キース・アウト
(キースの逸脱)

2010年6月

by   キース・T・沢木

サルは木から落ちてもサルだが、選挙に落ちた議員は議員ではない。
政治的な理想や政治的野心を持つ者は、したがってどのような手段を使っても当選しておかなければならない。
落ちてしまえば、理想も何もあったものではない。

ニュースは商品である。
どんなすばらしい思想や理念も、人々の目に届かなければ何の意味もない。
ましてメディアが大衆に受け入れられない情報を流し続ければ、伝達の手段そのものを失ってしまう。

かくして商店が人々の喜ぶものだけを店先に並べるように、 メディアはさまざまな商品を並べ始めた。
甘いもの・優しいもの・受け入れやすいもの本物そっくりのまがい物のダイヤ
人々の妬みや個人的な怒りを一身に集めてくれる生贄
そこに問題が生まれれば、今度はそれをまた売ればいいだけのことだ。
















 



2010.05.01

「学校をぶっ壊してきな!」 中学生の次女らにけしかけた母親逮捕
東京・町田



産経新聞 6月 8日]


中学1年だった次女らに「学校をぶっ壊してきな」などと破壊行為をそそのかしたとして、警視庁少年事件課と町田署は、暴力行為法違反(教唆)の疑いで、東京都町田市の飲食店従業員の女(37)を逮捕した。同課によると、女は「つい格好を付けて威勢のいいことを言ってしまった。まさかあそこまでやるとは思わなかった」と容疑を認めている。

 逮捕容疑は1月13日夜、同市内のカラオケ店で、通学先の市立中学校の教諭に対する不満を話していた次女(13)らに「学校がうざいならやればいいじゃん。私の代のときは消火器をまいたり窓ガラスを割ったりしていた」などと、けしかけたとしている。

 同課によると、次女らは同じ中学校の仲間らに声をかけ、14日夜から15日未明までの間、男女計6人で校舎の窓ガラス2枚(被害額約4万円)を割った上、同校正門などに近くの民家などから持ち出した計6個の消火栓をまいた。同課は暴力行為法違反容疑で次女の友人の中学生5人を逮捕、次女については児童相談所に通告した。

 次女らは遅刻や喫煙などをとがめられたことに腹を立てていたという



「子どもを舐めてはいけない」という言い方があるが、まさに好例であろう。
学校がうざいならやればいいじゃん。
と言ったとき、母親はどの程度を考えていたのだろう。しかし子どもにとっては天井知らずのGO!なのだ。
むしろガラス2枚で済んだ方が不思議なくらいだ。

子どもと付き合うというのはこういうことなのだ。
常に、最悪のケースを考えて、慎重に、すばやく、誠意を持って、組織的な対応を
つまり危機管理の「さしすせそ」である。

子どもの指導はそれ自体が危機管理なのである。

それにしても事件が起きた時の、母親のびっくりした顔を思い浮かべると、思わず頬の緩む。

ハハ!



 
 



 



2010.06.10

「学力低下」に悩む大学たち 高校レベルの補習4割


J- CASTニュース 6月 2日]


 大学生の学力低下が叫ばれる中、高校レベルの補習を実施している大学が約4割にも及ぶことが文部科学省の調査結果でわかった。学科試験のないAO入試の導入などで従来の授業が成り立たなくなっており、中には、中学レベルの基本内容を10日間以上にわたって教える大学もある。

 文科省が2010年5月26日、大学の教育内容についての調査結果を発表した。全国の国公私立大学723校を対象に調査したところ、学力が足りず大学の授業についていけない学生に、高校レベルの補習をした大学は、07年度から20校増えて08年度は264校。約4割にも上った。学力に差があり、英語や理数系で学力別のクラスを設置した大学も282校あった。

■動機付けからノートの取り方まで

 また、大学の授業に早く慣れるため「初年次教育」として学習方法などを教えた大学も595校と半数以上。大学での勉強に対して動機付けを行うプログラムを実施した大学が447校、ノートの取り方を教えた大学も316校あった。

