息子が通う中学校の校長に暴行し、けがを負わせたとして広島県警は6日、同県府中市栗柄町、同市職員の宮岡忍容疑者(57)を傷害容疑で逮捕した。容疑を一部否認しているという。
県警によると、宮岡容疑者は9月25日午後9時過ぎ、自宅の居間で校長の男性(58)に対し、尻をけったり引きずり倒したりする暴行を加え、打撲などのけがを負わせた疑いがある。宮岡容疑者は「子どものことで頭にきた」と話す一方、「尻はけっていない」と話しているという。
同市などによると、宮岡容疑者は7月中旬、息子が学校で他の生徒から暴言を吐かれたなどとし、それ以降、学校側に数回説明を求めた。9月25日午後7時ごろ、校長と教頭ら4人が宮岡容疑者宅を訪れて2時間ほど事情を説明したところ、帰り際に暴行を受けたという。
学校も親を警察に訴えることがある、といったニュースかと思うが、訴えられた方が市職員なら訴えた方も市教委に管轄される学校職員なのだから、なんだかできレースのようなものだ。
これが民間人相手だったら、こうもやすやすと訴えられなかったかもしれない。
さて、記事だけで本当のことは分からないが、事の発端は
息子が学校で他の生徒から暴言を吐かれたなど
である。
そんなことは、学校では日常茶飯事だ。
男の子の世界である。この程度のことで親が出て行ったらとんだ恥さらしだ・・・と、昔の人なら考えた。
しかし今は違う。
子どもが暴言をはかれたかどうかは、校長・教頭をはじめとするいい年をした首脳が4人、雁首をそろえてに出かけ、2時間も説明しなければならないこと
なのだ。
学校は今、こんな状態にある。
それで学力を上げよ、道徳教育を充実させよと言ったって、どこにその余裕があると言うのか。
笑止千万である。
2008.10.11
【集う】「道徳教育をすすめる有識者の会」発足記念の集い
(8日、東京都港区の虎ノ門パストラルホテル)
[産経新聞 10月9日]
「道徳教育をすすめる有識者の会」発足記念の集いで講演する義家弘介氏。(右端から市田ひろみ氏、松平康隆氏、左端は渡部昇一氏)=8日午後、東京都港区虎ノ門(撮影・荻窪佳)
日本人は何を失ってしまったのかを確認する2時間だった。
「感動できる美しい話を子供に伝え、『徳目』を教えることが道徳教育だ」。会の代表世話人である渡部昇一・上智大名誉教授は、会場を埋めた約500人の参加者にそう呼びかけた。
子供を一人前に育てるには何が必要か。現在の道徳教育にはしつけや人生訓、生きる指針が欠けていると訴えた。だからこそ、平成22年秋をめどに中学生向けの道徳教科書を作成し市販すると意気込みをみせた。
会には保守系の有識者約160人が世話人や賛同者に名を連ねる。この日も、岡崎久彦・元駐タイ大使や中山成彬・前国土交通相、石井公一郎・元ブリヂストンサイクル社長、漫画家のさかもと未明さんと多士済々がそろった。安倍晋三元首相からも会の発足を祝うメッセージが寄せられた。
3人のパネリストは三者三様の道徳観を披露。「ヤンキー先生」として知られる義家弘介参院議員は、携帯電話の登場以降、子供は有害な情報に直接さらされていると指摘。「道徳は子供を健全に育て、守るためのもの」と語った。日本バレーボール協会名誉会長、松平康隆氏も「今の日本はルールさえ守られていない」と厳しい。
ともすれば重くなるムードを和らげたのは服飾評論家、市田ひろみさん。「昔は親だけやなく、近所のおっちゃんも怖かったもんです」とはんなり話し、笑いを誘った。それでも「今の子供ががまんできないのは親が教えないから。道徳は人に迷惑をかけない生き方のルール」と引き締めた。
誰の言葉からも日本人の心の荒廃への危惧(きぐ)がのぞく。コーディネーターの八木秀次・日本教育再生機構理事長は「日本人の劣化」と表現、「社会を建て直すには学校の道徳教育から始めるしかない」と締めくくった。(福田哲士)
先生が言えば子どもは何でもいうことをきくと、本気で信じている人がたくさんいる。
「先生! 学校は、なぜ勉強の大切さを教えないんですか?」
「学校は、イジメがいけないことだと、なぜ教えないんでしょう?」
は、みな、そういう人たちの言葉だ。
