キース・アウト
(キースの逸脱)

2014年 3月

by   キース・T・沢木

サルは木から落ちてもサルだが、選挙に落ちた議員は議員ではない。
政治的な理想や政治的野心を持つ者は、したがってどのような手段を使っても当選しておかなければならない。
落ちてしまえば、理想も何もあったものではない。

ニュースは商品である。
どんなすばらしい思想や理念も、人々の目に届かなければ何の意味もない。
ましてメディアが大衆に受け入れられない情報を流し続ければ、伝達の手段そのものを失ってしまう。

かくして商店が人々の喜ぶものだけを店先に並べるように、 メディアはさまざまな商品を並べ始めた。
甘いもの・優しいもの・受け入れやすいもの本物そっくりのまがい物のダイヤ
人々の妬みや個人的な怒りを一身に集めてくれる生贄
そこに問題が生まれれば、今度はそれをまた売ればいいだけのことだ。


















2014.03.09

教員採用試験で増える社会人の「特別枠」 斎藤剛史


[Benesse 3月 6日]


2013(平成25)年度に全国の公立学校教員採用者のうち民間企業など社会人経験者の割合が5.9%だったことは、以前の当コーナーでもお伝えしました。子どもや保護者の実態やニーズが多様化する中で、新規採用教員には教員養成課程での指導力の向上などが求められる一方、社会人経験者などの多様な人材を登用することも課題となっています。このため最近では、一般の試験とは別枠で社会人などを対象にした「特別選考」を実施する教育委員会が増えています。

文部科学省の「教員採用選考試験の実施状況調査」によると、最近の公立学校教員採用者に占める民間企業等勤務経験者(アルバイトを除く)の割合は、2008(平成20)年度が6.6%、09(同21)年度が6.0%、10(同22)年度が5.9%、11(同23)年度が5.3%、12(同24)年度が5.5%、13(同25)年度が5.9%というように、ほぼ6%前後で推移しています。これだけを見ると、社会人の教員採用はあまり大きく進んでいないようです。

ところが、教員採用者数の実績とは別に、採用試験の方法を見ると、大きな変化があることがわかります。文科省の「教員採用選考試験の実施方法調査」によると、一般試験とは別に社会人向けの特別選考を実施している都道府県・指定都市教委は、10年前の2004(平成16)年度採用試験では15教委だったものが、09(同21)年度には34教委、そして14(同26)年度には40教委へと増えています。特別選考の方法は、通常の1次試験における一般教養などの筆記試験の代わりに小論文や面接を課すというようなものが多く、筆記試験などの受験対策にあまり時間を割けない社会人に配慮したものとなっています。応募資格としては、民間企業などに「継続して5年以上」勤務していたことなどを条件にしている教委が多いようです。

ただ、社会人向けの特別選考を実施する教委は増えているものの、水産や商業など高校の職業系科目の教員のみ数人の採用にとどまる教委もあれば、中学校と高校の全教科にわたって数十人規模で社会人を採用している教委もあるなど、都道府県などによって社会人採用に対する考え方の違いもあるようです。社会人の特別選考による採用者(2013<平成25>年度)が多い都道府県・指定都市教委は、大阪府45人、神奈川県33人、横浜市21人、三重県11人、広島県・広島市10人などです。

民間企業勤務などの経験のある教員が、そうでない教員よりも優れているかどうかは議論のあるところでしょう。しかし、社会の多様化が進む中で、学校組織が均一的・画一的にならないようにするため、一定の割合で社会人経験のある教員が存在する意義は大きいと言えます。今後、教員採用試験の改革の一環として社会人向けの特別選考枠のさらなる拡充が求められます。



 私自身が社会人を経験したあとで教職についたため立場が微妙なのだが、枠をつくって試験のハードルを下げ、そのうえで社会人を入れるからには、やはり本当は、
民間企業勤務などの経験のある教員が、そうでない教員よりも優れている
との証明が必要なはずだ。しかし現実はどうだろう。

