キース・アウト (キースの逸脱) 2010年5月 |
by キース・T・沢木
サルは木から落ちてもサルだが、選挙に落ちた議員は議員ではない。 政治的な理想や政治的野心を持つ者は、したがってどのような手段を使っても当選しておかなければならない。 落ちてしまえば、理想も何もあったものではない。 ニュースは商品である。 どんなすばらしい思想や理念も、人々の目に届かなければ何の意味もない。 ましてメディアが大衆に受け入れられない情報を流し続ければ、伝達の手段そのものを失ってしまう。 かくして商店が人々の喜ぶものだけを店先に並べるように、 メディアはさまざまな商品を並べ始めた。 甘いもの・優しいもの・受け入れやすいもの、本物そっくりのまがい物のダイヤ。 人々の妬みや個人的な怒りを一身に集めてくれる生贄 。 そこに問題が生まれれば、今度はそれをまた売ればいいだけのことだ。 |
[読売新聞 5月1日] 文部科学省は10日、小中学生の学力を調べる「全国学力・学習状況調査」(全国学力テスト)のあり方を再検討する専門家会議を設置し、初会合を開いた。民主党政権下で、全国の小学6年と中学3年全員にテスト参加を求める全員参加方式から抽出方式へと改められたテスト方法について、見直しも視野に入れて改めて再検証する。今年夏ごろまでに一定の結論をまとめる見通し。 専門家会議は教育の専門家や学校現場の代表ら18人で構成。初会合では、座長に梶田叡一(えいいち)・環太平洋大学長を選出した。 今後、全国学力テストの方式について、以前のように全員参加に戻すべきか、現行の抽出方式を続けるべきか話し合う。テストの方式のほか、現行では国語と算数・数学だけとなっているテスト科目を拡大することや、対象を小6と中3以外に広げることのほか、現在は1年間に1度、行われている実施頻度についても検討する。 全国学力テストをめぐっては、全国の小中学生の学力把握のために平成19年度に全員参加方式で43年ぶりに復活したが、今年度、民主党政権が「競争をあおる」「無駄削減」などの理由で、全国の3割の学校を抽出して実施する方式に変更した。 これに対して全国の教育委員会や学校、専門家からは「子供たちの学力把握のためには不適当」などという批判が上がり、自主的にテストに参加する学校が相次ぐ事態に発展した。 一度は抽出方式への変更を決めた文科省も、こうした強い批判などを受け、専門家会議で改めて再検討する方針を示していた。 やはり官僚とは頭が良いものだ。結局こうなると見越して上での「希望参加」なのである。 4月20日実施の学テでは、小中全体の3割にあたる抽出校に加え4割超の学校が参加を希望、全体で7割を超えた。 こう書かれると各校の教員が自主的に参加を決めたように見えるがそうではない。 希望参加の場合、採点・集計の人員や費用は原則学校負担 といった状況で、現場の多忙な教師が希望するわけはない。 実は全国学力学習状況調査に参加希望を出せるのは各市町村教委なのである。やろうがやるまいが何の痛痒もない教委に、実施希望を出す権利があるのだ。 もちろん教委にも積極的にやりたい理由があったわけではない。しかし希望しなければ市町村民の一部から抗議を受けるのは目に見えている。 現在の状況で、「希望しない」としたら希望しない理由を説明しなければならないのだ。だから実施したに過ぎないのである(まさか先生たちが大変ですから、とは言えない。公務員を叩けば選挙で票が集まる時代なのだから)。それで現場教師が苦労することになった。 もっとも私は全国学力学習状況調査が悉皆調査に戻ることには反対ではない。何といっても悉皆調査になれば採点と分析はすべて国費でやってもらえるのだから。 この世界、一度始めたらやめることはなかなかできない。学校に要求されるもので悪いことはほとんどないのだからだ。 大切な血税約60億円。意味のない調査だが続けるしかないだろう。
授業や部活動など、子供たちが学校の管理下でけがなどの災害に遭う発生率が、近畿など西日本で高く、東日本では低い“西高東低”の傾向にあることが、独立行政法人・日本スポーツ振興センター(東京)による災害共済給付状況のまとめで初めて分かった。部活の盛んさ、安全管理の問題などさまざまな要因が考えられるが、はっきりとした理由はわからず、関係者も首をひねる“ミステリー”となっている。 まとめによると、加入者数と給付件数から算出した災害発生率は、平成20年度で近畿8・74%、中国・四国7・85%、九州7・07%に対し、東海・北陸は6・63%、北海道・東北6・28%、関東・甲信越5・82%。16年度以降でみても、近畿と中国・四国がトップと2位を占めている。 