先生が言えば子どもは何でもいうことをきく。それなのに子どもが勉強の大切さが分かっていなかったり、いじめがなくならないのは、きっと教えないからに違いない、そう信じて疑わないのだ。無邪気なものである。
「道徳教育をすすめる有識者の会」のおっちゃんやにいちゃんの頭にあるものも、こうれとまったく同じだ。
先生が言えば子どもは何でもいうことをきく。それなのに
今の日本はルールさえ守られていない
のは、きっと
現在の道徳教育にはしつけや人生訓、生きる指針が欠けている
からにちがいない。だからこそ、
中学生向けの道徳教科書を作成し市販する
自分たちの好みに合う教科書をつくって、それを先生がきちんと教えれば「日本人の劣化」は防げると信じているのだ。
前述の「勉強の大切さ」や「イジメが悪いことだと分かっていない」子どもの母親たちに、私はこんなふうに答える。
「もちろん教えています。しかし教えても身につく子とつかない子がいるのです。それは漢字やかけ算九九を教えても、忘れてしまう子がいるのと同じです」
すると母親たちはキョトンとした表情になる。
同じことを「道徳教育をすすめる有識者の会」の人々に言ったらどう反応するだろうか?
さて、
映画「マトリックス」のモーフィアスは「道を知っていることと歩くことは違う」と言った。
歌謡「スーダラ節」で植木等は「分かっちゃいるけど、やめられない!」と歌った。
それが人間だ。分かっていてもできない、道を知っていても、生活の中に生かすことができない、それが人間なのだ。
では、そんな「人間」に、分かっていることをやめさせ、知っている道を歩ませるためには、どうしたらよいのか。
答えは簡単である。具体的活動を通して経験していくしかないのだ。
子どもたちは、週一時間の「道徳」の時間で、「かく、ありたい」自分の姿を学ぶとともに、学校生活全体をつかって、経験的に学んでいく。
清掃を通して奉仕や忍耐を、係や班、当番や委員会の活動を通して社会の仕組やルールを、運動会や文化祭を通して大きな仕事を成し遂げる喜びを学んでいくのである。日本の学校には、そうした仕組みが山ほどある。
ただし、今やそうした学校の機能は、社会から見捨てられようとしている。そんなことより15分間のモジュラー授業(ドリル学習)の方が絶対大事だと信じる知事がいる。
総合的な学習の時間といった子どもの活動より、理数の授業時間増、成績アップの方が大切だと考える人たちがいる。
「社会を建て直すには学校の道徳教育から始めるしかない」と本気で考えるなら、少なくとも(今は担任が片手間にやっている)「道徳」を教科担任制にし、専門の教員をおくとともに、地域に奉仕活動に出かけたり地域の人々と働いたりするための予算、あるいはさまざまな教材を購入するやめの予算くらいはつけなくてはならない。
金で解決できることは金で押さえておかねばならないとおもうのだが、政府・国会議員のだれもそんなことはしようとしない。
彼らのやることと言えば、
『金は絶対に出さない! オレの作った教科書を使えば、日本は絶対に良くなる!』
そう叫んで旗をふるくらいのことだけだ。
滑稽なことである。
2008.10.12
ノーベル賞に沸くが…日本の大学、トップ10入りなし
[朝日新聞 10月10日]
英タイムズ紙別冊高等教育版などは9日、08年世界トップ200大学を発表した。日本からは東京大の19位が最高で、100位以内には4校。ノーベル賞の4人受賞にわく日本だが、大学では米英に水をあけられているようだ。
04年から始め、研究者による評価、論文の引用数など研究力を中心に、教育力、企業からの評価、留学生比率などで総合ランクを付けている。1位は米ハーバード、2位は米エール、3位は英ケンブリッジで、20位までに米国が13校、英国が4校入った。
日本勢では東大のほか京都が25位、大阪が44位、東京工業が61位。トップ200入りは計10校で昨年より1校減った。先日発表された上海交通大学高等教育研究所のランキングでも、100位以内は東大、京大、阪大、東北大の4校だった。
政府の教育再生会議は昨年6月の第2次報告で、10年以内に、国際ランキングで日本の大学が上位30校に5校は入ることを目指すとしている。
