キース・アウト
(キースの逸脱)

2001年9月

by   キース・T・沢木

サルは木から落ちてもサルだが、選挙に落ちた議員は議員ではない。
政治的な理想や政治的野心を持つ者は、したがってどのような手段を使っても当選しておかなければならない。
落ちてしまえば、理想も何もあったものではない。

ニュースは商品である。
どんなすばらしい思想や理念も、人々の目に届かなければ何の意味もない。
ましてメディアが大衆に受け入れられない情報を流し続ければ、伝達の手段そのものを失ってしまう。

かくして商店が人々の喜ぶものだけを店先に並べるように、 メディアはさまざまな商品を並べ始めた。
甘いもの・優しいもの・受け入れやすいもの本物そっくりのまがい物のダイヤ
人々の妬みや個人的な怒りを一身に集めてくれる生贄
そこに問題が生まれれば、今度はそれをまた売ればいいだけのことだ。










 
  




2001.09.09


中学で不登校5年後は文科省初の調査
進学や就労77%に

[信濃毎日新聞8月9日]




 中学で不登校だった人の77%が、卒業から五年後の二十歳の時点で働くか学校で学んでおり、社会的なハンディを乗り越えて生活していることが七日、文部科学省が実施した初めての追跡調査で分かった。

 不登校のきっかけとしては半数近くが「友人関係」、五人に一人が「教師との関係」などと答え、いじめなど学校での人間関係に起因するケースが大半であることを裏付けた。
 中学卒業後、65%が進学したが、うち38%は中途退学。高校にもなじめなかった人が少なくない。しかし、不登校経験については39%が「マイナスでない」と答え、「マイナス」の24%を上回った。

 調査グループの代表、森田洋司大阪市立大教授は「卒業後にいい経験や出会いがあれば、過去も肯定的にみて、将来の展望を見いだせる傾向がある」と分析している。 

 調査は、中学時代に不登校を経験、一九九四年春に卒業した約三千三百人に九九年春に調査票を郵送、約千四百人から回答を得た。
 不登校の理由は複数回答で「友人関係」が45%で最も多く、「教師との関係」21%、「クラブ・部活動」17%、「転校などでなじめず」14%なと、多くが学校生活の問題を挙げた。いじめは選択肢に入っていない。卒業五年後の現状は、アルバイトも含め就労している人が54%、学校に通っている人が14%、働きながら学校に通っている人が9%で、就労も就学もしていない人は23%だった。
 学校に行かなかったことを「後悔している」人は36%に上ったが、「仕方がなかった」が31%、「むしろ良かった」という人も28%に上り、回答が割れた。
 中学卒業後の支援は、61%か「あれば良い」と答えた。必要な支援は複数回答で「技術指導」と「心理相談」が28%で並び「出会いの場」などが続いた。

 大きな励ましになる 不登校問題に詳しい心理カウンセラー内田良子さんの話
 不登校の子どもを抱える親にとって一番不安なのは自分の子が将来、進学できるか、働けるのかということ。中学卒業後五年たって77%が就労か就学しているという調査結果は大きな励ましになる。必要な援助や意識の面など、学校に通っている子どもとの比較調査も行えば、そう大きな差がないことがもっとはっきりしたのではないか。学校の枠組みをもう少し緩やかに考え、学校復帰を前提とした文部科学省の対策は改めるべきだ。

調査方法 1993年度の中学3年生で「学校嫌い」を理由に1年間に30日以上欠席した約2万6千人に対し、都道府県教育委員会を通して協力を依頼。
協力すると答えた3307人にアンケート用紙を郵送。1393人(42・1%)から回答を得た。このうち467人には電話で不登校体験に関する意識などを詳しく聞いた。

一般の人々はここに示された数字をどのように読むのだろう?
「77%も就労もしくは就学しているのか。不登校と言ってもそんなに心配することはないんだな」
と胸をなでおろすのか、
「23%もの子が就学も就労もしていないのか」
と驚くのか、どちらだろう?

私個人について言えば、23%もの子が、就学も就労せず家にいたりブラブラしたりしていると考えるだけでもう十分暗い気持ちになる。
教師としてもそうだが、自分の子どもが不登校になった場合約四分の一の確率で、その子は二十歳の時も問題を解決していない、と考えるのは暗澹たる想いである。
就労している54%、就学している14%についても、彼らが生き生きと日々を暮らしている保障はどこにもないのだ。


不登校児童生徒の予後について、これほど大規模な調査はなかった。
まったくなかったわけではないが結果がまちまちで、「多くの者が成人後も何らかの問題を抱えている」と分析する結果もあれば「予後は極めて良い」とするものまで、千差万別で信頼に足るものではなかったのだ。その点2万6千人を対象とした今回の調査は、その数もさることながら、各地方教育委員会の全面的協力のもとで行われたという点でも評価できる。