 大阪工業大学では5年ほど前から数学と物理の補習授業を行っている。入学時のクラス分けテストで成績が奮わなかった生徒や、高校で履修していなかった学生などが対象で、高校レベルの内容から学ぶ。

 同大学教務課によると、AOや推薦など、科目数が少なかったり、学科試験自体がない入試方法が増えたりしたほか、高校カリキュラムの多様化で、数IIIや物理の履修経験のない学生も出てきた。このため、従来の大学の授業をそのままやることが困難になり、レベルを落とした授業の開設や、補習授業を行うに至ったという。

■自分で考える姿勢がないのが問題

 聖学院大学(埼玉)では2001年から毎年2〜3月、入学予定の高校生を対象に「入学前準備教育」を行っている。計11日間で、90分の授業を1日4コマというかなりしっかりした講習だ。

 授業は「英語基礎」「数学基礎」「国語表現力」の3科目で、いずれも中学レベルの基本から講義するほか、友人作りに役立てる「カフェトーク」という交流の時間も設ける。

 同大学広報企画部の担当者は「11日間で学力が付くわけではありません。勉強のモチベーションや、大学とはどういうものなのかということを理解して貰えればと思っています」と語る。あくまで自由参加で受講料も2万円かかるものの、約4割の入学者が参加し、好評だという。同大学はサンデー毎日などが毎年出している「面倒見のいい大学ランキング」でも近年上位に入っている。

  「マスコミでは、漢字や算数の分からない大学生などが取り上げられていますが、大学が本当に問題としているのは、いわゆる『学力』がないということではありません。今の学生が受動的で、自分で考える姿勢がないということが真の問題です。これについては大学の偏差値は関係ありません。準備教育については、『大学がそこまやるのか』という批判もありますが、現に問題があるわけですから、それに大学がどう立ち向かうかです」

と話している。



 アメリカの大学は入学するのは簡単だが入ってからが大変だという。
 日本ではあまり知られていないが、

 その大変な勉強の実態は、実は大学教育に耐えるだけの学力をつける補習、つまり記事にある現代日本の大学と同じもの
なのだ。国民教育が崩壊し、義務教育の高校でさえ大量の中退者を出すようなアメリカでは、相当なレベルの大学であっても補習なしに教育を始めることができないのである。

 そのアメリカに日本もようやく近づこうとしている、と見えるがそうではない。
 日本の義務教育、高校教育は確固として世界最高水準なのだ。アメリカと比べられるものではない。

 日本の大学の低学力は別なところに由来する。
 それは簡単にいえば、
少子化、少子化と言われながら全体としては大学定員を減らさなかったから
だ。














 受験者が少なくなっているのに収容力が変わらなければ、当然レベルの低い者も入ってくる。
 
 大学の全入時代という言葉を聞いたことがあるだろう。つまり 昔なら大学生になれなかった子が大学生になっているのである。
 
 そうなると解決策も簡単だ。たとえば、
 
各大学の定員を3割減、現在の7割にすればいい。
 
 そうすればトップ校のA大学は成績上位70%で講義を受けるわけだから、当然学力の底上げが果たせる。
 2番手校のB大学も下位30%が居なくなるがそれだけではない。A大学から30%分下りてくるわけだからその分も含めて都合本来のB大の下位60%がいなくなる。
 3番手のC大となると下位90%が排除される。残れるのは上澄みの10%だけだ。。
 D大はもう総入れ替え、かつてのC大以上の学力が確保できる。
 こうしていとも簡単に大学生の学力アップは果たせるのだ。
 
 これは冗談でも戯言でもない。本来はもっと早い段階でそうすべきだった。

 現実に起こっているのはそれだけのことなのだが、社会的にはそうはならない。
 今の高校教育はしっかりしているから改革は必要ありませんなどと言えば、新聞は売れなくなり、政治家は選挙で票を集められない。
 日本はダメだと言ってさえいれば儲かる人がたくさんいる。

 
かくして日本の義務および高校教育という実に健康な体に、
 教育改革というメスが入れられる、

 それも繰り返し、繰り返し。
 
 まもなく日本の教育は死ぬだろう。私たちが殺してしまうのだ。