 人はさまざまな理由で転職するから一概には言えないが、
民間企業で生き生きと活躍しているような人は、そう簡単に教員採用試験など受けないだろう。私の場合も、(いくつもの複合的な理由はあったが)、企業での仕事に行き詰っていたのも大きな理由のひとつであった。

 そうした私から見れば、二十歳そこそこで教員になろうと決意して、試験に臨んでくるような人たちはむしろ立派である。彼らの多くは迷いなく、この価値ある仕事に飛び込んできたのだから。
 特に地方の教員養成大学の卒業生は、遅くとも十代の後半でその都道府県の教員になると決めて地道に勉強を続けてきた人たちだ。中には小さなころから“先生”に憧れて、一心に目指してきた人も少なくない。
 そうした人を差し置いてまるで横入りのように入ってくる社会人枠合格者たちは、それなりの仕事をしているのだろうか。
 現在、学校にも盛んに「成果の検証」ということが言われるようになってきた。はかられるのは主として学力だ。
 だとしたら教員採用制度の成果の検証も行って当然だろう。
 
 社会人枠の問題だけでなく、
民間人校長・教頭、各種研修の成果の検証も必要なはずだ。それが道理というものだろう。







2014.03.16

英国、「国民が数学苦手」で、中国の「救援」を要請―英メディア


[レコードチャイナ 3月16日]

2014年3月14日、英国の国立数学教育団体NationaI Centre for Excellence in the Teaching of Mathematics(NCETM)が最近実施した調査の結果、英国の成人が数学を苦手としているために、英国政府が受ける直接的・間接的な経済損失は年間200億ポンド(約3兆4000億円)に上ることが明らかになった。英国教育大臣は2月、上海を訪れ、「救援」を要請。これにより、上海の数学教員60人が英国に赴き、英国人に数学を教えることになった。BBCが伝えた。

■英国人、日常生活の各シーンで問題噴出

英国の成人のうち、計算を行う時に、手元に電卓がなければ、指を使って計算する人が3分の1を占める。また、買物の際に、特売商品の割引率や計算にうといことから、毎週10ポンド(約1700円)を損している。商店のレジでお釣りを受け取った時にお釣りが不足していることに気づかないため、総額8億ポンド(約1360億円)以上のお釣りを「もらわずじまい」になっている。

NCETMは、「数学的な能力が低いことから、本人の給与レベルが下がり、企業の利益が減り、政府の税収が落ち込み、英国政府は年間200億ポンドの経済的損失を被っている。この額はGDPの1.3%に相当する。刑事司法体制や国家医療サービス体制にもたらされる損失は数値化が難しいため、この数値は実際の損失額よりも少ないとみられる」としている。

■数学能力の低さをもたらした三大要因

英国人がこれほど数学を苦手とする原因として、次の3点が挙げられる。

1、学校で算数を学び始めた時から、電卓に依存しすぎている。英国政府はかつて、10歳から12歳の学生を対象とした数学テストを実施した。電卓を使わないことを条件としたこのテストでは、「2.36+1.49=」の計算問題を解けない学生が27%を占めた。また、「415−5=」ができなかった学生も36%いた。

2、英国人は総じて、数学に対して興味を抱いておらず、数学を重視していない。調査によると、学生の25%は「数学を勉強したくない」と答えた。その理由として、「勉強してもよくわからない(31%)」、「数学の勉強は退屈極まりない(45%)」などが挙がった。

3、数学担当教員の力量が不足しており、小学校教員で数学の学位を持っている教員はわずか3%にとどまっている。

■英教育大臣、中国を訪れ「救援」を要請

英国政府は国民全体の数学レベルが低いことに焦りを感じ、さまざまな対策に取り組み始めた。まず、小学校低学年の算数の授業では、子供たちの計算能力向上を図り、電卓の使用を禁じた。また、多くの大学生に数学教員になることを目指してもらうため、数学の教員に対して7500ポンド(約127万円)の特別奨励金を支給する方針を打ち出した。このほか、13年1月には英国国内の優秀小・中・高校25校の校長からなる国家視察団が中国・寧波の小学校を訪問して交流を行い、中国の数学教授法を学んだ。寧波の小学生が「掛け算九九」を使って「72÷3=24」と即答した時、視察団の英国人校長たちは軒並み、ど肝を抜かれた。英国の学生がこのレベルの問題を正解するには、数回の授業で繰り返し勉強する必要がある。

