制服導入案を採択 米国フィラデルフィア

[CNN.co.jp 5月10日]



 米国の公立学校では、風紀改善や学業専念などへの効果を期待して、全国的に生徒の制服着用を義務づける方向にあるが、
フィラデルフィアの教育委員会でも8日、制服導入のための案が採択された。
大都市の行政区内で、すべての公立学校に制服導入を義務付けるのは、これが初めて。

採用された案では、フィラデルフィアの公立学校に共通の制服を定めるのではなく、
おのおのの学校が、独自に望ましい制服を決めることを義務づけている。

各学校は即刻、「制服決め作業」に取り掛からなければならない。
教育委員会は、低価格で、容易に購入可能な服装を定めるように指導するという。

宗教上の理由で制服の着用が不可能な場合など、特殊ケースについての条項は、今後保護者と生徒、教師を交えて討議していく。

教育委員会のクリスティン・ジェイムズブラウンさんは、
「学業向上や風紀改善への確固たる解決策にはならないのは分かっている。

しかし、学校を重んじる気持ちを養う要因の一つになると思う」と語った。


8日の審議では、約数十人の保護者や生徒が、制服着用に異論を唱えた。
中には「制服は創造性を破壊する」というプラカードを掲げている人も見られた。

市内の高校に2人の子供を通わせているリサ・ハーバーさんは、
「このような規則導入を主張するのは、学校現場を知らない人々だ」
と教育委員会の採択を非難した。

セントラル高校に通うアダム・グリーンマン君は、
「今まで良い生徒だと思われていた人が、制服の規則に沿っていないからという理由で、今までとは反対の評価を受けるかもしれない。
僕たちは皆、違う好みを持っている。僕たちは統一を重んじるようには教育されていない」と話した。

校内暴力の問題に取り組む教育現場の教師たちは、青少年の孤立化を防ごうとしている。
私服で仲間との差がつかないという点で、クリントン大統領は、すでに制服導入を支持してきた。
フィラデルフィアでは、ジョン・ストリート市長の要請を受けて、教育委員会が先月から、制服着用の義務づけについて審議を始めていた。


制服の教育的効果
全国小学校校長協会が1998年に発表した調査によると、
「制服着用を実施している学校の約52%が、生徒の素行改善に効果があった」と答えている。

昨年9月から制服着用を導入したニューヨーク市の公立学校では、保護者の同意書があれば生徒の制服着用は免除される。
学校長は、「そうしなければ、提訴される可能性もある」と説明している。

ニューヨーク市では約半数の公立小学校が制服着用を義務付けている。
その他の州を見ても、フロリダ州マイアミでは、60%、ミシガン州シカゴでは80%が制服を導入している。

フィラデルフィア市内の中学校のブルース・ライアン校長は、「生徒間の洋服をめぐる競争がなくなり、学習に集中できる」と確信している。

ペンシルべニア州の市民団体のメンバーは、
「生徒の権利に抵触するようであるなら、フィラデルフィアの案に法的な抗議手段をとるかもしれない。

読み書きに加えて、公立学校は民主主義を教育する場でもある。
制服導入は、子供たちにどのように選択するかを教えることに反する」と指摘している。

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制服反対の論拠に国境がないことが分かる。
制服は創造性を破壊する
「今まで良い生徒だと思われていた人が、制服の規則に沿っていないからという理由で、今までとは反対の評価を受けるかもしれない。
いずれもヒステリックに可能性を訴えているに過ぎない。

それに対して校長会側は数字をもって応える。
全国小学校校長協会が1998年に発表した調査によると、
「制服着用を実施している学校の約52%が、生徒の素行改善に効果があった」
いい数字である。

小学校の制服・・・・・・
このサイト全体を通して私たちが一度も使ったことのない言葉を、今、私が使う。

「アメリカを見習え!」







2000.05.11



愛知の女性殺人事件とバスジャック事件について何かを言わなければならないと思っていたが果たせなかった。
実際ろくな記事がなかったのだ。


特にバスジャックについてはかなり早い段階からシナリオが作られていて、記事はその範囲を出ることがなかった。
典型的なのが次の記事だ。

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<バスジャック>平然と人を殺した17歳少年の軌跡を追う

[毎日新聞5月7日]


