スマートフォン向け無料アプリ「LINE(ライン)」を悪用したいじめが教育現場で深刻化している。文部科学省が発表した平成25年度の問題行動調査では、携帯電話やパソコンでの誹謗(ひぼう)中傷などのいじめが前年度から約1千件増え、8787件(前年度7855件)と過去最多になった。スマホ普及に伴い把握は一層難しく、自治体や学校では対応し切れていないのが現状だ。
LINEの書き込み、転載されトラブル
《レスキュー隊呼んどけよ》
昨年6月28日、熊本県の公立高校に通う2年の女子生徒のLINEにこんな書き込みがあった。身体に危害を加えることをにおわせる脅迫じみた内容だ。
女子生徒は寮生で、脅迫を書き込んだのも同じ寮に暮らす同級生だった。母親が書き込みを見つけ、すぐに担任教師へ相談。担任から連絡を受けた寮監の教師が7月8日に生徒ら2人を話し合わせ、「仲直りさせた」(熊本県教育委員会)かに見えた。
だが、女子生徒は夏休み中の8月17日、自宅で首を吊り、自ら命を絶った。
県教委によると、女子生徒が寮での雑務の不満をLINEに書き込んだことが発端だったという。書き込みを目にした別の生徒が、脅迫を書き込んだ同級生とのLINEに転載し、トラブルになった。
自殺した女子生徒のLINEには、身体的な特徴を揶揄(やゆ)するような書き込みも残っていた。無断で女子生徒の携帯電話を操作したり、卒業アルバムへの落書き、入浴用品を隠すなどのいじめがあったことも分かっている。
LINEでのいじめは周囲からの確認が困難
「LINEいじめ」−。パソコンなどインターネット上を“現場”としたいじめは「ネットいじめ」と呼ばれるが、近年、爆発的に普及したスマホでLINEを悪用したいじめが特に深刻化している。
ネットいじめは、これまでにも「学校裏サイト」と呼ばれる、子供たちが立ち上げた匿名掲示板などで問題化した経緯がある。裏サイトでは、特定の生徒らを無視したり、悪口を書き込むなど悪質化している。
ただし対策がないわけではない。各自治体や学校などの担当者がネット上の掲示板などを巡回し、悪質な書き込みを削除しており、一定の効果を上げてきた。これに対しLINEいじめは、児童や生徒同士の個別の通信で、文科省は「周囲から確認するのが難しい」と説明する。
前述の女子高生の自殺があった熊本県教委の担当者も「LINEいじめへの対策が追いついていないのが実情だ」と打ち明ける。
文科省による25年度の問題行動調査によると、いじめの認知件数は小・中・高校と特別支援学校で計18万5860件となり、前年度より1万2千件余り減少した。一方、ネットいじめは前年度から1千件ほど増え、8787件に上り過去最多となった。
認知件数全体に占めるネットいじめの割合は、小学校1・4%(同1・4%)▽中学校8・8%(同5・8%)▽高校19・7(同14・8%)−となり、高校では2割近くに上っている。
「スマホ禁止」逆効果の恐れも
「閉ざされた空間では、誹謗中傷へのブレーキがかかりにくい」
ネットいじめ防止対策を進める「全国webカウンセリング協議会」の安川雅史理事長は「LINEいじめ」の特徴をこう指摘する。声を出して会話するコミュニケーションよりも、LINEの書き込みによるコミュニケーションがメーンになっている子供もいるという。
こうした現状から、小学生らのスマホ所持規制の試みも増えている。たとえば、鳥取県米子市小中PTA連合会は1月、「ケータイ・スマホ等に関する緊急アピール」を作成した。アピールでは「私たちは、子どもをインターネットの弊害から守るために『小中学生にはケータイ・スマホ等を持たせません』」との宣言が明記されている。