2014年2月、トラス教育大臣率いる英国代表団が、掛け算九九などの「経験を蓄積する」ことを目的として、上海を訪れた。代表団が帰国した後、英国政府は中国から数学教員を招聘することを決定した。これを受け、上海は数学教員60人を英国に派遣し、支援にあたることとなった。また、英国政府も国内の数学教育レベルの向上を目指し、中国に数学教員60人を派遣し、長期的に教授法を学ばせることとした。(提供/人民網日本語版・翻訳/KM・編集/TF)




日本の教育改革はイギリスのサッチャー改革を手本としている。
マーガレット・サッチャーの教育改革の柱は六つ。
1 教育内容を国家が決める。
 (国語(英語)、数学、科学を中心に、歴史、地理、技術、音楽、美術、体育、外国語を基礎教科と定め、組合教師たちがイデオロギー教育の隠れ蓑としていた「総合学習」などを排除した)
2 ナショナル・カリキュラムを作成し、指導内容の統一を図った。
3 ナショナル・カリキュラムが完全に実施されていることを調べるため、義務教育期間中に4回の全国共通試験を行い、結果を公表した。
4 学校理事会を設置し、地域住民を学校経営の中心とした。
5 イギリスの植民地支配や奴隷貿易など負の側面にばかりに焦点を当てた自虐史観を排し、イギリス国民であることに誇りを持てる歴史教育を行うようにした。


 こう列挙するといかに日本が英国の後追いをしているかが分かるだろう。しかし、
 1はすでに行う必要はなかった。
 2は真似しようと思ったらナショナル・カリキュラム自体が日本の学習指導要領の真似だったので諦めた。
 3は「全国学力学習状況調査」という形で実現した。しかし試験内容はOECDのPISAに準拠したものであって、学習指導要領をほとんど無視していたので、学校現場は学習指導要領型教育とPISA型教育の両方を行うことになり混乱した。
 4はまず学校評議員会として具体化した。しかしなかなかうまくいかないので日本型コミュニティースクールという名でもう一度やり直そうとしている。
 5は知っての通り、今まさに盛んに行おうとしていることだ。産経新聞はやたらと自虐的歴史観を問題とするが自身の自虐的教育観につてはまったく問題視していない。

 ところで
かくも憧れてそれに合わせたイギリスの教育が、現状は記事の通りだということ、教育再生に熱心な政治家・政府・文科省はご存じなのだろうか。イギリスの真似をすればイギリスのようになってしまう恐れはないのだろうか。

 現場の教師は傷ついている。
PISA2013で数学7位、読解力4位、科学4位の日本が、それぞれ26位、23位、20位のイギリスの前に跪かされているのだ。

 ある研究者はイギリスの教育を研究に行った先で次のような質問を受けている
「僕らは日本の学校のように教えなさいといわれているのに、日本から来て僕らの授業を見学しているあなたは何を学ぼうとしているのか?」
 その研究者は学校理事会的な発想や評価システム、学校支援の仕組みはぜひとも必要だといっているが何のために必要なのかは全く分からない。

 自腹か公費かは知らないが大変な金と時間とエネルギーを使ってイギリスの教育改革の調査を行い、その上で「学ぶべきことは何もなかった」では済まない。金を出した側はさらにそうだ。そこで何がどうなるかわからないが、とにかくムダ金にならないよう研究成果を日本の教育に生かさなければならない、それが政府や研究者のやり方なのだ。

 かくして世界最高峰の日本の教育システムは欧米の低劣なシステムに侵される。日本の教育が衰えることは英米にとってメリットこそあれデメリットはない。なるほど気前よく教えてくれるわけだ。