 17歳の少年がまた、平然と人を殺した。
「あなた、しぶといですね」。西鉄高速バス乗っ取り事件を起こした17歳の少年はそう言って、
首から血を流す女性を笑い、写真を撮ったという。
だが、中学校までの彼を知る教師や友人らの印象は「まじめ」「目立たない」「ひ弱」など、今回の少年の姿とは結びつかない。
いつの間に変わってしまったのか。少年の軌跡を追う。


 真面目で成績が良い、頑張り屋さん。小学校高学年の時の担任が思い出す少年の印象だ。
卒業文集には「虫が好きだから、大人になったら虫の研究をしたいです」と記した。
友人は言う。「頭が良くて優しくて、だれにでも自慢できる友だちだった」


 そんな子が小学校卒業から5年たち、バス乗っ取り事件を引き起こす。周囲は二つの出来事が彼の転機となったとみる。

 中学3年の中学の卒業式間際。
少年は数人の友人に「飛び降りてみろよ」と言われて校舎2階の階段の踊り場から飛び降り、腰の骨を折る重傷を負った。
「いじめ」とも言われているが、当時の担任やクラスメートに「いじめ」の認識はない。


 現場に居合わせた友人の一人は言う。
「あの踊り場はみんなよく飛び降りていて、当日も彼と仲の良かった数人が先に飛び降り、最後に彼が残った。
降りた子が彼の筆箱を見せて『飛んだら返す』とは言ったけど、いじめとかそういう感じじゃなかった」。
少年は運動が苦手で、授業で腕立て伏せができず、周囲が「頑張れ」と声をかけたことがあった。


 事故後、学校側は「無理強いされたのではないか」と繰り返し少年に聞いた。
少年は「いじめじゃありません」と強く否定した。


 しかし、乗っ取り事件の2カ月ほど前。少年の母親は少年が通った中学校を訪ね、親しかった先生にこう言って、涙をこぼしたという。
「いじめた子は、のうのうと高校に行っているんですよね……」


 中学に入っても少年は自習の教室で、一人だけ勉強をする生徒だった。
しかし「ガリ勉」「運動音痴」と言われ始める。筆箱を隠されたこともあった。


 少年の心は学年が進むにつれ変わってきていた。

 中2の時、友人は通学途中に少年からカッターナイフを見せられ「頬(ほお)をペタペタされた」。
虫やアリを焼き殺したこともあった。
勉強を聞くと『そんなことも分からないのか』と言ったり、人を見下すようなところがあって、孤立していった」と友人は言う。


 さらに高校進学。
少年は地区で最もランクが高い進学高を目指した。
中3の夏の三者面談。少年はこの志望校の名前を担任に告げた。
少年の成績では合格は厳しかった。担任は意欲を持たせるため「この教科を頑張って」と言うと、希望に満ちた顔をしたという。
12月の面談では担任が「志望校のランクを下げてはどうか」とアドバイスしたが
「この高校じゃないとだめだ。まだ頑張る」と言い、両親は家庭教師をつけた。


 志望校を変えたのは、願書提出直前の2月。最後の三者面談で担任が「厳しいよ」と伝えると、少年は黙りこくった。
後で「別の高校にする」と返事が返ってきた。


 進学した高校には9日間出席しただけで不登校となり、翌年5月に中退した。

 級友にばかにされる自分の姿。第一志望をあきらめた高校進学。理想と現実との距離は離れるばかりだった。
ある友人は言った。「努力家だったから、何をしてもうまくいかない自分が許せなかったんじゃないかな」と。


 「ドラえもんを全巻そろえたよ」。ケンカ別れした元親友は中学時代、少年が喜んで話したのを覚えている。
さえない主人公の夢を未来から来たロボットがすべて叶(かな)えてくれる、あの漫画だ。