ノーベル物理学賞受賞者の江崎玲於奈・茨城県科学技術振興財団理事長は「欧米の大学では研究者は実力で評価される。研究力の違いが、ランキングにも反映したのではないか」と話している。(杉本潔)
■日本の大学の順位(英タイムズ紙別冊高等教育版などの「08年トップ200大学」から)
東京(19)、京都(25)、大阪(44)、東京工業(61)、東北(112)、名古屋(120)、九州(158)、北海道(174)、早稲田(180)、神戸(199)
残念な数字である、とでも言いたげな記事である。しかし日本の悪口を言い弱点を声高に叫ぶことがマスメディアの仕事だといったやりかたは、もういい加減にしてほしい。
わが東大(別に出身者でもないけど)が19位であろうと京大が25位であろうと、それが何ほどのことか。
そもそも「世界大学ランキング」というのがどういうものか、マスメディア諸氏は分かっているのだろうか?
「欧米の大学では研究者は実力で評価される。研究力の違いが、ランキングにも反映したのではないか」
とは、江崎さんも科学者らしくないことをおっしゃる。
素人の私だって、何かを言うときは、少しくらいは調べてから言おうとするものだ。
さて、最新版が見当たらないので昨年のもので申し訳ないが、2007年度の世界十傑と日本国内十傑は次のようになっている。
【世界十傑】
順位 |
大学名 |
PR |
REC |
SFR |
CIT |
INTF |
INTS |
TOT |
1 |
ハーバード大 |
100 |
100 |
100 |
96 |
93 |
91 |
100 |
2 |
ケンブリッジ大 |
100 |
100 |
99 |
83 |
98 |
91 |
97.6 |
2 |
オックスフォード大 |
100 |
100 |
100 |
82 |
97 |
96 |
97.6 |
2 |
エール大 |
100 |
98 |
100 |
91 |
84 |
75 |
97.6 |
5 |
ロンドン大学インペリアルカレッジ |
99 |
99 |
100 |
81 |
98 |
100 |
97.5 |
6 |
プリンストン大 |
100 |
94 |
95 |
97 |
83 |
75 |
97.2 |
7 |
カリフオルニア工科大 |
100 |
55 |
100 |
100 |
100 |
91 |
96.5 |
7 |
シカゴ大 |
100 |
97 |
100 |
86 |
71 |
90 |
95.3 |
9 |
ロンドン大学ユニバーシティカレッジ |
96 |
97 |
100 |
82 |
91 |
98 |
94.6 |
10 |
マサチューセッツ工科大 |
100 |
99 |
85 |
98 |
34 |
94 |
94.5 |
【国内十傑】
順位 |
大学名 |
PR |
REC |
SFR |
CIT |
INTF |
INTS |
TOT |
17 |
東京大学 |
100 |
92 |
96 |
88 |
25 |
44 |
91.1 |
25 |
京都大学 |
99 |
89 |
83 |
90 |
29 |
24 |
87.2 |
48 |
大阪大学 |
83 |
75 |
88 |
91 |
17 |
29 |
80.0 |
90 |
東京工業大学 |
67 |
86 |
59 |
91 |
34 |
42 |
70.5 |
102 |
東北大学 |
53 |
59 |
96 |
84 |
40 |
32 |
68.0 |
112 |
名古屋大学 |
53 |
74 |
83 |
85 |
25 |
30 |
66.1 |
136 |
九州大学 |
50 |
68 |
80 |
82 |
17 |
31 |
62.8 |
151 |
北海道大字 |
49 |
69 |
76 |
82 |
19 |
21 |
61.1 |
161 |
慶應義塾大学 |
52 |
88 |
91 |
45 |
25 |
16 |
59.9 |
180 |
早稲田大字 |
68 |
