緊急報告・荒れる中学:(その2)誰が指示?「出席停止」実現せず

 ◇現場と教委、食い違い 

 

 苦境を察し「大変そうですね」と声をかけると、校長はうめくように言った。「出席停止について教育委員会に話しているが、取り合ってくれない」

 出席停止。教育委員会は、校長の具申書提出を受けて学習支援などを前提に、生徒の登校を拒むことができる。この町の場合、教育長を含む教育委員5人の合議で決まる。

 出席停止の要望は、受験まで半年を切っていた昨年秋の保護者集会で既に出ていた。授業妨害はエスカレートし、早退や欠席する女子生徒も増えていた。校長は「生徒を悪い方向に行かせたくない」と訴えたが一方、「最終的には検討しなければならないかも」と話した。12月の保護者集会でも、父親の一人が「出席停止の措置もあるのでは」と、校長に決断を促した。

 「生徒全員が自分のクラス」。全生徒の名をそらんじ毎朝、校門前で出迎えた校長もこのころから不眠を訴えるようになった。この時期、教委に再三足を運び、出席停止を相談した形跡がある。

 だが、ある保護者は学校関係者から、教委幹部が保護者集会の直前に職員室で「出席停止はできない」と言い渡したと聞かされた。ある教諭も「教委が止めたのは間違いない」と語る。

 一方、教委の話は正反対だ。教育長は「校長は数人の出席停止を検討していた」と認めたが「出席停止はだめだと言ったことは一切ない。むしろ、私の方が検討を促していた」。

 授業妨害を繰り返した生徒の保護者のうち、指導に応じたのは半数程度という。「(変形服は)似合うからいいだろう」「うちに問題があるというのか」。学校側に食ってかかる親もいた。

 孤立を深めた校長は2月6日から病欠。通院していた教頭も同25日、自宅療養となった。

 その日開かれた緊急の保護者会。事態の深刻さを悟った教育委員会は、たまり場となっていた美術準備室について「生徒の私物を片付け、閉鎖する」と告げた。

 「おれのものをどこへやったんか」。2人の生徒は怒鳴り、職員室や校長室に乱入し、暴れたことが逮捕容疑になった。

 そして3年生最後の行事、卒業式。元生徒会長が答辞を述べた。「学校や先生、教育委員会、PTAに裏切られた」。事前に学校側の誰も知らなかった内容が体育館に響いた。あっけにとられたのか、会場は静かだったという。「言わせた方も言った方も異常、そして聞いた方も異常。卒業式が無事に終わったこと自体、不思議ですよ」。ある教師は力なく語った。(その3に続く)