近畿2府4県を所管する同センター大阪支所によると、近畿では加入者の掛け金総額が負傷者への給付総額を下回る“赤字”状態が長年続いており、発生率が低い東日本の“黒字”などで補っているという。 センターが21年度、全国の中学、高校14校で実施した「体育的部活動のけが防止プログラム」に協力した大阪府寝屋川市立第五中学校の大森友清校長(52)は「近畿は各地でスポーツが盛んだから、けがをする機会が多いのかも」と推測。一方、最近の子供については「幼少期に転び方を学んでいないため、昔ならねんざで済んだケースが骨折や靱帯(じんたい)損傷に発展することも多い」と指摘する。 幼稚園児や小中高校生のけがは全国的に増加しており、災害共済給付でも、少子化で加入者数が減る一方、給付件数は増え続けている。10年度は加入者1951万人に対し給付は159万件(8・1%)だったが、20年度は1757万人に対し215万件(12・2%)に増えた。 給付割合の増加について、同センター学校安全部の担当者は「単にけがが増えただけでなく、学校側が負傷した子供をすぐ医療機関で治療させるようになったことなども要因」と分析。ただ、西高東低の傾向については「原因はよく分からない」と首をひねる。
たとえば最近、横浜市では児童生徒にもトイレ掃除をやらせようという話が持ち上がり、子どもがトイレ掃除をやっていない学校があったのかと全国を驚かせたりもした。そもそも掃除は毎日すべきと考えているところもあれば1日おきで構わないと思っているところもある。 清掃ですらそうだから、授業のやり方だの児童生徒に対する考え方だのになると、細かな点で大きな違いが出てくるのも当然だろう。 さて、子供のけが“西高東低”については私もわからないが、学校管理の問題か、児童生徒に対する考え方の違いに起因するものであることは間違いない。 「近畿は各地でスポーツが盛んだから、けがをする機会が多いのかも」 は失礼だ。一般に優秀なチームはけがも少ない。 ただし学校側が負傷した子供をすぐ医療機関で治療させるようになった ことなども要因 は間違いないところで、昔に比べると明らかに受診の機会は増えた。特に首から上のけがについてはほぼ確実に受診させる。あとで何か言われても困るからだ。 学校は本当に子どもを大切にするようになった。しかしそれは子どもが心配で行っているわけではない。
大型連休も明け、全国の小学校は家庭訪問のシーズンを迎えている。ところが最近は、学校側から「玄関先でお願いします」と事前に念押しされ、家に先生を一切上げない“訪問”が慣例化しているという。家庭内での児童虐待事件が続発するなか、本当に立ち話だけでいいのだろうか。 「新学期になって配られた学級通信を見てびっくり。『家庭訪問は玄関先のみとさせて頂きます』とあった。これが『家庭訪問』と言えるのか?」と話すのは、小学1年生の長男を持つ都内の会社員男性(33)。 一昔前の「家庭訪問」といえば、親は手を付けないとは分かってはいても、普段は食べないようなお菓子を用意。時々、子ども部屋をのぞく先生もいたりして、チビっ子にとってもドキドキする一大イベントだった。 そもそも「玄関先の立ち話」は、世の奥様方の専売特許だったはず。そこで、他の地域も調べると、東京都八王子市や埼玉県さいたま市の小学校でも「『玄関先で』と事前連絡があった」(保護者)という。都市部を中心に、玄関先の家庭訪問は広がりをみせているようだ。 前出の会社員男性は先月下旬、実際に家庭訪問を受けた。 「うちはマンションなので玄関にも入らず、通路で立ち話となりました。寒い雨の日で、『お上がりください』と呼びかけると、先生は『ここで大丈夫です。上がらせてもらっても時間がわずかですので…』と丁重に断られた。先生はウチの子と別の子の名前を取り違えるなどバタバタした感じで、4分ほどで終わりました」。とても腰を据えて話すことはできなかったという。 文部科学省は家庭訪問についてついて「法的な定めはなく、指針も出していない」。東京都教育庁も「最終的には学校長の判断。必ず行う必要はなく、教諭の『地域訪問』を行う学校もある」(義務教育特別支援教育指導課)という。 「地域訪問」とは、先生が児童の家を目視で確認するだけという味気ないもの。23区内のある学校長は「『玄関先』や『地域訪問』が定着したのはここ10年。実は保護者の希望からなんです」と打ち明ける。 「『家の中を見られたくない』とか『共働きで忙しく、応じられない』という意見が多かった。家の中を見せていただくことは、学級運営や児童への指導にも役立つのだが…。一方で、教諭の仕事量は年々増えているため、家庭訪問を夏休みに行う学校もあるのです」 教育評論家の尾木直樹氏は「このご時世、玄関先に来るだけでも立派」と皮肉まじりに前置きしたうえで、次のように警鐘を鳴らす。 