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状況が「いじめ」に当たらず、周囲が「いじめ」ではないと語り、本人も否定すればこれを「いじめ」だと認定することはできない。
「いじめ」の認定は被害者を被害者として救済する最初のステップだが、加害者を加害者として糾弾する第1段階でもあるのだ。
事件がないのに加害者をつくることは冤罪である。
5000万円恐喝事件においても被害者は頑として被害を否定した。警察にも喋らなかった。
しかしそれにもかかわらず学校と警察は事件を未然に防げなかったと非難される。
この国では自己責任という概念はないのかもしれない。
子どもたちは何の努力もなしに救われなければならない。




5月10日、佐賀市教育委員会は次のような調査報告を公表した。


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<バスジャック>容疑者の階段飛び降り、いじめでない 佐賀市教委[毎日新聞5月10日]

 西鉄の高速バス乗っ取り事件を受けて10日、佐賀市の臨時教育委員会が開かれた。
市教委は委員会に、容疑者の少年(17)が中学3年だった1988年2月18日、
非常階段から飛び降りてけがをしたのは「いじめによるものではなかった」と報告した。


 市教委は事件後、少年が非常階段から飛び降りた状況や少年の友人関係について、
少年が通っていた中学校の現校長や少年の3年当時の担任らから聞いた。

その結果、「非常階段から飛び降りるのは当時校内ではやっていた。
少年は仲のよい友人3人と一緒に遊んでいて、3人の後に飛び降りたが着地に失敗した。
少年は、このけがによる入院(13日間)以外ほとんど学校を休んでなかったことも併せて考えると、
いじめではなく事故だと報告した学校の判断に誤りはなかった」
と述べた。

 しかし、少年が警察の調べに「いじめられていた」と供述しているとの一部報道があることから、
「いじめは本人の認識次第で、最終的に少年がいじめられていたと供述すれば、受け入れなければいけない」
と報告した。

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「いじめは本人の認識次第で、最終的に少年がいじめられていたと供述すれば、受け入れなければいけない」
この一言は重い。
市教育委員会は全国に向けてこう宣言したからだ。
たとえそれが子ども同士の遊びであっても、健全な仲間同士のいさかいであっても、はたまた本人の誤解であっても、
生徒がひとたび「これはいじめだ」と言えばすべてを受け入れよう。
つまり「いじめられた」と本人が言えば、すべての事実関係を無視して責任を取ろうということである。
これは「いじめ」に対する今日の学校・市教委の立場を如実に示している。
「いじめられた」と言われればなにもできないのだ。




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<バスジャック>容疑者少年 「裏切ったら殺してやろう」と供述[毎日新聞5月11日]



 西鉄高速バス乗っ取り事件で、人質強要処罰法違反などの容疑で逮捕された佐賀市内の無職少年(17)が、
広島県警など4県警合同捜査本部の調べに対し、

「乗客が裏切ったら、見せしめとして何人でも殺してやろうと思っていた」と供述していることが10日、分かった。
少年はバス内で乗客に対して「裏切ったな」という言葉を連発。
少年は既に、中学時に受けたいじめや今年3月の入院について、
学校や両親に不信感を持っていた趣旨の供述をしており、
捜査本部は、少年の過去の「裏切られた思い」が乗客殺傷の背景にあるとみて注目している。
(中略)
 少年は中学時代にいじめられて大けがをしたことについて、「学校は何もしてくれなかった」と佐賀県警に打ち明けていた。
また、今年3月、少年の両親が「息子が通信販売で刃物を買い、部屋にこもっている」と佐賀県警に相談し、
少年を病院に入院させたことにも強い不満感を漏らしている。

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独自の取材で「いじめ」らしい「いじめ」を発見できなかったメディアは、
警察を追及し警察からのコメントを「いじめ」を引き出そうとする。
犯人は、
「広島県警など4県警合同捜査本部の調べに対し、
〜と供述している」
〜と佐賀県警に打ち明けていた」

こうして
すばらしい小学生→中学校におけるいじめと厳しい受験体制→不登校→精神病院への入院→凶行
という図式は固定化して行くのだ。

 中2の時、友人は通学途中に少年からカッターナイフを見せられ「頬(ほお)をペタペタされた」。
虫やアリを焼き殺したこともあった。

勉強を聞くと『そんなことも分からないのか』と言ったり、人を見下すようなところがあって、孤立していった
(7日付)
という犯人の人格は、いじめによって
学年が進むにつれ変わってきていた
(7日付)
ものであり、本人の罪ではないのである。





