過酷な毎日を送る日本のサラリーマンにとって、生活の大部分を占めるのが仕事。それゆえ、職業選びは、人の寿命に大きく影響を与えているという。多数の企業で産業医として働く榛原藤夫氏はこう語る。
「寿命を規定する因子としては、本人の持っている遺伝的、体質的要因に加え、食生活、運動習慣などの生活習慣が広く知られています。しかし近年では、どのような仕事に就いているか、どのような社会的地位にあるかも健康に大きな影響があるということが分かってきました。イギリスの有名な研究では、公務員を4階層に分けると1番の上位階層と比べ、1番下位の階層の突然死のリスクは4倍高いという結果が示されました。かつては管理職ほどストレスフルなので、健康に悪いと思われていたのに逆だったのです。後にも類似する研究結果が報告されるようになりました。また『職業』以上に『所得』と健康、寿命の関連を示唆する研究も多く、社会医学では注目の分野と言えます。
事故が起こりやすい危険度の高い仕事などを除いた場合、職業が寿命と関連する要因は大きく分けて2つあります。ひとつは、『裁量権の有無』。自分で自分の仕事をコントロールできる人ほど、ストレスが低いので長生きする傾向がある。上記のイギリスの研究の結果もこのことを示唆しています。もうひとつは、『過重労働・暴飲暴食』。深夜までの残業や徹夜が当たり前の長時間労働や、接待続きなどの過剰飲酒は、当然体には悪い。
ただし、人間の寿命より職業の寿命の方が短い職種も多く、このようなランキング付けを統計的に示すことはそもそも不可能です。ここでは裁量権と身体的負担の2つに焦点を当て、『健康状態が心配』だと思われる職業の例を挙げさせていただきました。ランキング自体に大きな意味はありません。また特定の職業を批判する意図もありません。
まず健康に良くない職業として思いつくのが大手広告代理店の営業マンです。彼らは、徹夜仕事は当たり前の超激務ですが、裁量が少ない。加えてお客との接待で連日大酒を飲むことも珍しくない。給料やステータスは高いものの、体には負担ですよね」
そして、「IT企業の下請けSE」や「チェーン飲食店店長」はどうか。
「どちらも長時間労働のうえ、給料も安い。下請け会社のSEは基本的に親会社のムチャぶりには逆らえないし、店長も、結局は雇われなので裁量権はほぼありません」
そして、意外にも「若手官僚」も心配だと言う。
「官僚はエリートで好待遇のイメージがありますが、それは年長者だけ。基本は年功序列の縦社会なので、若手は給料も安いし深夜まで働かされるのが通例です。実際、某省庁では入省した若手20人のうち、3人が10年以内に自殺したというデータもあります」
また、上記2点に加えて「勤務時間が不規則」な職業も、かなり寿命に影響を及ぼすという。「不規則な生活は、当然、身体に害です。つまり、毎日ではなく、不定期に夜勤があるような仕事は健康に負担です。たとえば、病棟勤務の看護師や会社勤務のタクシー運転手や長距離トラック運転手。彼らは数日に1回は夜勤があるので体内リズムを崩しやすい。さらには、どちらも上から管理される仕事なので、裁量権はなし。CAの仕事も大手なら好待遇だしフライトとフライトの間には休みも取れますが、LCCのCAは経費削減のため、給料は安いし連日フライトが入ったりとかなりのハードワーク。心配ですね」
いかに社会的ステータスや給料が高くとも、身体を壊してしまえば意味がない。週刊SPA!7/16発売号では、さまざまなジャンルにおける「早死にする人ランキング」を公開しているので、チェックしてみてはいかがだろうか。 <取材・文/週刊SPA!編集部>
【早死にする職業ベスト10】
1位 大手広告代理店の営業
2位 IT企業の下請けSE
3位 チェーン飲食店店長
4位 若手官僚
5位 病棟勤務の看護師
6位 タクシー運転手
7位 LCCの客室乗務員
8位 自衛官
9位 公立学校の教員
10位 トラック運転手
ちゃっかり9位に「公立学校の教員」が入っていること、喜ぶべきか悲しむべきか。
私の弟の小学校のときの担任は在職中にガンで死んだ。病気療養中に一度だけ登校したと思ったら片足を切断しており、全校集会のステージに松葉杖で登って、「もうしばらく療養したら帰ってくる、帰ってきてみんなとがんばる」と言ったきり、二度と顔を見ることはなかった。
私の中学校のときの英語の教科担任は、遅い結婚のための健康診断でガンが見つかり、一年を経ずにして亡くなった。高校のときの英語科の担任は酔って車道に飛び出し、車にはねられて死んだ。
私自身が教員になった年、定年間近の同僚が心不全で亡くなった。別の若い教員は(病名は知らされなかったが)3か月の長期入院となった。子どものころの経験があったので、こんなふうに教員は次々と死んで行くものだと思ったが、以後はそれほど多くの死があったわけではない。
死なないまでも、うつを発症して退職した教職員は何人かいた。その一部は、今もきわどい状態のまま勤務している。
そして・・・、
そしておそらく、心を病んだ一部の教員は、信じられないほど稚拙で安直な犯罪によって学校を追われていく。
今どきスカートの中に携帯を差し入れての盗撮などないだろう。パチンコの隣の席からの置き引き、ぼんやりと商品を持ち出す万引き、何の隠ぺい工作もない公金の横領、誰が考えたって許されるはずのない体罰、無意識の交通違反・・・。
私は教員だから同僚としてとても苦になる。しかし教員に同情的でない人々も、そうしたぎりぎりの人間がウチの子の担任をしているかもしれないと思えば、肝を冷やすに違いない。