2014.03.18

夜9時から家でもスマホ禁止に 愛知・刈谷の全小中学校


[産経新聞 3月17日]

 愛知県刈谷市にある全21校の小中学校が保護者と連携し、児童生徒に午後9時以降、スマートフォンや携帯電話を使わせない試みを4月から始める。無料通信アプリLINE(ライン)などを使ったトラブルやいじめ、生活習慣の乱れを回避するための措置という。

 文部科学省は小中学校への持ち込みを原則禁止するよう各都道府県教育委員会に通知。各家庭で事情に応じたルールを決めるよう内閣府などと冊子で呼びかけているが、文科省の担当者は「地域で一律に使用時間の制限まで設ける試みは珍しい」としている。

 刈谷市教委や市内小中高校、警察などでつくる「市児童生徒愛護会」が発案。(1)必要のないスマホや携帯電話を持たせない(2)契約時には親子で使用に関する約束を決め、有害サイトの閲覧を制限する「フィルタリング」のサービスを受ける(3)午後9時以降は親が預かる−の3点を学校とPTAの連名で家庭に要請する。

 愛護会は「勉強や就寝の時間を考慮しつつ、厳しすぎないよう午後9時に設定した」と説明している。


 なぜ怒らないのか。
 
学校とPTAが連携して家庭に侵入しようとしいているのだ。  

 十数年前、学校のスリム化が叫ばれたころだったらこんな暴挙はメディアが許さなかった。
 家庭は社会の最小単位で、そこは政府にも世間にも、ましてや学校には侵されない場所ではなかったか。
 家庭での生活習慣が乱れていたとしても、それは
市教委や市内小中高校、警察にとやかく言われるような問題ではない・・・と、憤怒の形で怒る保護者やマスメディアはいないのか。
 
午後9時以降は親が預かるなどというお節介を、黙って見過ごすつもりか。
 
 日本人は自らの自立性を、どこまで奪われれば気がつくのか。








2014.03.20

大阪市教委:民間人出身の38歳パワハラ校長を更迭へ


[毎日新聞 3月20日]

 大阪市教委は民間人出身の公募校長のうち、パワハラを指摘された同市生野区の市立中学校の男性校長(38)を更迭する方針を固めた。市教委関係者は取材に「学校運営に問題がある」としている。24日の教育委員会会議で正式決定する。

 市教委によると、校長は経済紙記者から昨年4月、同市最年少の民間人校長として就任した。校長は地域との連絡を巡って教頭と口論になった際に「間違っていたら謝罪すべきだ」と問い詰め、教頭が土下座したと市議会で指摘された。

 市教委はこの校長への処分を見送ったが、保護者らから辞職を求める声が上がっていた。教頭は病気休暇などで長期間不在になり、退職した前任の女性校長が2学期途中からボランティアで学校業務を手助けしていたことが今月6日の市議会で報告された。

 民間人校長を巡っては、セクハラ行為で1人が更迭され退職したほか、他の1人も自己退職。市議会は今月14日、「人材は育成するもの。公募(制度)は改めるべきだ」などと、来年度予算案から公募校長の研修関連経費約2800万円を減額した。【山下貴史】


 大阪市の公募校長については、
市長が自分似の高圧的で専横的、根強い男尊女子の感情をもった人物ばかり選んだところに問題があるから、必ずしも一般化できない。
 しかしそれにしてもこれまでかなりの数となった
民間人校長、どれほど成果を上げたというのか
 杉並区立和田中学校長を務めた藤原和博や大阪市立和泉高校長の中原徹など華々しい(単に華々しかっただけなのかもしれないが)活躍をした民間人校長もいないわけではないが、その方法が一般化しないのは、結局、意味ある活動ではなかったということではないか。

 退職した前任の女性校長が2学期途中からボランティアで学校業務を手助けしていた
 こんな惨めなことまでして、橋下氏は公募校長に何をさせたかったのか、私には理解できない。