2000.05.13


カウンセラー配置      臨床心理士の育成が急務

[沖縄タイムス 2000年 5月10日 ]





 文部省は、いじめや不登校に対処するため全国の公立の全小、中、高校にスクールカウンセラーを配置する方針を固め、
具体的な検討を始めた。

 いじめや不登校はより深刻化し、凶悪な少年犯罪も続発している。

 スクールカウンセラーは、いじめ問題が学校教育の中で深刻さを増してきたことを受けて文部省が、
一九九五年度から調査研究事業として配置してきた。


 全国の配置校は当初の百五十四校から二千校(九九年度)に増えた。
しかし、まだ公立の小、中、高校の約二十校に一校の割合にすぎない。が、成果も見られる。

 配置のメリットは、カウンセラーと教師の連携で教師の子どもに対する見方や姿勢が変わり、学校が子どもの個性を重視するようになったことや
担任、養護教諭らとの協力でいじめや不登校の発生を抑制したなどが挙げられる。


 だが、カウンセラーの中心となっている臨床心理士の資格者が約七千百人しかいないのが実情だ。
全国には四万校近い公立の小、中、高校があり、全校に配置するための資格者の養成が急務である。


 全国の多くの学校では、いじめや不登校、子どもたちが授業中に教師に無断で席を離れ、
授業が成り立たない「学級崩壊」など悩みを抱えている。
教師たちにカウンセリングマインドを身に付けさせているものの、教師だけの力量では解決できない問題が増えている。


 子ども同士のいじめなどは、教師や親にも話さないため表面化しないこともあるようだ。
カウンセラーが身近だと、子どもも悩みを積極的に相談するはずだ。


 生徒指導は教師の役割だとして、カウンセラーが子どもたちを受容し、相談内容を秘密にすることを肯定的にとらえない教師も少なくない。
そのような場合、うまくいかないケースもあるという。


 カウンセラーと教師、親との連携もより重要だ。そうすれば、いじめや不登校、学級崩壊などに適切に対処できる体制が整うことになる。

 生徒指導とカウンセリングの役割の違いによるギャップを埋めてこそ
カウンセラーと教師、親の連携が可能になり、いじめや不登校などの効果的な処方せんが期待できるのではないか。


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どうしてこういうアホな記事ができるのか理解に苦しむ。
 だが、カウンセラーの中心となっている臨床心理士の資格者が約七千百人しかいないのが実情だ。
などと平気で書くが、まるで7100人全員が学校に来てくれそうな雰囲気だ。
いったいこの7100人の内訳について調べたことはあるのだろうか?

300人近い医師免許所有者、ほかに大学教授、病院勤務のカウンセラー、児童相談所の相談員
そして1時間に1万円以上も稼ぐ民間の心理相談所職員・・・・・。
それが臨床心理士の実態だ。
無職の臨床心理士なんてそうざらにいるはずはない。


そもそも臨床心理士の受験資格取得そのものが厄介で、

 まず4年制大学学部において心理学または心理学隣接諸科学を専攻し卒業するのが大前提。
このあと、すぐに心理臨床現場に出た場合は5年以上の臨床経験が必要。
大学院に進学した場合は,心理学系の大学院なら修士課程修了後1年以上の臨床経験。
心理学隣接諸領域の大学院の場合は、臨床経験が2年以上
 医師免許取得者の場合は心理臨床経験が2年以上

つまり、一旦は何らかの職業につかない限り、なれないのだ。
これほど苦労して資格取得をした人々が、保険制度も充実しない非常勤講師として学校に来てくれるのか。

また臨床心理士資格を持つ医師や大学教授のうちの何人が、いまさらスクールカウンセラーになってくれるというのだろうか。
すでに全国で1000人あまりの臨床心理士をスクールカウンセラーとして確保したと言うが、それこそ驚きである。





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やや古い記事であるが、


職務質問で短銃突き付け暴行=巡査部長を逮捕、懲戒免に−長野県警

[時事通信社 2000年 5月10日 ]




