文部科学省は、教育支出額を今後10年間で国内総生産(GDP)の5・0%まで引き上げるという数値目標を、戦後初めて国が策定する「教育振興基本計画」に盛り込む方針を決めた。
これまで国の財政事情に配慮し、数値目標には消極的だったが、先進各国に水をあけられていることへの危機感から方針転換した。しかし、財務省は支出拡大には慎重姿勢のまま。6月にまとまる「経済財政改革の基本方針」(骨太の方針)も見据え、文科省を後押ししようと、河村建夫元文科相ら自民党文教族議員が1日午前、首相官邸を訪れ、数値目標を入れるよう要請するなど政治闘争の様相も帯びている。
文科相の諮問機関「中央教育審議会」が4月18日にまとめた教育振興基本計画の答申では、「欧米主要国と比べて遜色ない教育水準を確保すべく、教育投資の充実を図ることが必要」という文言を入れただけだった。
一転して、文科省が打ち出したGDP比5・0%という数値は、経済協力開発機構(OECD)諸国が教育支出にかけている公的資金の平均値。日本は現在3・5%で、日米の大学生を比較した場合、一人あたりの公財政支出(年間)は、日本の67万円に対し、アメリカは106万円と39万円の開きがある。
中教審の審議では「教育投資の充実は国力の維持・向上に最低限必要」(安西祐一郎慶応義塾長)といった意見が相次いだが、財務省との事前折衝で数値を入れることを拒まれて断念。自民党文教族からは「この答申では教育水準は上がらない」などと強い不満があがっていた。
文科省は財源として道路特定財源の一般財源化や税制改革に期待しており、実現すれば全国の教員も5年で2万1000人増やすことが可能になる。
しかし、4月30日に自民党議員約20人と面会した額賀財務相は「教育への投資も重要だが、投資より効果が上がる方法もあるのではないか」と慎重で、先行きは不透明だ。
GDP比3・5%というのがどれほど惨めな数字かというと、OECDの調査対象国29カ国中28位にあたる割合なのだ。これより低いのはギリシャしかない(2004年)。
先進国について言えば、ドイツ4・3%、イタリア4・4%はやはりOECD平均より低く、イギリスはちょうど平均の5・0%。アメリカ合衆国が5・1%で平均をほんの少し上回り、フランスが5・7%とかなりいい数字を出している。そして日本がよだれをたらして羨ましがるフィンランドは29か国中4位、実にGDP比の6・2%も支出しているのである。ざっと1.77倍である。
もともと教育にかける政府や国民の情熱が違うのだ。
しかし、4月30日に自民党議員約20人と面会した額賀財務相は「教育への投資も重要だが、投資より効果が上がる方法もあるのではないか」と慎重で、先行きは不透明だ。
もちろん政府も文科省も本気で取り組んでいる。
世界のブービー、先進国の中ではダントツ最下位の教育予算をもって、世界トップの学力を獲得する方法。
それは全国学力学習状況調査によって地方自治体を競わせること、
レベルの低い普通の教員の給与を削ってその分を優秀な教員に分けること、
10年後との免許更新、
学校自己評価、
教員評価
………総じて、学校と教員を叩くことによってそれは果たせるのだ。
60年以上昔、圧倒的な軍事力と経済力に勝るアメリカに戦争を仕掛けるに際し、最も期待されたのは日本人のマンパワーだった。兵士を鍛え、最前線に突き出せば、必ずアメリカに勝てるはずだった。まさか兵士が続々と死ぬなどとは、だれも考えなかった(のかもしれない)。
60年後の今、額賀財務相を始めとする政府の人々は、教師を鍛え、恐怖と報酬によって教育の最前線に突き出せば、必ず世界一になれると思っている。まさか情熱をもった教師たちが次々といなくなるとは、誰も考えていない。
都は昨年7月、ひきこもり専用の電話相談窓口を設置。今年3月までに本人や家族から寄せられた相談件数は延べ1190件で、このうち性別や居住地を申告して相談窓口の利用登録を行った対象者773人のうち、40代以上が17%、30代が29%、20代が34%、10代が12%(不明8%)だった。内容は「職場不適応」などが目立つという。
都は4月から不登校経験者や高校中退者を中心に全国初となるひきこもりを予防するための戸別訪問を実施、独自の「ひきこもり相談マニュアル」を作成するが、40代以上については「若年者層と同一にとらえることは不可能。今のところ対策は考えていないし、考えようがない」(同対策本部)と戸惑っている。