「一部の地域は学区に関係なく、自由に小学校を選択できる制度に移行しました。そうなると訪問先が車で20−30分もかかる場所にあったりして予定を組むことができない。そこまで自由を推し進めるのはバカげている。良くも悪くも児童の家庭環境を教諭が知るのは大きなメリットです」 一部の地域は学区に関係なく、自由に小学校を選択できる制度に移行しました。 それはそうだが、そんなのは全国でもごくごく一部のことだ。家庭訪問の縮小について語るのに持ち出す話ではないだろう。本質は本文にある通り、 『玄関先』や『地域訪問』が定着したのはここ10年。実は保護者の希望からなんです である。 学校は正義を求められる場である。そしてプライバシーの保護、個人情報の確保は現在もっとも重要な正義なのである。 それに比べれば、家庭内での児童虐待事件だの学級運営や児童への指導にも役立つだのといった可能性の正義は後回しにされる。それは当り前だ。 しかしそれにしても、 世の中には学校にバンバン要求を突きつけられる保護者もいれば、家庭訪問のような機会でもなければ話のできない人もいる。 また、4月・5月といった早い段階で一年の指導計画を話し合い、12月の保護者懇談会で中間報告をしながら3学期の仕上げに向けて指導を深めていく、そういったサイクルが私は好きだった。 しかしそんな教育的課題よりも、個人のプライバシーや情報は保護される時代である。 そのために学校の教育力が落ちても、救えるはずの児童生徒が救えなくなっても、自分のプライバシーが侵されることを考えればまったく苦にならない、そんな人はいくらでもいる。
県教委は19日、18歳未満の少年にわいせつな行為をしたとして、成田市立西中学校の理科主任、森下栄治教諭(37)を地方公務員法違反(信用失墜行為)で懲戒免職とするなど2件の懲戒処分を発表した。処分はともに同日付。 教職員課などによると、森下教諭は09年7月30日と8月20日の2回、インターネットで知り合った浦安市富士見の男に少年2人を紹介され、男のアパートで2人が18歳未満と知りながらわいせつ行為をしたという。森下教諭は「男に1万円を払いやった。抑制力がなかった。教育者として申し訳ない」と話しているという。 また、県中央部の県立高校の40代女性教諭を、同法違反で6カ月間・減給10分の1の処分とした。 女性教諭は09年2月中旬〜5月上旬、勤務する高校の1年男子生徒に計657通のメールを送り、自家用車に乗せたり食事に行き、深夜保護者
の許可なく生徒と会い、求められキスをした。生徒は今年1月進路変更を理由に退学。女性教諭は「生徒にコントロールされ、要求を断ると何をされるかわから
ずやった。自分は強制わいせつの被害者」と話しているという。
◇ 昨年9月のある日、青葉区内の中学校で職員用女子トイレの個室に、縦15センチ、横30センチ、高さ10センチの台が設置された。便器の右斜め前にあるため、荷物を置くにはちょうどよかった。 ただ、設置主は学校ではなく、男性教諭(55)。それから約1カ月間、台の下には、同僚の女性教諭を盗撮するため、ビデオカメラが仕掛けられた。女性は「便利な台ができた」と思っただけで、盗撮には気づかなかった。 そして、10月下旬のある勤務後、男性は「学校の用事に付き合ってくれ。サプライズがある」とうそをついて、車で女性を連れ出した。市内近郊を移動しながら、車内でカメラを取り出して盗撮画像を見せ、必死の形相で交際を迫った。 「自分の人生を賭けていることをわかってほしい」 女性が冷静に説得し、約2時間半後に解放されたが、翌日には校長、市教委へと報告が上がった。男性は素直に過ちを認め、ビデオカメラ2台、パソコン5台、記録用ディスク6枚を提出したという。 男性は昨年11月27日付で、懲戒免職処分を受け、12月28日には建造物侵入と軽犯罪法違反罪で略式起訴された。 ■ ■ ■ この男性ら3人の懲戒処分の公表を受け、今月19日に開かれた臨時校長会。 青沼一民教育長は「危機的」「非常事態」という言葉を並べ、「校内で孤立した教職員もいるのではないか。職場環境を充実させ、チームで職務を遂行してもらいたい」などと指示。最後にこう付け加えた。 「心配な教職員は目に付くが、十二分に信頼している教職員ほど目を向けて、声を掛けてもらいたい」 言い換えれば、若手だけでなく40〜50代の教職員にも気を配れということではないか。 市教委関係者は「キャリアを積んでいるのだから、管理職は、任せておけば大丈夫となりがち。本人に相談するより、相談される立場という自覚があれば、悩みを抱え込んでしまう可能性がある」と認める。 40〜50代になれば、両親が介護を必要とする年齢になり、子供が高校、大学受験を迎えるなどプライベートの問題が噴出してくる。