 長野県警は9日、職務質問した無職の少年(17)に短銃を突き付け「死んでみるか」と脅し暴行を加えたとして、
特別公務員暴行陵虐の疑いで諏訪署下諏訪町交番勤務の原友美巡査部長(45)を逮捕、同日付で懲戒免職にした。
少年にけがはなかった。


 調べによると、原巡査部長は6日午前1時10分ごろ、パトカーで巡回中、下諏訪町内で2人乗りのミニバイクを発見。
停止を求めたが、バイクは蛇行や信号無視を繰り返しながら逃走した。
同巡査部長は、約5キロ追跡後、午前1時15分ごろ、路上で職務質問。
このバイクを運転していた少年の胸ぐらをつかみ
「どうして止まらなかったんだ。死んでみるか」
などと言いながら、短銃を頭などに突き付けた疑い。
 

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「どうして止まらなかったんだ。死んでみるか」
いい言葉だ。気骨ある立派な警察官じゃないか。

しかし一方の正義はいとも簡単にこうした警察官を懲戒免職にしてしまう。
45歳と言えば職業人としても家庭人としても最も重要な時期だ。

子どもを救おうと本気になる人間は危険だ。
警察官は本気で少年に立ち向かっては行けない。
少年たちには「警察官なんてチョロイものだ」と教えてくれる、よい事件だった。

・・・・・と思っていたら12日夕のラジオニュースで、自民党総務会の席上、野中幹事長がこの事件に関し、
「暴走族をつけあがらせる結果になりはしないか。長野県警の良識を問う」といった趣旨の発言をしたとの報道があった.
そうでなくてはいけない。








2000.05.16


<道徳教育>高学年になるほど楽しい減る 文部省調査

[毎日新聞5月15日]



 文部省は15日、全国の国公私立の小中学校を対象にした「道徳教育の推進状況」の調査結果を発表した。
道徳の授業について、小中学校とも学年が上がるにしたがって「楽しい・ためになっている」と感じる子供が少なく、
教員側の生徒に対する満足度は低いことが判明した。

同省は「子供の心に響く授業を工夫する必要がある」と話している。
(中略)
 教材は副読本を中心に、テレビ番組やビデオなど映像を使った授業も多かったが、
小学校低学年では45%が「ほぼ全員が楽しい・ためになる」と感じているものの、
高学年では14%、中学1年では8%、同2、3年では5%と極端に少なくなっている。

 このうち「生命の尊さ・大切さ」については、
小学校中学年、高学年で64〜65%▽中学1、2年では53%▽中学3年では47%の学校が「重点を置いて指導した」と回答したが、

これらの項目について「生徒の状態におおむね満足できる」と答えたのは
小学校中学年で37%▽同高学年39%▽中学1年36%▽同2年37%▽同3年39%だった。

 今回の調査を実施したのは98年で、当時の中学3年生は、
愛知県豊川市で主婦を殺害したり、
西鉄高速バスを乗っ取るなど凶悪事件を引き起こした少年と同じ17歳の世代だ。

 調査をみる限り「生命の尊さ・大切さ」の理解について、学校側から見た満足度は他の学年より高いという結果になった。

 また、「国を愛する心・郷土や国の伝統文化を大切にする」などを重点を置いて指導した学校は小中学校通して2〜8%と低率で、
児童・生徒について教員から見た満足度も5〜13%と低くなっている.


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つまらん記事である。
文部省は世論に押されてときおり(と言うよりはしょっちゅう)こうした調査をする。
問題に対する根本的な解決法などないのに盛んにつつかれるから、何かやってることをアピールしなければならないのだ。
そして現場教師が苦労してアンケート項目に答え、その一部が公表される。

(道徳に関するアンケートは、全10ページくらいに及ぶ膨大なもので、学年別の全時数、指導内容など、
アンケートの基礎資料をつくるだけでべらぼうに時間がかかる仕事だ)

文部省はそれで仕事をしたことになる(もっともそれ以外にやれることはほとんどないのだからしかたない)。
それを餌にメディアも適当な記事を書き、それでおしまい。
しかし
「子供の心に響く授業を工夫する必要がある」
などと言われるわれわれはたまったものではない。
授業の工夫など、もう飽和状態なのだ。