92 |
64 |
25 |
26 |
23 |
57.7 |
その指標であるPRとかRECとかが、何を意味するかというと、次のようである。
PR …Peer review score 研究者の評価 40%
REC…Recruiter Review score 雇用者の評価 (採用したい学生の出身大学) 10%
「どの大学の学生を自分の組織の一員として採用したいか」という質問の回答1482件より評価。
SFR…Student Faculty Ratio 教員数と学生数の比率 20%
CIT…Citations per Faculty 教員一人あたりの被論文引用件数 20%
INTF…International Faculty Ratio 外国人教員比率 5%
INTS…International students Ratio 外国人学生比率 5%
TOT…最終評価
このことを知って改めて見てみると、日本の大学が決定的に劣っているのはSFRとINTFそしてINTSであることが分かる。
この三つさえ改善すれば、大阪大学くらいまでが世界ランキング10位以内に入ってくる可能性がある。つまり、
教員の数を増やし(しかも高給と高額の研究費でできるだけ外国人教員を釣り上げ)、留学生に強力な便宜を与えれば、あっという間に日本の大学のランキングはアップする
はずなのだ。
さらに、出身大学を問わない傾向を深める現在の企業の採用傾向に歯止めをかけ、出身大学を指定する方針を企業に求めれば、REC(雇用者の評価:採用したい学生の出身大学)もアップする。
しかしそれだけでは十分ではない。
そのことは東大が19位に転落した2008年版「世界大学ランキング」のトップ20を調べてみれば分かる。
それによると大学の国別内訳は、
アメリカ合衆国 13大学
イギリス 4大学
オーストラリア 1大学
日本 1大学(東大)
カナダ 1大学。
その下にアメリカ、イギリス、イギリス、スイス、日本(京大)と続く。
つまり、20位以内に非英語圏の大学は東大ひとつしかなく、25位まで下ってもスイス大学、京大が加わるのみである(さらにその下はホンコン、アメリカ、フランス、イギリス、シンガポール)。
日本語で講義をしている限り、外国人講師も留学生も集まってくるはずはなく、外資系企業も進んで採用しようとは思わないだろう。研究論文も最初から英文で書かれるべきである。
日本語で聞き日本語で答えられる現在の大学を、私は好ましく思っている。しかし東大ですらランキングを下げる現状を憂えるなら、それもすべて捨ててしまうといいだろう。
日本の全大学が英語で講義するようになれば、世界ランキングは飛躍的にアップするはずだ。
朝日新聞記者氏とともに、是非そのことを社会に訴えていこう。
* 時事通信によれば、同じ「タイムズ・ハイヤー・エジュケーション・サプリメント(THES)」で
日本の総合的な高等教育力は世界6位
だそうである。
かなり良い数字だと思うが、こうした素晴らしい数字については、各メディアはほとんど扱おうとしない。
2008.10.17
<教員>「教頭から教諭へ」など希望降任が過去最多106人
[毎日新聞 10月17日]
07年度に自ら望んで教頭などから降任した公立学校の教員は、過去最多の106人(前年度比22人増)に上ったことが、文部科学省の調査で分かった。一方、生徒と信頼関係が築けないなどとして「指導力不足」と認定された教員は3年連続で減少し、371人(同79人減)だった。
47都道府県と17政令市の64教育委員会を調べた。希望降任制度があるのは59教委。降任の内訳は、教頭から教諭が70人と最多で、校長から教頭が1人、校長から教諭が4人、その他(主幹教諭から教諭など)が31人だった。39教委しか制度を設けていなかった03年度は計66人で、制度の普及もあり4年間で約1.6倍に増えた。
理由は「健康上の問題(精神疾患含む)」が53%、「職務上の問題」が27%など。文科省は「主幹教諭に業務が集中するなど、割り振りがうまくいっていないケースがある」としている。