さて、その上でこの結果をどう見るかだが・・・。
私はここに提出された数字を、一般の人々がどのように読むのか、まったく想像がつかない。




 




2001.09.09

防犯カメラ  不審者侵入防ぐ狙い
「生徒の安全を」「人権侵害の恐れ」

[信濃毎日新聞9月9日]




 東筑摩郡明科町は、明科中学技(二百七十一人)の玄関など三ヵ所に防犯カメラを取り付けることにし、七日開会した町議会九月定例会に関連予算二百万円余を盛った補正予算案を提出した。
 県教委によると、県内小中学での配置は「恐らく初めて」。
 町は、同校で夜間に窓ガラスが割られる事件があったり、大阪教育大付属池田小での童殺傷事件があったためとしているが、生徒のプライバシー保護などの点で論議を呼びそうだ。

 町教委によると、同校では六月、夜間に校舎の窓ガラスが一、二枚割られる事件が二件発生。盗難の被害はなかったが、二件目は教室に侵入した形跡があったという。
 議会から対策を求める声が上がり、不審者の侵入を防ぐ狙いで防犯カメラ導入を決めた−としている。
 設置場所は玄関と、周辺の民家から死角になる校舎南側、東側の計三ヵ所を予定。映像はヒデオに録画し、事件があった際に内容を学校側がチェックする。録画を夜間に限るかどうか、まだ決めていないという。
 町教委は「カメラがあること自体が、犯罪の抑止につながる、最も効果的な防犯対策と判断した」と説明 同校の御子柴英文校長も「一番に考えなければならないのは、子どもの安全。カメラか最善かどうかは分からないが、一つの方法ではないか」と話している。
 ただ、同校長は「教職員で掘り下げた議論をしたわけではない」といい、設置計画について生徒や保護者への説明もまだ行っていないとしている。
町教委も、事件があった際にビデオを警察に提出するかなど「具体的に詰めてはいない」という。
こうした点ついて、
県教祖の原治夫 教文部長は「日常の生徒たちも映り込む可能性がある。
一部の判断で設置を決めるのは、人権侵害の恐れが強い。生徒と保護者を含めた話し合いと納得が必要」と話している。

学校が閉鎖的に
 子どもの人権問題に詳しい石井小夜子弁護士の話 学校の安全を確保するための方向として、考え方が逆だと思う。
 防犯カメラは人を監視するのが役目。
 不信感を前提にした存在で、学校を閉鎖的な空間にする印象を与える。子どもの安全は、地域に学校を開き、地域の人の目を行き届かせることによって守るべきだ。



ここに登場する5つの団体や個人(明科町議会、明科教育委員会、明科中学校長、県教祖教文部長、石井弁護士)のすべてに心より同情する。

池田小事件を鑑み、校舎侵入事件があれば、町議会で何らかの対応を求めざるを得ず、費用を考えれば防犯カメラの設置というのは順当なものである。
したがってそれを非難される議会は気の毒である。

議会が決定すれば執行機関である教育委員会はそれに従わざるを得ない。
「カメラがあること自体が、犯罪の抑止につながる、最も効果的な防犯対策と判断した」
というのも良く分かる説明であり、それを非難される町教委は気の毒である。

通常、住民が議会を通して町立学校の施設を充実させようという時、学校の反応をいちいち聞いてきたりしない。住民の意思は既に議会において勘案されていると考えるから、保護者の意見を聞く必要はないと判断される。
 「教職員で掘り下げた議論をしたわけではない」といい、設置計画について生徒や保護者への説明もまだ行っていない
のは、結論が議会から降りてきたからであり、これに反対するためには改めて議会を動かすしかない。それが議会主義である。
にも関わらず、職員や生徒・保護者に
相談しなかったことを非難される学校長は気の毒である。

教員組合へ行って「防犯カメラ、どうですか?」と聞けば、教組幹部は立場上「好ましくない」と答えざるを得ない。
それを承知で取材され、言質を取られた教組幹部、これも気の毒である。
防犯カメラの設置が見送られその上で事故があった場合、日教組の無用な人権主義が事故を誘発させたということになりかねない。

恐らく詳細を知らされないままコメントを求められ掲載された石井弁護士は気の毒である。
深夜の侵入盗を防ぐ目的の防犯カメラが学校を閉鎖的な空間にする印象を与えるというとぼけたコメント。

子どもの安全は、地域に学校を開き、地域の人の目を行き届かせることによって守るべきだ。

これが実現するということは、住民が深夜の巡回警備につくということだ。
自分のコメントがそんな結論に繋がるとは知らないまま、名前を使われた石井弁護士は本当に気の毒である。