ところで、
算数や数学、国語や英語について同じ質問をしたらどういう結果が出るのだろう?
数学の授業を「楽しい・ためになっている」と感じる子どもがどれほどいるのだろう?
小学校中学年で37%▽同高学年39%▽中学1年36%▽同2年37%▽同3年39%だった。
という数字は見方を代えればかなりいい成績とは言えないだろうか.
算数や数学ではこれほどの得点は取れないだろう。

ただし、こういうことは言える。

算数や数学で全員が満点が取れなくても、時に10点しか取れない子が出てきても世間はあまり文句を言わない。
だが、道徳ではひとりでも成績の低い子がいると社会は許さない。

問題を起こすのは、常に道徳の落ちこぼれたちだからだ。





2000.05.17

17歳ハンマー少年、犯行予告郵送=「いじめの仕返し」と供述[時事通信社 2000年 5月16日 ]



 12日早朝、横浜市内を走行中のJR根岸線車内で、居眠りをしていた男性(48)の頭をハンマーで殴打し、
殺人未遂の現行犯で逮捕された同市私立高校2年の男子生徒(17)が犯行予告を警視庁とTBSに郵送していたことが16日、
]神奈川県警大船署の調べで分かった。
少年は以前いじめに遭っていたことを供述、同署は犯行予告文の内容を分析し動機を詳しく調べる。

 調べによると、少年は事件前に3通の犯行予告をワープロで作成。
「犯行予告在中」「日本在住17少年」と表書きした封書に入れ、
5月8日付と11日付の消印で警視庁に、同8日付の消印でTBS本社(東京都港区)に送り付けた。
 

この記事から私が感じることは次の点である。
やたらいじめられたいじめられたと言い続ける被害念慮の強い少年が、
復讐は正義であるとの信念に立って、
ハンマーを打ち下ろした。





2000.05.18

<特報・英語教育>小学1年生から 文相の私的諮問機関で一致[毎日新聞5月17日]


 小学校からの英語教育について検討している文相の私的諮問機関
「英語指導方法等改善の推進に関する懇談会」(座長、中嶋嶺雄・東京外国語大学長)は
16日の会議で、「小学1年生から英語教育を行うことが有効だ」とする点で合意した。
6月に公表する「中間まとめ」に盛り込む方針だ。小学校の英語教育については、これまで積極論と慎重論の両方が述べられており、
低学年からの積極的な対応を進める方針が打ち出されたのは初めて。
同懇談会は今後、教科外での指導とするかどうかや教育内容、指導方法などについて議論を進める。

(略)

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私は英語が苦手だったが、幼馴染のMは得意だった。
中学から高校までの6年間に、彼は私のざっと5倍ほどの学力をつけた。

だから、やっぱり小学校から英語をやっておけば・・・・・・・
しかしそういうことにはならない。



6年間で5倍の学力差がつくとしたら、それに小学校6年間を加えた12年間では10倍の差がつくだけなのだ。

確かに言えることは次の2点である。
Mが小学校から英語をやっていたら、高校三年のときには英検1級に迫る勢いだったろう。

そして高校1年で英語から落ちこぼれた私は、もっと早い段階で落ちこぼれることになっただろう。

小学校から英語をやる意味は、そういうことである。





2000.05.20

<学級崩壊>教師の指導力不足が直接要因 研究会が最終報告[毎日新聞5月18日]


 クラスの子供が騒ぐなどして授業が成立しなくなる「学級崩壊」について、
文部省の委託で実態把握や原因解明を進めてきた学級経営研究会(代表、吉田茂・国立教育研究所長)は18日、最終報告を公表した。
教師の指導力不足を直接的な要因としながらも、子供の生活の変化や家庭・地域の教育力の低下など複合的な背景を指摘。
「教師の頑張りを求めるだけでは克服は難しい」との認識を示し、
家庭や学校全体での組織的な対応を通して「潜在的な自己回復力」を引き出すよう提言している。 
【澤 圭一郎】


 調査は昨年2月に始まり、全国の小学校で「学級がうまく機能しない状況」の150学級を分析した。
(中略)
 そのうえで、報告は崩壊から回復した五つの事例を挙げ、
▽学級担任が問題状況を多面的にとらえ、自己点検・評価をする
▽保護者や地域の人も含めた第三者の助言や支援を受ける
▽学校全体で組織的に対応する
▽子供の変容に臨機応変に対応できる柔軟性を持つ
――などの対応策を提示した。