指導力不足教員は小学校193人、中学校88人、高校62人など。在職20年以上のベテランが228人と61%を占めた。06年度からの継続認定が241人で、07年度に新たに認定されたのは130人(前年度比82人減)。文科省は減少の理由に、学校で予防的研修を行うなど早期対応の取り組みが進んだことなどを挙げた。
指導力不足教員のうち07年度に研修対象となったのは268人。うち87人が現場復帰したが、依願退職85人、免職5人、他職種への転任2人の計92人が現場を離れた。休職は16人。定年退職と育児休業が各1人で、71人が研修を継続している。
また、試用期間(1年)の後で正式採用とならなかったのは過去最多の301人(前年度比6人増)。うち293人(同12人増)が依願退職し、103人(同19人増)は病気が理由。死亡した5人のうち1人は自殺だった。【加藤隆寛】
かなり若い頃、とても尊敬していた先輩教師に「校長になりたいと思ったことありますか?」と尋ねたことがある。教育に全情熱を傾けているような人なので、当然「思ったことはない」という返事を期待してのことだった。
ところが意外なことに、
「思いますよ、今だって。だって、自分の教育理念を十全に発揮しようと思ったら校長になるしかないじゃないですか」
私はなるほどと思った。そして、そういうことなら校長になってもいいな、とも思った。
世の中にはさまざまな教員がいるからとんでもない思い違いをした校長もいると思うが、校長になりたいという欲望のひとつは、これである。そうした欲望に従えば、教頭、副校長といった殺人的な仕事にも耐えられた。しかし、今は違う。
現在の校長というのは自分の理念で学校を運営するようにはできていない。文科省、教委、保護者、地域といった外部からの圧力に激しく揺すられ、説明と弁明に明け暮れる毎日、そんな職に堕してしまった。
教員を指導しろ指導しろと言われるたびに一般職との間の溝は広がり、次々押し寄せる無理難題を(かなり薄めて)下におろすと、ただ憎まれる。まったく割に合わない仕事なのだ。
校長職に魅力がなければ、つらい教頭職に耐えられるはずがない。希望降任制度をつかって教諭に戻る教頭・副校長はこれからも増え続けるだろう。
ところで、
東京都を含むいくつかの自治体は、その副校長・教頭の下にさらに主幹教諭を置いて、校長になるためのハードルをふたつにしてしまった。当然なり手はいない。
平成19年度の資料によると、東京都の主幹教諭は、小中学校で4551人の必要に対して3199人。わずか70.1%の充足率である。平成16年から始まって19年度には100%になるはずだった計画が頓挫したのは、言うまでもなく希望者が少なかったからだ。その競争率、わずか1.1倍。しかも募集人員900名に対して577人の応募しかなく(18年度は1000名募集だったのを減らした)、全員を合格にするわけにもいかないので532人だけを合格にしてようやく競争率1倍を確保したのである。
教職というのは、もともと出世して金持ちになろうという人は選ばない職業である。そうした人たちの目の前に、何の魅力もなくなった校長や教頭をぶら下げても誰も飛びつかないばかりか、どんどん辞めてしまう。
東京都では高校に続いて小中学校でも副校長不足が深刻になってきたと聞く。しかしマスコミは、ほとんど危機感を持っていない。
2008.10.18
「指導力不足」先生371人も、8割が40〜50歳代
[読売新聞 10月18日]
授業や学級運営ができず、各地の教育委員会から昨年度中に「指導力不足」と認定された公立学校の教員が371人いたことが17日、文部科学省のまとめで分かった。
教員としての適性に疑問符のついたケースが目立ち、8割を40〜50歳代が占めた。
文科省によると、371人の7割は男性で、40歳代が46%、50歳代が37%だった。85人は依願退職したという。
指導力不足と認定された理由は「生徒の反応を確かめずに一方的に授業を進めていた」「板書が乱雑で筆順の間違いが多い」−−など適性を疑われるものが目立った。ベテランが多い理由について、同省は「詰め込み式の授業で何とかしのいできた教員が、考えさせる授業への転換といった環境の変化に対応できなくなっている表れでは」と分析している。