しかしそれも学校のひとつの側面なのだ。
「寿命を規定する因子としては、本人の持っている遺伝的、体質的要因に加え、食生活、運動習慣などの生活習慣が広く知られています。しかし近年では、どのような仕事に就いているか、どのような社会的地位にあるかも健康に大きな影響があるということが分かってきました。イギリスの有名な研究では、公務員を4階層に分けると1番の上位階層と比べ、1番下位の階層の突然死のリスクは4倍高いという結果が示されました。かつては管理職ほどストレスフルなので、健康に悪いと思われていたのに逆だったのです。後にも類似する研究結果が報告されるようになりました。また『職業』以上に『所得』と健康、寿命の関連を示唆する研究も多く、社会医学では注目の分野と言えます。
事故が起こりやすい危険度の高い仕事などを除いた場合、職業が寿命と関連する要因は大きく分けて2つあります。ひとつは、『裁量権の有無』。自分で自分の仕事をコントロールできる人ほど、ストレスが低いので長生きする傾向がある。上記のイギリスの研究の結果もこのことを示唆しています。もうひとつは、『過重労働・暴飲暴食』。深夜までの残業や徹夜が当たり前の長時間労働や、接待続きなどの過剰飲酒は、当然体には悪い。
ただし、人間の寿命より職業の寿命の方が短い職種も多く、このようなランキング付けを統計的に示すことはそもそも不可能です。ここでは裁量権と身体的負担の2つに焦点を当て、『健康状態が心配』だと思われる職業の例を挙げさせていただきました。ランキング自体に大きな意味はありません。また特定の職業を批判する意図もありません。
まず健康に良くない職業として思いつくのが大手広告代理店の営業マンです。彼らは、徹夜仕事は当たり前の超激務ですが、裁量が少ない。加えてお客との接待で連日大酒を飲むことも珍しくない。給料やステータスは高いものの、体には負担ですよね」
そして、「IT企業の下請けSE」や「チェーン飲食店店長」はどうか。
「どちらも長時間労働のうえ、給料も安い。下請け会社のSEは基本的に親会社のムチャぶりには逆らえないし、店長も、結局は雇われなので裁量権はほぼありません」
そして、意外にも「若手官僚」も心配だと言う。
「官僚はエリートで好待遇のイメージがありますが、それは年長者だけ。基本は年功序列の縦社会なので、若手は給料も安いし深夜まで働かされるのが通例です。実際、某省庁では入省した若手20人のうち、3人が10年以内に自殺したというデータもあります」
また、上記2点に加えて「勤務時間が不規則」な職業も、かなり寿命に影響を及ぼすという。「不規則な生活は、当然、身体に害です。つまり、毎日ではなく、不定期に夜勤があるような仕事は健康に負担です。たとえば、病棟勤務の看護師や会社勤務のタクシー運転手や長距離トラック運転手。彼らは数日に1回は夜勤があるので体内リズムを崩しやすい。さらには、どちらも上から管理される仕事なので、裁量権はなし。CAの仕事も大手なら好待遇だしフライトとフライトの間には休みも取れますが、LCCのCAは経費削減のため、給料は安いし連日フライトが入ったりとかなりのハードワーク。心配ですね」
いかに社会的ステータスや給料が高くとも、身体を壊してしまえば意味がない。週刊SPA!7/16発売号では、さまざまなジャンルにおける「早死にする人ランキング」を公開しているので、チェックしてみてはいかがだろうか。 <取材・文/週刊SPA!編集部>
【早死にする職業ベスト10】
1位 大手広告代理店の営業
2位 IT企業の下請けSE
3位 チェーン飲食店店長
4位 若手官僚
5位 病棟勤務の看護師
6位 タクシー運転手
7位 LCCの客室乗務員
8位 自衛官
9位 公立学校の教員
10位 トラック運転手
ちゃっかり9位に「公立学校の教員」が入っていること、喜ぶべきか悲しむべきか。
私の弟の小学校のときの担任は在職中にガンで死んだ。病気療養中に一度だけ登校したと思ったら片足を切断しており、全校集会のステージに松葉杖で登って、「もうしばらく療養したら帰ってくる、帰ってきてみんなとがんばる」と言ったきり、二度と顔を見ることはなかった。
私の中学校のときの英語の教科担任は、遅い結婚のための健康診断でガンが見つかり、一年を経ずにして亡くなった。高校のときの英語科の担任は酔って車道に飛び出し、車にはねられて死んだ。
私自身が教員になった年、定年間近の同僚が心不全で亡くなった。別の若い教員は(病名は知らされなかったが)3か月の長期入院となった。子どものころの経験があったので、こんなふうに教員は次々と死んで行くものだと思ったが、以後はそれほど多くの死があったわけではない。
死なないまでも、うつを発症して退職した教職員は何人かいた。その一部は、今もきわどい状態のまま勤務している。
そして・・・、
そしておそらく、心を病んだ一部の教員は、信じられないほど稚拙で安直な犯罪によって学校を追われていく。
今どきスカートの中に携帯を差し入れての盗撮などないだろう。パチンコの隣の席からの置き引き、ぼんやりと商品を持ち出す万引き、何の隠ぺい工作もない公金の横領、誰が考えたって許されるはずのない体罰、無意識の交通違反・・・。
私は教員だから同僚としてとても苦になる。しかし教員に同情的でない人々も、そうしたぎりぎりの人間がウチの子の担任をしているかもしれないと思えば、肝を冷やすに違いない。
しかしそれも学校のひとつの側面なのだ。