キース・アウト
(キースの逸脱)

2015年 3月

by   キース・T・沢木

サルは木から落ちてもサルだが、選挙に落ちた議員は議員ではない。
政治的な理想や政治的野心を持つ者は、したがってどのような手段を使っても当選しておかなければならない。
落ちてしまえば、理想も何もあったものではない。

ニュースは商品である。
どんなすばらしい思想や理念も、人々の目に届かなければ何の意味もない。
ましてメディアが大衆に受け入れられない情報を流し続ければ、伝達の手段そのものを失ってしまう。

かくして商店が人々の喜ぶものだけを店先に並べるように、 メディアはさまざまな商品を並べ始めた。
甘いもの・優しいもの・受け入れやすいもの本物そっくりのまがい物のダイヤ
人々の妬みや個人的な怒りを一身に集めてくれる生贄
そこに問題が生まれれば、今度はそれをまた売ればいいだけのことだ。


















2015.03.18

高3の英語力中卒並み 文科省調査「書く」で0点3割

[東京新聞  3月17日]


 文部科学省は十七日、高校三年生を対象に英語の「読む、聞く、書く、話す」の四技能の学力を調べた英語力調査の結果(速報値)を公表した。「読む、聞く」の平均的学力は英検三級(中学卒業程度)相当、「書く、話す」はさらに低く、書くは過半数が正解率一割以下だった。国の教育振興基本計画の目標(高卒時英検二〜準二級程度)とは大きな差があり、英語嫌いの生徒も多かった。

 調査は国公立高校の約一割の四百八十校を抽出し、三年生約七万人を対象に実施。

 四技能それぞれを試験し、国際標準規格「CEFR」の基準で、学力が中学レベル(A1=英検三〜五級程度)から海外大学留学に必要なレベル(B2=同準一級程度)のどの段階に相当するかを調べた。

 試験結果では、「読む」の平均点は一二九・四点(満点三百二十点)で72・7%がA1評価。「聞く」は一二〇・三点(同)でA1が75・9%。B2評価は0・2〜0・3%だった。

 「書く」でB2評価はわずか五人。英語の音声を英文要約する不慣れな出題形式も影響して点が伸びず、百四十点満点中十五点以下が約55%に上り、零点も約三割いた。「話す」は各校一クラス程度の抽出実施で、A1が87・2%を占めた。

 アンケート調査では、英語を嫌いな生徒が58・4%。海外留学やビジネスに必要なレベルの習得を目指す割合も約14%にとどまった。

 同省は「二〇一三年度から目標達成に取り組んでいるが、課題が明らかになった。意欲やコミュニケーション力を伸ばす授業改善が必要」とし、三月中にも詳しい分析や先進授業例をまとめる。


 ここまで目標が達成できないとなると、そもそも目標設定が間違っているか「目標」というものの捉え方が違っているのかもしれない――そういう考える人はいないのか。
 たとえば「小学校6年生段階で100m走10秒00以下」というのは目標として間違っている。絶対達成できないからだ。
 「家庭でできる運動としては、毎日1万歩以上歩くことが目標」というとき、これは努力目標であってぜひとも達成しなければならないものではない。80歳のお年寄りや2歳の子どもに要求するのは酷だ。
 では学力の目標とは何か。

 国の教育振興基本計画の目標(高卒時英検二〜準二級程度)
 というとき、これを達成目標と考えると非常の辛いことになる。英語が堪能の方は過去問を見て、これが日本のすべての高校生が乗り越えるべきハードルかどうか判断していただきたい(例 平成26年度第三回問題冊子)。
 
 英語が苦手なかたは私と一緒に漢字検定2級(高卒程度)で代用しよう(例 平成25年度第一回検定問題)。

 例えば
 第4問 問い1 次の四字熟語の(1〜10)に入る適切な語を下の□の中から選び、漢字2字で記せ。
 ア 鼓舞( 1 ) イ 精進( 2 ) ウ 百八( 3 )  エ 合従( 4 )
 オ 温厚( 5 ) カ ( 6 )牛後 キ ( 7 )自重  カ ( 8 )一虹
 キ( 9 )休題  キ ( 10 )奮闘
いんにん かんわ けいこう げきれい けっさい こぐん とくじつ ばんりょく ぼんのう れんこう
 
 たくさん答えられる人もいればまったくダメな人もいるだろう。しかし問題は、これが高校卒業時、すべての生徒ができなければならないレベルのものなのかということである。
 もちろんそうではない。できて欲しいができなくても仕方のないといった程度のものだ。
 
 高校のレベルで考えるとややこしいので中学校で考えると、
「中学校3年生の学習内容は、すべての生徒がクリアすべきものか」ということになるが、これもそんなことはない。
 私たちは「中学校の学習内容をすべてクリアしている」ような子を天才と呼ぶからだ。5教科500点満点で500点をとれば、それくらいの言われ方をしてもいいだろう。それどころか全体の8割5分も理解できていれば「かなり頭がいい」などと言われる。点数にして425点だ。
 人数で言えば全体の5%〜10%ほど。なぜそこまで
確定的な数字が出せるかというと、田舎の場合、425点もあれば地域のトップ校にギリギリ合格できる。そしてトップ校の定員は、どこもだいたい5〜10%だからだ。
 そうした現状に対して、しかし、
「中学校卒業段階で学習内容の85%以上を理解している生徒はわずか5%」とか「なぜ全員にせめて80%以上の学力をつけてやらないのだ」と嘆く人はいない。

「中学生全員が常に5教科で400点以上を取れる教育」など不可能だと知っているからだ。

 
(高校3年生の)「読む、聞く」の平均的学力は英検三級(中学卒業程度)相当、
 この数字はむしろ立派なのかもしれない。