だが、安川理事長は形式的な禁止に警鐘を鳴らす。
「LINEの楽しさを覚えた子供は禁止されれば反発する。スマホが禁止されれば、音楽プレーヤーでLINEを使うこともある。形式的な禁止は、むしろLINEいじめに気付いた保護者が学校から叱責されるのを恐れ、届け出にくい状況をつくる可能性もあり、いじめのエスカレートを招く傾向もある」
対策の要点は、子供たちにLINEいじめの問題点を納得させることだ。安川理事長は「保護者や教師が、LINEの利便性と問題点を十分に理解した上で、家庭や学校で子供たち自身に徹底的に話し合いをさせ、自覚を促すことが必要となる」と話している。
ここには何も新しいものはない。
ネットは現代の体育館裏で裏サイトの掲示板は現代の交換ノートである。そして3人以上で行う交歓ノートが必ず“腐る”のも昔と同じだ。
教員によるネットの巡視やスマホの禁止も、かつての体育館裏等巡視と交換ノート禁止が変形したものにすぎない。
禁止すれば「有益な場合もある」と反論されるのは交換ノートもスマホも同じ。「交換ノートは必ず腐る」と言ってもそれは教員が経験から導き出した「智」であるから説得力がない。
「今までダメだったからこれからもダメという理由にはならない」
そりゃそうだ。
「○○さんと△△さんの交換ノートでは素晴らしいやり取りが行われている」
そういうこともあるだろう。しかしたいていの場合は腐る、今はそういうしかない。
そもそも交換ノートにしてもLINEにしてもそんな私的なもんだになぜ学校が対応しなければならないのか、根本的な問題は常に封印されてきた。
(その点、上の産経新聞の記事はあざとい。女子生徒は寮生で、脅迫を書き込んだのも同じ寮に暮らす同級生だった。だから学校が対応すべきなのだ)
他にやれる人がいないから(実際そうだ)やってくれというなら重い腰を上げてもいい。しかし子どものことはすべて学校の責任だからやるのが当然と言われると素直になれない。
さらに対応しろと言いながら、学校の決め手「携帯・スマホの所持禁止」には反対する。しかも自分の口ではなく他人の口を通して主張するのだ。
だが、安川理事長は形式的な禁止に警鐘を鳴らす。
「LINEの楽しさを覚えた子供は禁止されれば反発する。スマホが禁止されれば、音楽プレーヤーでLINEを使うこともある。形式的な禁止は、むしろLINEいじめに気付いた保護者が学校から叱責されるのを恐れ、届け出にくい状況をつくる可能性もあり、いじめのエスカレートを招く傾向もある」
ではどうすればいいのか。
ここでやめずに一応の対応策を示す点で産経はやや誠実ともいえる。しかし、
対策の要点は、子供たちにLINEいじめの問題点を納得させることだ。安川理事長は「保護者や教師が、LINEの利便性と問題点を十分に理解した上で、家庭や学校で子供たち自身に徹底的に話し合いをさせ、自覚を促すことが必要となる」と話している。
いやはや安川氏も産経新聞も子どもが理解できていない。そもそも人間が分かっていない。
「納得すれば、自覚を持てば、人間は悪いことをしない」というのは極めて馬鹿げた人間観察だ。それに比べたら大昔のクレージーキャッツの方がよほどわかっていた。
「分かっちゃいるけど、やめられない」(「スーダラ節」)
それが人間だ。理解しても行動に移せない、それが普通の人間の姿である。子どもとなればなおさらだ。
LINEによるいじめ防止の決め手はスマホの禁止以外にない。生徒の自覚を促すことはムダではないが、今までやってきて決め手にならないことは明らかである。スマホの禁止がダメだと言うなら、効果の薄い今の対応を甘受するしかないだろう。それが道理というものだ。