都が2月に発表したひきこもりの実態調査によると、都内のひきこもりは約2万5000人。調査対象者は「15歳以上34歳以下」で、35歳以上の統計は存在しないが、30〜34歳が全体の43%を占めており、電話相談と同様に、若年層が多いという見方を覆す傾向が出ている。
実態調査をまとめた明星大人文学部の高塚雄介教授は「若年者層のひきこもりは心理的葛藤(かつとう)が主な理由だが、40代以上は精神疾患の可能性があり、全く別物。年長者のひきこもりは昔からあり、かつては山にこもるなどしていたが、現代では家庭にこもるしかないのでは」と指摘している。
『引きこもりもすでに最高齢は30代』という報道があったのが10年近く以前。だったら
17%が40代以上で占められている
というのもまったく当然のことであり、むしろ
40代以上は「全く想定していない」
という都青少年・治安対策本部の対応の方が問題とされるべきだろう。
しかしそれ以上に問題なのは、
この40代を経済的に支えている親たちがやがて死に始めるということである。その時、この40代の引きこもりたちは公共の場に出てこざるをえない。
ただし社会性を身につけてこなかったこの人たちは、おそらく路上生活者にもなれない。そしてその時、彼らは何を選択するのだろう。私たちはどのように彼らを支えていくことになるだろう。
それが今から考えていかなければならない重要なテーマなのである。
ところで、それにしても
年長者のひきこもりは昔からあり、かつては山にこもるなどしていたが
ホントか?
私はかなりの田舎に住んでいるが、子どもの頃から現在まで山に引きこもっている男の話など聞いたことがない。
まさか平安・室町の時代の話でもあるまい。1600年ほど昔、中国では9年も壁に向かって座り込んでいたダルマ大師という引きこもりがいたという話も聞きたくない。
これまで国の財政事情に配慮し、数値目標には消極的だったが、先進各国に水をあけられていることへの危機感から方針転換した。しかし、財務省は支出拡大には慎重姿勢のまま。6月にまとまる「経済財政改革の基本方針」(骨太の方針)も見据え、文科省を後押ししようと、河村建夫元文科相ら自民党文教族議員が1日午前、首相官邸を訪れ、数値目標を入れるよう要請するなど政治闘争の様相も帯びている。
文科相の諮問機関「中央教育審議会」が4月18日にまとめた教育振興基本計画の答申では、「欧米主要国と比べて遜色ない教育水準を確保すべく、教育投資の充実を図ることが必要」という文言を入れただけだった。
一転して、文科省が打ち出したGDP比5・0%という数値は、経済協力開発機構(OECD)諸国が教育支出にかけている公的資金の平均値。日本は現在3・5%で、日米の大学生を比較した場合、一人あたりの公財政支出(年間)は、日本の67万円に対し、アメリカは106万円と39万円の開きがある。
中教審の審議では「教育投資の充実は国力の維持・向上に最低限必要」(安西祐一郎慶応義塾長)といった意見が相次いだが、財務省との事前折衝で数値を入れることを拒まれて断念。自民党文教族からは「この答申では教育水準は上がらない」などと強い不満があがっていた。
文科省は財源として道路特定財源の一般財源化や税制改革に期待しており、実現すれば全国の教員も5年で2万1000人増やすことが可能になる。
しかし、4月30日に自民党議員約20人と面会した額賀財務相は「教育への投資も重要だが、投資より効果が上がる方法もあるのではないか」と慎重で、先行きは不透明だ。
GDP比3・5%というのがどれほど惨めな数字かというと、OECDの調査対象国29カ国中28位にあたる割合なのだ。これより低いのはギリシャしかない(2004年)。
先進国について言えば、ドイツ4・3%、イタリア4・4%はやはりOECD平均より低く、イギリスはちょうど平均の5・0%。アメリカ合衆国が5・1%で平均をほんの少し上回り、フランスが5・7%とかなりいい数字を出している。そして日本がよだれをたらして羨ましがるフィンランドは29か国中4位、実にGDP比の6・2%も支出しているのである。ざっと1.77倍である。
もともと教育にかける政府や国民の情熱が違うのだ。
