キース・アウト (キースの逸脱) 2009年10月 |
by キース・T・沢木
サルは木から落ちてもサルだが、選挙に落ちた議員は議員ではない。 政治的な理想や政治的野心を持つ者は、したがってどのような手段を使っても当選しておかなければならない。 落ちてしまえば、理想も何もあったものではない。 ニュースは商品である。 どんなすばらしい思想や理念も、人々の目に届かなければ何の意味もない。 ましてメディアが大衆に受け入れられない情報を流し続ければ、伝達の手段そのものを失ってしまう。 かくして商店が人々の喜ぶものだけを店先に並べるように、 メディアはさまざまな商品を並べ始めた。 甘いもの・優しいもの・受け入れやすいもの、本物そっくりのまがい物のダイヤ。 人々の妬みや個人的な怒りを一身に集めてくれる生贄 。 そこに問題が生まれれば、今度はそれをまた売ればいいだけのことだ。 |
2009.10.09
東大、アジアのトップ守る=首位はハーバード大
−世界大学ランク
[時事通信 10月8日]
【ロンドン時事】英大学情報誌タイムズ・ハイアー・エデュケーション(THE)と教育情報会社QSは8日、2009年の世界大学ランキングを発表した。1位は前年に続き米ハーバード大。日本の大学では、東京大が前年の19位から22位に順位を落としたものの、アジアのトップを維持した。
ランキングは、世界の大学研究者の相互評価や論文の引用回数などの指標を点数化し、大学の総合力を評価。2位は前年3位の英ケンブリッジ大、前年2位の米エール大が3位だった。
日本の大学では東大のほか、京都大が25位(前年25位)、大阪大が43位(同44位)、東京工業大が55位(同61位)にランクイン。また、名古屋大(92位)と東北大(97位)が新たに100位内に食い込み、日本勢は6校となった。
昨年もこの話題をあつかったがその時の見出しは
「ノーベル賞に沸くが…日本の大学、トップ10入りなし」
であった。今年の見出しはそれよりはマシだが、「アジアのトップ守る」ではまだ足りない。
我が東大(別に卒業生でもないが)の実力はそんなものではない。ここにおくべき見出しは
「東大は、英語で授業を行わない大学で最高位!」なのだ。
「2009年の世界大学ランキング」の20位以内(同率20位を含めて21大学)には、英語以外で授業を行う大学はひとつもない(チューリッヒ工科大を含む)。
21位の東大が非英語のトップで、以下50位まで拾い出すと京大(25位−日本語)、パリ高等師範学校(28位−フランス語)、エコール・ポリテクニク(36位―フランス語)、大阪大学(43位―日本語)、ソウル大学(47位―韓国語)、精華大学(49位―中国語)となる。実に7大学しかないのだ。
言語別に並べるとトップ50位以内に英語43、日本語3、フランス語2、韓国語・中国語それぞれ1ということになる。
なぜこれほど英語圏の国のランクが高いかというと、評価項目の中に、「教員一人あたりの被論文引用件数 20%」「外国人教員比率 5%」「外国人学生比率 5%」というものがあるからである。
日本語や中国語で授業をやっている限りは、これらの比率は上がりようがない。
ちなみにトップ100に入った大学を国別に分けると、アメリカ32、イギリス18、オーストラリア8、日本6、スイス・オランダ・ドイツ・カナダ4、ホンコン3、スウェーデン・韓国・シンガポール・フランス・デンマーク・中国2、などとなる。
いかに日本の大学が優秀か分かるだろう。
マスコミ諸君、こういうことを書かなくちゃ!
2009.10.10
「校長」募集に中高年サラリーマンら殺到
…横浜市
[読売新聞 10月10日]
横浜市教委は9日、今年度の民間人校長の募集に、昨年度52人の3倍を超える186人の応募があったと発表した。
募集を始めた2004年度以降では最多で、市教委は「長引く不況で、安定した公務員に魅力を感じる人が増えたのでは」と分析する。
市教委によると、募集は8月20日から9月27日までで、対象は40〜59歳の民間企業での管理職経験者。応募した186人の平均年齢は49・9歳だった。
職種別では、IT・製造業の52人が最も多く、次いでサービス・販売26人。昨年はなかったコンサルティング(12人)や医療・福祉関係(8人)、マスコミ(8人)などからも応募があり、市教委の担当者は、「昨年の応募者を上回ればと思っていたが、これほど来るとは」と驚いた様子。
書類選考の後、11月〜12月にかけて2回の面接を行い、5人程度の民間人校長を採用する予定だ。
この制度が始まって10年以上たつが、場所によっては教頭を二人にしてまでも支えてきた民間人校長にどのような教育効果があったのか、そろそろ検証があっても良い時期かと思う。しかし、これといった話がないのはなぜだろう?