*「家庭や学校で子供たち自身に徹底的に話し合いをさせ、自覚を促すことが必要になる」――このアドバイスに従って学校が春夏2回、5時間も10時間も授業をつぶして話し合ったら産経新聞は満足してくれるだろか。そのほか「なぜ人を殺してはいけないのか」とか「違法薬物」のこととか、産経が「徹底して話し合え」と言ってきたことはたくさんあるのだが・・・。
2014.11.28
ジャポニカ学習帳から昆虫が消えた 教師ら「不快」→苦渋の決断
[withnews 11月27日]
1970年の発売以来、累計12億冊を販売した「ジャポニカ学習帳」。表紙にカブトムシなどの大きな写真が入っているのが特徴でしたが、2年前から昆虫の写真を使うのをやめていたことが分かりました。きっかけは、教師や親から寄せられた「気持ち悪い」という声だったといいます。
【30年以上、一人のカメラマンが撮影】
文具メーカー「ショウワノート」のジャポニカ学習帳は、来年で発売45周年になるロングヒット商品。すべて富山県にある本社工場で作られていて、学年や科目ごとに異なる約50種類が販売されています。商品の形に商標権を認める「立体商標」として認められるなど、抜群の知名度を誇ります。
そんなジャポニカ学習帳の特徴の一つが、表紙を飾る写真です。1978年以降、カメラマンの山口進さんが撮影したものが使われています。
「アマゾン編」「赤道編」といった、様々なテーマがあり、山口さんは世界各地に滞在して数カ月かけて撮影してきました。
こうした声は10年ほど前から寄せられたといいます。それほど多くはなかったそうですが、ショウワノートは昆虫写真を使わないことに決めました。
「学校の授業や、家に帰ってからの宿題。お子さんがノートを使う機会は多いです。もしかしたら友達と一緒にいる時間より長いかもしれません。学校の先生もノートを集めたり、添削したりと、目に触れる機会は多いと思います。そんな商品だからこそ、一人でも嫌だと感じる人がいるのであればやめよう、ということになりました」
多いときはジャポニカ学習帳の半分近くを占めていたという昆虫の写真。ショウワノートにとっては苦渋の選択でしたが、改版するたびに徐々に減らし、2年前に姿を消しました。
世相を反映した対応とはいえ、表紙の珍しいカブトムシやチョウが大好きだった人からすれば、寂しく感じられるかもしれません。
東日本大震災直前くらいまで、評論家やマスメディアは日本の悪口さえ言っていれば商売になる、そういう時代が長く続いた。曰く、
「そんなことをやっているのは日本だけですよ」
「そういうことをしているから日本は世界からバカにされるんです」
しかし震災この方、日本及び日本人の特性が海外から高く評価されていることを知り、彼らは一斉に方向転換をした。今や書店に横積みされているのは嫌韓嫌中本ばかりだ。
しかし基本的態度として変わらないものもある。公務員や教員を叩いていれば誰も文句を言わず、評論家の出番は増えマスコミ商品は売れるという方向である。
きっかけは、教師や親から寄せられた「気持ち悪い」という声だった
こうした声は10年ほど前から寄せられた(略)それほど多くはなかった
だったら昆虫写真を辞める理由にはならないだろう。
一人でも嫌だと感じる人がいるのであればやめよう、ということになりました
1億2千万人以上もいるこの国で、そんなことを言ったら何もできないだろう。この世に花の嫌いな人はいないのか?