しかし、4月30日に自民党議員約20人と面会した額賀財務相は「教育への投資も重要だが、投資より効果が上がる方法もあるのではないか」と慎重で、先行きは不透明だ。
もちろん政府も文科省も本気で取り組んでいる。
世界のブービー、先進国の中ではダントツ最下位の教育予算をもって、世界トップの学力を獲得する方法。
それは全国学力学習状況調査によって地方自治体を競わせること、
レベルの低い普通の教員の給与を削ってその分を優秀な教員に分けること、
10年後との免許更新、
学校自己評価、
教員評価
………総じて、学校と教員を叩くことによってそれは果たせるのだ。
60年以上昔、圧倒的な軍事力と経済力に勝るアメリカに戦争を仕掛けるに際し、最も期待されたのは日本人のマンパワーだった。兵士を鍛え、最前線に突き出せば、必ずアメリカに勝てるはずだった。まさか兵士が続々と死ぬなどとは、だれも考えなかった(のかもしれない)。
60年後の今、額賀財務相を始めとする政府の人々は、教師を鍛え、恐怖と報酬によって教育の最前線に突き出せば、必ず世界一になれると思っている。まさか情熱をもった教師たちが次々といなくなるとは、誰も考えていない。
東京都が開設したひきこもり電話相談の対象者のうち、17%が40代以上で占められていることが5日、都青少年・治安対策本部の集計でわかった。都は15〜34歳の若年者層を対象にひきこもり対策を進めているが、40代以上は「全く想定していない」(同対策本部)と困惑気味。対象者のうち30〜40代以上と10〜20代の割合も同じで、若年層に多いといわれるひきこもりが、実際には“高齢化”していることが浮き彫りとなっている。
2008.05.05
高齢化”するひきこもり 40代以上も
都への相談で判明
[産経新聞 5月5日]
都は昨年7月、ひきこもり専用の電話相談窓口を設置。今年3月までに本人や家族から寄せられた相談件数は延べ1190件で、このうち性別や居住地を申告して相談窓口の利用登録を行った対象者773人のうち、40代以上が17%、30代が29%、20代が34%、10代が12%(不明8%)だった。内容は「職場不適応」などが目立つという。
都は4月から不登校経験者や高校中退者を中心に全国初となるひきこもりを予防するための戸別訪問を実施、独自の「ひきこもり相談マニュアル」を作成するが、40代以上については「若年者層と同一にとらえることは不可能。今のところ対策は考えていないし、考えようがない」(同対策本部)と戸惑っている。
都が2月に発表したひきこもりの実態調査によると、都内のひきこもりは約2万5000人。調査対象者は「15歳以上34歳以下」で、35歳以上の統計は存在しないが、30〜34歳が全体の43%を占めており、電話相談と同様に、若年層が多いという見方を覆す傾向が出ている。
実態調査をまとめた明星大人文学部の高塚雄介教授は「若年者層のひきこもりは心理的葛藤(かつとう)が主な理由だが、40代以上は精神疾患の可能性があり、全く別物。年長者のひきこもりは昔からあり、かつては山にこもるなどしていたが、現代では家庭にこもるしかないのでは」と指摘している。
『引きこもりもすでに最高齢は30代』という報道があったのが10年近く以前。だったら
17%が40代以上で占められている
というのもまったく当然のことであり、むしろ
40代以上は「全く想定していない」
という都青少年・治安対策本部の対応の方が問題とされるべきだろう。
しかしそれ以上に問題なのは、
この40代を経済的に支えている親たちがやがて死に始めるということである。その時、この40代の引きこもりたちは公共の場に出てこざるをえない。
ただし社会性を身につけてこなかったこの人たちは、おそらく路上生活者にもなれない。そしてその時、彼らは何を選択するのだろう。私たちはどのように彼らを支えていくことになるだろう。
それが今から考えていかなければならない重要なテーマなのである。
ところで、それにしても
年長者のひきこもりは昔からあり、かつては山にこもるなどしていたが
ホントか?
私はかなりの田舎に住んでいるが、子どもの頃から現在まで山に引きこもっている男の話など聞いたことがない。
まさか平安・室町の時代の話でもあるまい。1600年ほど昔、中国では9年も壁に向かって座り込んでいたダルマ大師という引きこもりがいたという話も聞きたくない。