「仕事の悩みはまだしも、プライベートの悩みは相談しにくいというのもある」と市教委幹部は言う。 興味深い数字がある。平成20年度に精神疾患で病気休職した仙台市の教職員は35人。20代0人、30代9人、40代13人、50代13人だった。 ■ ■ ■ 臨時校長会の約15分後、別室に教職員歴25年の男女26人が集まった。ちょうど40代後半から50代を迎えている面々。今年度、新たに取り入れたコンプライアンス(法令順守)研修で、6月には40代前半の教職員歴20年を対象にも行う。 市教委幹部は「学校の中核にいるミドルリーダーとして、この研修の成果を学校全体に浸透させてもらいたい」と期待する。 冒頭、講師を務めた研修会社「インソース」の森田伸一さんが「コンプライアンスとは何か」と尋ねると、小学校の50代の女性教諭は「分からない」と気後れすることなく答えた。 森田さんは「教職員を含む公務員は社会からの期待値が高い。本来であれば民間企業よりもコンプライアンスを大事にしなければいけないが遅れている。管理職ほどこうした研修を受けてほしい」と指摘した。 「公務員の常識は世間の非常識」とよく言われる。コンプライアンスを知らなかった女性教諭は研修後、自省を込めて語った。 「子供のことや授業に精力を傾けてきたが、コンプライアンスを意識して仕事をしたことはなかった。自分を含めて、教職員は世の中のことを知らなさすぎる」 ◇ ■仙台市教委の懲戒処分 当事者に限ると、17年度5人▽18年度7人▽19、20年度各9人▽21年度10人。処分時の年代別では、40代が17年度0人▽18〜20年度各3人▽21年度4人、50代が17、18年度各1人▽19年度2人▽20年度3人▽21年度1人だった。 21年度は、免職が3人。同僚女性を盗撮するなどした中学校の男性教諭(55)以外には、教え子の女子中学生にわいせつ行為をした中学校の男性教諭(52)、鉄パイプを盗んだ小学校の男性教諭(49)の2人で、いずれも刑事処分も受けている。 40代〜50代の教員に何かしら問題があるという記事を出たら一応眉にツバをつけてみた方がいい。何しろ40代〜50代の教員は20代〜30代の2倍近くもいるのだから。 * 文科省発表統計によると小学校教員の65・1%、中学校教員の66・8%が40〜50代。20代30代は小学校教員34.9%、中学校教員33.2%で、40〜50代は20〜30代の2倍近くいることになる。 たとえば上記の記事中、 当事者に限ると、17年度5人▽18年度7人▽19、20年度各9人▽21年度10人。処分時の年代別では、40代が17年度0人▽18〜20年度各3人▽21年度4人、50代が17、18年度各1人▽19年度2人▽20年度3人▽21年度1人だった。 を表にしてみると以下のようになる。
この表だけを見ても40代以上が異様に多いという気はしないが、仙台市の教員の年齢構成が全国並みだと仮定すると(仙台市が平成不況や少子化と無関係なら別だが)、2倍の構成比を持ちながら処分者が20〜30代とほぼ同数というのは、むしろ40歳以上の方が処分者を出していないということになる。 統計の専門家を担ぎ出すまでもなく小学生でも分かることだ。それをことさら40〜50代に焦点を当てるのは、そこに何らかの意図があるのかもしれない。単に若い人には甘いと言うことか、あるいは収入の高い層をひとりでも多く退職に追い込むことによって教育支出を減らそうということなのか、私には分からない。 冒頭、講師を務めた研修会社「インソース」の森田伸一さんが「コンプライアンスとは何か」と尋ねると、小学校の50代の女性教諭は「分からない」と気後れすることなく答えた。 よくもまあ辱めてくれたものだ。法令順守なら私も分かるが、コンプライアンスだと私にも分からない。ことさら英語を使う以上、法令遵守とコンプライアンスの間には微妙で決定的な違いがあるのだろう。 しかしそれは世間の常識なのだろうか。 その「コンプライアンス」を学ぶために、私たちはどれだけの時間を教材研究や子どものための活動から裂けばよいのか。 そもそもコンプライアンスを知らなくても、盗撮はいけないことだと普通は分かる。 (車内でカメラを取り出して盗撮画像を見せ、必死の形相で交際を迫ったというこの教諭、行くべきは警察ではなく病院のような気もするが。) 教職員は世の中のことを知らなさすぎる 世間知に長けた教員というものを私は信用しない。また世間を知っていればこんなアホな仕事などしていないと思う。 *しつこいが、コンプライアンスは世間の常識なのだろうか? 隣りのおばちゃんやおじちゃんたちもみんな知っていることなのだろうか? 今度聞いてみよう。 |