そしてその程度のことなのに、
教師ら「不快」→苦渋の決断
が見出しなのだから、もうこれは喧嘩を売っているとしか思えない。
虫の写真を「不快」といった教員はいたかもしれないが、彼をして教師の代表とされては迷惑だ。
この記事を見て、「だから教師はダメなんだ」「だから日本の教育はなっていない」そんな雰囲気を醸成することで、メディアは何を達成しようというのか。
本気で日本の教育をつぶす気なら、まず代案を示してもらいたい。
*なお、ジャポニカ学習帳から昆虫が消えたのは「写真が不足したため」という、なんともあっけらかんとした話がある。以下、日経新聞から引用する。
虫嫌いのママも納得 昆虫と仲良く暮らす秘訣
[日本経済新聞 11月28日]
日常生活で昆虫を目にする機会が減っている。広く使われている学習帳の表紙からも、定番の一つだった虫の写真がなくなった。世の中から虫好きがいなくなってしまったわけではないが、虫との触れ合い方が昔とは変わってきているようだ。人と虫とのかかわり方について最近の事情を探ってみた。
■定番ノートから昆虫が消えた
多くの人が小学生時代などにお世話になった「ジャポニカ学習帳」。表紙に世界中の様々な風景や生き物の写真をあしらった学習ノートで、1970年の発売以来累計10億冊以上が売れているロングセラー商品だ。表紙の写真は、海外の珍しい昆虫なども多かったが、近年ちょっとした“異変”が起きている。
文具店の店頭を見ると、現在のジャポニカ学習帳の表紙はなぜか大半が花の写真。昆虫の写真は1冊もない。どうしてなのか。販売元のショウワノート(富山県高岡市)によると、表紙に使う写真はいずれも「ジャポニカ学習帳特写取材班」が世界中で撮影した貴重なオリジナル写真。改版は4年に1度で、「現シリーズ『アフリカ編』は、撮影できる昆虫の数が少なかったため、植物の表紙になった」(版権部)という。
もう昆虫は表紙に登場しないのか。版権部に尋ねると「今後、シリーズが変わるタイミングで昆虫が再登場する可能性はあるかもしれませんが……」という。
■子どもたちの間ではヒーロー
昆虫は子どもたちの「嫌われ者」になった? 否、子どもたちの間ではむしろヒーローになっているものもある。
2003年にアミューズメント施設に登場し一大ブームとなったセガ(東京・品川)のトレーディングカードゲーム「甲虫王者ムシキング」。「ギラファノコギリクワガタ」や「ヘラクレスオオカブト」など世界中の実在する昆虫が描かれたカードでバトルする。セガによると、ゲーム機は09年12月に稼働停止したが、カードの累計出荷枚数は4億枚以上。稼働停止後もファンの声は根強く、13年8月にはカメラ撮影した写真で様々な虫が出現するスマホ型トイも発売された。
海外でも子どもの虫人気が高まっている。フランスで1998年に制作が始まったアニメ「オギー&コックローチ」。3匹のゴキブリが準主役のドタバタコメディーだ。フランスでもゴキブリは好かれる昆虫ではないはずだが、このアニメはフランスで幅広く知られ、2〜10歳児の96%が知っている。12年に続編の放送が始まり、映画化の企画も発表された。
■「姿を見ずに駆除や予防ができる」商品が人気
虫嫌いの子どもが増えているわけではないのだ。だとすると、学習ノートから昆虫写真が消えた本当の理由は? ショウワノートに改めて尋ねると、「お母さんが虫を苦手とする傾向があることも表紙から虫を遠ざけている一因になっている」(版権部)との声ももれた。
(中略)
■極端な虫嫌い、子どもに悪影響も?
一口に虫嫌いといっても、「虫そのものが嫌いなのではなく、臭いや汚れが嫌い」という人が案外多いのかもしれない。ただ、40年以上免疫学を研究し続けている人間総合科学大学の藤田紘一郎教授は「母親の過剰な虫嫌いは、子どもの身体や精神に悪影響を与えかねない」と警鐘を鳴らす。
清潔さを追求するあまり、異物を排除しようとする傾向が強まる危険があるとともに、本来は人間の個性の一つでもある臭いを必要以上に嫌うことが、個性や情熱などの感性を失わせる結果につながりかねないとも指摘。「昆虫嫌いも『過剰な清潔志向』の延長線上にあるのではないか」と藤田教授は分析する。
免疫力に影響を及ぼす可能性もある。免疫力をつけるのに大きな役割を果たす腸内細菌の組成パターンは生後1年までに決まるとされ、赤ちゃんは身の回りにある物をなめたりすることで必要な細菌を体内に取り込んでいる。だが「生活環境をあまり清潔にし過ぎると、赤ちゃんが細菌を体内に取り入れることができなくなってしまう」(藤田教授)という。
「虫好き」と「清潔好き」の奇妙な共存は、人間と虫のかかわり方の新たな形を映しているのかもしれない。
(電子報道部 松本千恵) |