民間人校長の導入というのは、裏を返せば「生え抜きではダメだ」ということである。教員の意欲をかくも深く傷つけて行うことである以上、ただ「やって見ました」では済まないはずだが、これについて横浜市教委の真摯な説明を聞きたい。
さて、今回の応募者象増加について、
市教委は「長引く不況で、安定した公務員に魅力を感じる人が増えたのでは」と分析する。
などと呑気なことをいっているようである。単なる新規採用ではない。
ひとつの学校のトップに立とうという人である。
法律で「学校は、〜することができる」とあったらほとんどは「学校長は〜」と読み代えるように、校内では格段の権限を持った存在が校長なのだ。
それが
安定した公務員に魅力を感じる人が増えた
で、いいのだろうか?
平均年齢は49・9歳
年齢的には今まさに組織のトップを狙おうというときである。
サービス・販売、コンサルティング、医療・福祉関係、マスコミ・・・
それぞれの世界のトップエリートに来てもらいたいものである。
ゆめゆめ「その世界でやっていけなくなった人たち」の再就職の場にならないことを願う。
(たぶん、そうなるけど)
2009.10.17
学力テスト4割抽出に=県別傾向探る
−文科省
[時事通信 10月15日]
小学6年と中学3年を対象にした全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)について、文部科学省は15日、2010年度は4割を抽出して行うと発表した。学年全員参加を取りやめる一方、都道府県別の学力水準や学習習慣の傾向を探ることを前提に抽出率を決めた。
文科省によると、全国から約40%の学級が参加するよう、県別のバランスも考慮した上で抽出し、学力テストを実施する。対象から漏れた学校も、市町村教育委員会などが希望すれば問題や質問用紙を配布し、自己採点できるようにする。
教科は従来通り国語、算数・数学。10年度予算の概算要求では、実施費用と11年度以降の教科追加などを検討する調査費として計36億円を計上した。
さて、この10行に満たない短い記事の、どこに人々は注目するだろう?
4割抽出
だろうか、
学年全員参加を取りやめ
だろうか、それとも、
調査費として計36億円
だろうか?
しかし教員の多くは、間違いなく、
市町村教育委員会などが希望すれば問題や質問用紙を配布し、自己採点できるようにする
に注目するだろう。この文の意味するところがありありと思い浮かぶからである。
すでに私たちの学校にも市から意向調査が来ているが、ここで学校が望むと望まないとにかかわらず、市は市内全小中学校での実施を希望するに違いない。必ず希望する。
理由は二つ。
ひとつには、市町村は子の3年間、外にはもらさない学校別成績の数字を使い、平均点の低い学校には圧力を掛け続けたからである。その基礎資料となる悉皆テストの結果は、ぜひともなくてはならない。
第二に、全国学力学習状況調査の結果は、
成績が悪ければ、もっと予算を増やせ、
成績が良ければ、だから現状の予算を維持せよ、
と、予算獲得上の便利な道具として使われてきた経緯がある。だからこそ学力テストの成績はより正確で説得力あるものでなくてはならないのだ(*)
*40%抽出というのは全国規模だと悉皆テストと変わりない結果を得られるが、市町村レベルではそうはならない。考えてみるがいい。10校しかない市町村だと選ばれる4校がどこかによって、結果は大きくブレてしまう。だからこそ悉皆でないと信用できないのだ。
一度手に入れたものは誰も手放したくない。
わが市だけでなく、他の市町村都道府県もきっと同じようにするだろう。
秋田県はこのまま勝ち逃げするかもしれないが、大阪府の橋下知事はリベンジを果たすまで手放すはずがない。鳥取県も同じなのかもしれない。沖縄・北海道はどうするか。
全国学力学習状況調査を悉皆テストから抽出テストに代えることで、今年度予算の57億円から21億円削って36億円(朝日新聞 10月17日)
で済むのだという。
しかし言い方を代えれば、結局それはテスト処理の一部を肩代わりさせられる、教員の労力によって搾り出される21億円ということである。
しかし実施だけであれほど手を焼く全国学力学習状況調査、あの忙しい年度始めにどうやって採点するのか。
算数・数学はともかく、やたら記述式の多い国語の採点基準をどうやってそろえるのか。
そしてまた70項目に及ぶ状況調査の内容をいつ誰が入力し、整理するのか。
「まあ、気にするな。ゴールデンウィークがあるじゃないか」
民主党政権の高笑いが聞こえていきそうである。
民主党政権は日教組よりだという。
となると日教組もまた、教員に圧力を加えるだけの圧力団体になってしまったのかもしれない。