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対策と言ってもいずれも教師に努力を求めるものばかりである。
学級担任が問題状況を多面的にとらえ、自己点検・評価をする柔軟性を持つと言われても何をどうしたら良いのか私たちには分からない。

こうした調査・提言にはもっと綿密な考察が必要なはずだ。

学級崩壊はここ数年の現象である(と識者はおっしゃる)。
そうなるとここ数年の間に、教師の指導力が急速に落ちたか、臨界点を越えたかどちらかであろう。

それを証明しなければならない。

また、学級崩壊はベテラン教師のもとでもしばしば起こることも報告されているが、
そうである以上、ベテラン教師の指導力が低下するという現象についても説明しなければならなくなるがどうだ?



私は 教師の指導力不足が主因であることに賛成しても良い。
しかしそれは子どもが教師の指導力のレベルを超えてしまったという意においてだ。

いわば十両相手なら勝てたのに幕内に入ったら勝てなくなった、幕内力士としては力不足だということに他ならない。

もちろんそれでも幕内と互角に張り合うだけの力量を持てばいいには違いない。
だがそれは人間に可能なことなのか?

どんなに子どもが変わってもそれを指導しきる指導力を持てというのは、
すべての力士に横綱と互角に戦える力を持てというのにほとんど等しい。


もう一言書いておく。
義務教育からのドロップアウト率が50%に迫り、毎年17歳以下の母親が10万人も生まれ、
90%の子どもがマリファナを含む麻薬の経験者だというアメリカの教師に、
それはあなたたちの指導力不足だと言ったらどのような反応が返ってくるのか考えてみたまえ。






2000.05.21

<犯人扱い>間違って取り調べ、停学処分 山口県立防府西高[毎日新聞5月20日]


 山口県防府市内で昨年10月に起きた恐喝事件に関連し、
県立防府西高(桧垣良夫校長)の当時2年の男子生徒が学校から犯人と間違えられて取り調べられていたことが20日までに分かった。
男子生徒は昨年12月に自主退学した。
県教委は2月、校長を口頭による教育長注意処分にしている。


私はこうした記事を見ると明らかに脅されていると感じる。
事件には複雑な事情があり、自主退学をした生徒から詳しい話を聞けばそれなりに納得できることもあろう。
しかし記事の上での生徒の主張はこうなる。


「テメェ、オレを疑うなら学校を辞めてやる、教育委員会に訴えてやる、マスコミに訴えてやる!」

事件の詳細はこうだ。

 県教委によると、昨年10月、市内のレンタルビデオ店で、少年3人に現金1000円とビデオを脅し取られた私立高生が、
容疑者の1人として防府西高の男子生徒の名前を挙げた。
私立高から連絡を受けた防府西高教諭が名指しされた男子生徒から数回にわたって事情を聴いた。


 その際、男子生徒は事件とのかかわりを否定したため、
学校側は被害者の私立高生に再度確認したが「間違いない」と答えたため、
男子生徒に「うそを言っているのではないか」などと問いただしたという。
その事情聴取の際、男子生徒が別の校則違反をしていることが分かり、学校は男子生徒を10月末に停学処分にした。


 ところが12月3日、別の少年3人が恐喝事件の容疑者として警察に補導されたため、
同日夕には校長らが男子生徒宅を訪れ、本人と両親に謝罪した。
男子生徒は「学校にはもう行きたくない」と退学を望み、学校は慰留したが、12月10日付で自主退学した。
退学後の進路について学校も相談に乗り、男子生徒は県内の専門学校に入学した。


 県教委は、男子生徒を犯人扱いしたとの印象を与える言動が学校側にあった
▽男子生徒や両親に精神的苦痛を与えた、などの理由で、2月に校長を口頭で教育長注意処分とした。
桧垣校長は「犯人扱いは決してしていないが、そのような印象を与えたことは申し訳なかった」と話している。