確かに20代後半から30代の教員は平成不況のすさまじい競争を勝ち抜いてきた人たちだから優秀なのは間違いない。しかし教員の仕事は基本的に職人芸であり、多少制度が変化したところで、そう簡単に環境の変化に対応できなくなっているなどといったことはないはずだ、というのが私の直感である。
それにしても、大学出たてのほやほやができる仕事が、なぜ40代・50代に出来ないのか・・・そう考えているうちふと思い出すことがある。昨日の毎日新聞の記事だ。
また、試用期間(1年)の後で正式採用とならなかったのは過去最多の301人(前年度比6人増)。うち293人(同12人増)が依願退職し、103人(同19人増)は病気が理由。死亡した5人のうち1人は自殺だった。
指導力不足教員は371人だが、それに近い301人もの新人教員が正式採用にならずに捨てられている。
つまりそういうことである。20代30代の教員は、すでに選別を受けている世代なのだ、だから指導力不足教員が少ない。
職人の世界で古い人間はダメだと言ったらその世界は終わる。
文科省もマスメディアも、自分のしていることを知らないのかもしれない。
2008.10.19
新人教員300人、教壇去る
5年で2.7倍、07年度
[朝日新聞 10月18日]
採用されて教壇に立ったものの、1年のうちに学校を去った新人教員が301人に及ぶことが17日、文部科学省の07年度の調査でわかった。5年前の2.7倍に増えており、うち3人に1人が精神疾患を中心にした「病気」を理由にしていた。文科省は「教育現場を取り巻く環境が厳しくなっているのが一つの要因」としている。
教員は最初は「条件付きの採用期間」で、1年後に正式に採用される。07年度の調査では、全採用者2万1734人のうち1.4%の計301人が依願退職などで1年のうちに学校を去った。5年前は111人(0.6%)で増加ぶりが目立つ。原因をみると「病気」という人が103人で、5年前の10人から10倍以上に急増。このほか、自己都合、理由不明などを合わせた「その他」が178人いた。
文科省によると、病気で辞めた人の多くがストレスから来る神経症やうつなどの精神疾患だという。1年目から担任を持って対応しきれず追いつめられたケースや、親や社会のニーズが複雑化している中でうまく適応できないケースがあるという。
一方、子どもたちと適切な関係が築けないなどとして都道府県や指定市の教育委員会から「指導が不適切」と認定された07年度の教員の数は371人。認定されると教壇を離れて研修を受けねばならないが、こちらはピークだった04年度(566人)から減少傾向にある。ただし、文科省は実際の人数が減ったとはみておらず「先手を打って市町村教委や学校が独自の研修などをすることが多くなった」と分析している。(上野創)
他にももっと離職率の高い職業はある、といったふざけたことを言う人がいたら殴り倒す。教員は特別なのだ。
彼らは教師になるために苦労して大学に進み、そこで何年も専門の勉強をしてきた人たちだ。採用試験も難しいところでは今も30倍近い。そのため何年も繰り返し試験を受けてきた人たちがいる。その志ある若者が、300人もこの世界を去っている。しかもそのうち100人あまりもが「病気」による退職なのだ。
その恐ろしさ、その不幸を、なぜメディアは大きく扱わないのか。
病気で辞めた人の多くがストレスから来る神経症やうつなどの精神疾患だという。1年目から担任を持って対応しきれず追いつめられたケースや、親や社会のニーズが複雑化している中でうまく適応できないケースがあるという。
その重みを、なぜ取材しないのか。
100人の校長・教頭が希望降任のステージにのぼり、300人のベテラン教員が「指導力不足教員」として消され、300人が本採用とならず300人の若者が自ら消えているのだ。
こうした話を聞くたびに
「フリーメイソンが陰謀によって日本を潰そうとしている。その手始めにマスコミを手なずけ、日本の教育を潰そうとしている」といったヨタ話が、本当のことのように思われてくる。