 




2001.09.21

県立高校教諭を懲戒免職
「女性と性関係」詳細は一切公表せず−−県教委 /千葉

[毎日新聞9月20日]




 県教委は19日、女性と性関係を持つ信用失墜行為があったとして、県立高校教諭を懲戒免職にした。ただ、県教委は「女性の主治医の意見書によれば、行為が公になれば、女性は最悪自殺する恐れがある」として、いつ発生し、どんな女性が、どんな被害にあったのかも一切公表しなかった。教え子へのわいせつ行為など県内教員の不祥事が相次ぐ背景に生徒のプライバシーを盾に事実関係をあいまいにする県教委の姿勢も指摘されており、県教委の対応に記者会見でも批判が集中した。
 会見の冒頭、川名博志高校教育課長(54)は「不祥事が相次ぎ、改めて申し訳ない」と頭を下げた。 記者からは事実関係への質問が続いたが、川名課長は「お答えできない」「申し訳ない」を繰り返すばかり。
 県教委内からも今回の高校教育課の対応には批判する声も上がっており、歯止めのきかない教員不祥事に県教委幹部の責任を問う声も上がり始めた。

生徒のプライバシーを盾に事実関係をあいまいにする県教委の姿勢も指摘されており、県教委の対応に記者会見でも批判が集中した。・・・

女が一人自殺しようがしまいがこっちは関係ない。
オレたちゃァ知りてーんだョ! コラ!!


ということか。

千葉県記者クラブ、潔し。



 




2001.09.28

社説=不登校対策 卒業後の支援も大事だ

[信濃毎日新聞9月27日]





 小中学生の不登校は依然、深刻な課題である。中学で不登校だった人たちを対象に文部科学省が行った追跡調査は、あれこれ考える材料を提供してくれる。理解を深め合い、対策を練っていく参考に役立てたい。
 初めての試みだ。一九九三年度の中学三年生で不登校を経験した約千四百人から回答を得ている。登校しなくなったきっかけや卒業五年後の状況などを調べた。詳しいデータがまとまった意義は大きい。これからの論議の土台にできる。

 結果は示唆に富む。例えば、不登校のきっかけについて、半数近くが「友人関係」と答えた。「教師との関係」も五人に一人と、学校での人間関係を挙げる例が目立つ。家庭や子供自身にだけ原因を求めるような一面的な見方はぬぐう必要がある。

 五年後の状況も関心を引く。半数以上は働いていた。学校に通う人、働きながら学ぶ人も合わせると八割弱になる。多くの人たちがつらい体験を乗り越え、社会生活を送っている。現に悩みを抱える人たちには救われる面があるのではないか。


 二〇〇〇年度、不登校の小中学生は全国で十三万四千人余を数えた。少子化が進むなかで、過去最多を更新している。調査結果を踏まえ、今後、考えたい一つは卒業後の生活を支える方策だ。これまで十分には目が向いてこなかった点である。


 不登校の時期があっても、その後に信頼できる人と出会えたり、やりがいのある仕事に就ければ、再出発の一歩につながる。不登校を一つの経験として肯定的にみる余地も生じる。調査報告は、そんな事例も紹介した。大切な視点と受け止める。

 実際は種々の困難を伴う。調査では、中学卒業後に進学した人のうち約四割は中途退学していた。中学卒業時の進路先については何らかの形で「希望通りでなかった」との回答が多い。その大半が中学校時代の不登校が影響したと考えている。
 中学卒業後の支援について六割が「あれば良い」と答えたのも、こうした事情が無縁であるまい。具体的には「技術指導」「心理相談」「出会いの場」「学習指導」といった要望が目立つ。再スタートをどう後押しするか、多角的に検討したい。

 だれもがなじめる学校になれば、それが一番である。残念ながら現実は厳しい。みんなと同じコースを外れたとしても、仕切り直ししやすい仕組みが求められる。フリースクールなどの受け皿づくりも含め、多様な取り組みを重ねることが大事だ。



いろいろ言いたいが繰り返しになるので一言に留める。
それは
家庭や子供自身にだけ原因を求めるような一面的な見方はぬぐう必要がある。
という表現に対する抗議だ。

不登校の原因は管理主義と厳しい受験体制にあるとしてきたこの20年間の「一面的な見方」に対して、まだメディアはけりをつけていない。
厳しい受験体制はなくなった。管理主義も大いに後退し、子どもたちは身勝手に飛び回っている。原因が除去されたにも関わらず結果だけが残り続けるとしたらそれはどういうことなのか。

新しい批判を起こす前に、まずそのことを清算せよ。