いつものことだが新聞記事には理解できないことが多すぎる。
犯人扱いと言っても結局は間違いだったのだから、何も退学することはないだろう。
疑われた生徒がその程度の理由で退学を決意するとしたら、その方がよほど問題だ。

そこまで腹を立てたというのが本当だったとしても、
それだけ学校に怒りを持った生徒と家族が、退学後の進路について学校に相談し、指導にしたがって専門学校に入学したというのも解せない。


そもそも恐喝の被害者が、2度にわたる確認作業で繰り返し当該の生徒を名指ししたのはなぜだったのだろう。そこに悪意はなかったのだろうか。

犯人扱いはいけないとして、では学校は何をしたら良かったのか。
容疑者扱いくらいにしておけば良かったということか。その場合、犯人扱いと容疑者扱いの違いはいったい何なのか。
あるいは確かな物証が出るまで、指導を待つべきだったと言うことだろうか。


5000万円恐喝事件では被害者が完全に口を閉ざしてしまった。にもかかわらず学校も警察も調査の甘さを糾弾された。
しかし今度の事件のように、被害者がはっきりと名指ししても犯人として調査できないとしたら、調査というものはどのように行えば良いのか。


5000万円恐喝事件の際、私は次のことを学んだ。
被害者が被害を訴えなくても、学校は事件を察知し解決しなければならない。
そして今度の事件では以下のことを学んだ。
容疑のあるものに対しても厳しく追及してはならない。しかし事件は明らかにし解決しなければならない。






2000.05.31


親にも「成績表」 シカゴ市内の学校が実施
シカゴ(CNN)


いよいよ5月も終わる。今月は月初めに大事件が続発したためか、後半はこれといった記事もなく、私も飽いた。

5月を締めくくる話として、これはどうか。

 イリノイ州シカゴ市内の公立小学校では、この秋から生徒の保護者にも成績をつけることになった。
子供の学習態度や服装などについて、親が評価を受けて、5週間ごとに成績表をもらう仕組み。
教育に親をもっと参加させるための、新しい試みとして注目されている。

シカゴ市内のハロルド・ワシントン小学校では6年前から実験的に、「親の成績表」を渡している。
サンドラ・ルイス校長は、「とてもうまくいっている」と胸を張る。

「優等生になれなかった親は、どうしてなんだと学校へやってきます」

この小学校の試みが、今秋からは、市内全ての公立幼稚園・小学校で実施されることになった。
「親」として不本意な成績をつけられて、学校に文句を言いにいく保護者の数も、一気に増えるかもしれない。

 
親の参加と責任
子供の教育に大切なことを、親がやっているかどうかチェックして、5週ごとに家庭に送るのです」と、
市内の公立学校を統括するポール・バラス氏は説明する。


チェック項目は、
子供が宿題を出しているか
▽毎日登校しているか
▽学校にふさわしい服装をしているか――など。

成績の悪い親は、フォローアップの指導を受ける。

主な目的は、親が子供の教育に参加し、子供の学習態度や成績に親がきちんと責任をもつよう促すことだという。
特に、初めての子供を持つ親やシングルの親に対する「教育」効果が期待されている。

一方で、責任を負うべきは親ではなく、教師だとする反論もある。
保護者団体のメンバー、ジュリー・ウォステホフさんは、「親に対する侮辱です」と、手厳しい。
「学校と親との間のコミュニケーションに良い影響があるとは思えない。生徒の学習を助けることにもなりません」


もらった成績表がBやCばかりだったエレン・ハリスさんも、最初は同じ気持ちだった。
だが、今は違う。
「私が良い成績を取れば、子供たちも頑張るんです」と、「親の成績表」の効果を認めている。

「いつも親が支えてくれる」
ハロルド・ワシントン小学校ではこれまであえて、
「親の成績表」が子供の成績や出席率にどう影響しているかについては、検証してこなかった。
しかし、明らかにいい影響が現れているのに、学校側は気づいていた。

「校内の落書きがなくなりました。保護者の方たちは皆、とても学校に協力的です」と、ルイス校長は言う。
「こうして学校が良くなったのは、成績のいい保護者のみなさんが、いつも支えてくれるからです」

なるほどね。

私はときどきアメリカという国がとても好きになる。