キース・アウト
(キースの逸脱)

2017年 2月

by   キース・T・沢木

サルは木から落ちてもサルだが、選挙に落ちた議員は議員ではない。
政治的な理想や政治的野心を持つ者は、したがってどのような手段を使っても当選しておかなければならない。
落ちてしまえば、理想も何もあったものではない。

ニュースは商品である。
どんなすばらしい思想や理念も、人々の目に届かなければ何の意味もない。
ましてメディアが大衆に受け入れられない情報を流し続ければ、伝達の手段そのものを失ってしまう。

かくして商店が人々の喜ぶものだけを店先に並べるように、 メディアはさまざまな商品を並べ始めた。
甘いもの・優しいもの・受け入れやすいもの本物そっくりのまがい物のダイヤ
人々の妬みや個人的な怒りを一身に集めてくれる生贄
そこに問題が生まれれば、今度はそれをまた売ればいいだけのことだ。


















2017.02.09

心配な先生の「心の健康」
精神疾患で休職、5,000人超が続く


[ベネッセ教育サイト 2月8日]


学校はこれから年度末に向けて、一年で最も忙しいシーズンを迎えます。ただでさえ教員の多忙化が指摘されるなか、くれぐれもメンタルヘルス(心の健康)には留意してほしいものです。先生方のメンタルヘルスの現状は、どうなっているのでしょうか。


減ったとはいえ184人に1人の割合

教員のメンタルヘルスについて実態の一端を示すのが、病気休職者のうち精神疾患を理由とする者の推移です。文部科学省は毎年、公立学校教職員の人事行政について調査していますが、2015(平成27)年度の精神疾患による病気休職者は全国で5,009人となっており、3年連続で5,000人を超えました。在職者数に占める割合は0.54%で、184人に1人が精神疾患で休職している計算になります。ピークだった2009(平成21)年度(休職者数5,458人、割合0.6%=168人に1人)に比べれば低く、この3年間にしても微減が続いていますから、悪化しているとは言えないのですが、依然として深刻な課題であることは間違いありません。

割合を学校種別で比べれば、小学校が0.55%、中学校が0.64%、高校が0.37%、特別支援学校が0.66%など、義務教育段階、とりわけ中学校で多いのが気になります。日本の中学校教員は<世界一忙しい>ことが、経済協力開発機構(OECD)の調査でも明らかになっているところです(2013<平成25>年「国際教員指導環境調査」=TALIS)。

職種別では、校長が0.07%、教頭を含む「副校長等」が0.23%と管理職では低いのに対して、学級・教科担任など一般の「教諭等」は0.60%と高くなっています。

年代別では、20代が0.50%だったのに対して、30代以降では0.61〜0.63%と増加します。休職者に占める割合を計算すると、20代が11.3%、30代が22.3%、40代が27.8%、50代以上が38.7%と、50代以上が突出しているように見えますが、そもそもの年齢構成(20代13.6%、30代21.5%、40代26.7%、50代38.2%=2013<平成25>年度学校教員統計調査)と比べれば、むしろ30・40代に多いことがうかがえます。この世代は採用数が抑制された影響から、極端に層が薄いうえに、学校の中堅として多くの仕事が期待されていますから、それだけストレスも高まっているようです。


対策は次々と打ち出されても…

注意したいのは、精神疾患を理由にした休職者というのは「氷山の一角」であるということです。その背後に、病気休職一歩手前の「予備軍」が相当数いることは確実です。また、精神疾患以外を理由にした病気休職者の中にも、実はストレスによる体の不調が含まれている可能性も捨て切れません。

産休などと違って、病気休職には、国からの代替補充がありません。学校に迷惑は掛けられないからと、無理をして出勤しているケースも少なくないと見られます。そうなると、ますます心を病むばかりか、子どもの指導にも悪影響をもたらしかねません。

文科省が教職員のメンタルヘルス対策を打ち出したのは、2013(平成25)年3月。その後も多忙化解消のために、「チーム学校」の提唱(2015<平成27>年12月の中央教育審議会答申)、業務適正化の提言(16<同28>年6月)などを行い、松野博一・文部科学相は今年初めに改めて業務適正化のメッセージを発表しています。しかし、教育現場の努力にも限界があります。先生の数を大幅に増やすか、業務を抜本的に見直すかしなければ、学校は持たなくなるかもしれません。

公立学校教職員の人事行政状況調査(2015年度)

(筆者:渡辺敦司)



 この話題についてはほぼ毎年あつかっているのでいまさら付け加えることもない。
 ただし今回のベネッセの記事について言えば休職者の数を教員の年齢構成と対比して
むしろ30・40代に多いことがうかがえます
としたところが新しい。
 また、
 
この世代は採用数が抑制された影響から、極端に層が薄いうえに、学校の中堅として多くの仕事が期待されていますから、それだけストレスも高まっているようです。
 という分析もおそらく正しいのだろう。
 
 
背後に、病気休職一歩手前の「予備軍」が相当数いることは確実です。また、精神疾患以外を理由にした病気休職者の中にも、実はストレスによる体の不調が含まれている可能性も捨て切れません。
 も私が以前から訴えてきたことだ。
 
 もうひとつ、今回の記事で気持ちが引かれたのは
 
職種別では、校長が0.07%、教頭を含む「副校長等」が0.23%と管理職では低い
 という部分。
 もし精神疾患の原因が多忙だけだったとすると、この結果は解せない。なぜなら
教頭を含む「副校長等」の多忙さは一般職の比ではないからだ。

 もちろんタフな教員だけが管理職に就いているという仮説も成り立つ。
 年齢的に言って子どもが独立している場合が多く家庭に不安がない、そういう仮定も可能だ。
 しかしそれがすべてだろうか?
 
私は多忙さだけではなく、最前線の一般教諭にかかる個別の問題について、さらに検討が必要だと思っている。
 
 最後に、記事が結論とした、
 
教育現場の努力にも限界があります。先生の数を大幅に増やすか、業務を抜本的に見直すかしなければ、学校は持たなくなるかもしれません。
 も基本的に賛成だ。
 ただし業務を見直したところで、できることはたかが知れていると思う。

 学力を上げてほしい、いじめ対策をしっかりやってほしい、不登校対策も十分に、しつけのきちんと教えてほしいい、食育や環境教育も忘れないように、世界に通用する英語力を、プログラミング教育の徹底、キャリア教育を――と、学校に寄せられる期待や仕事は増えることはあっても減ることはないのだから。
 






2017.02.11

ブチ切れ女性教員の本音炸裂
教育困難校「勤務」ブログがすごい


[J-castニュース 2月11日]


「教育困難校に勤務してるけど、もう無理」――。こんなブログ記事がネットに投稿され、話題を呼んでいる。

ブログ主は自身について、いわゆる「教育困難校」に勤務する教師だとしている。内容から女性とみられる。「ババアとかブスとか、死ねとか言われまくって」と、仕事の苦労を切々と綴っている。ブログ内容は広く拡散され、共感の声が相次いでいる。


「ちょっと強く言ったら、教育委員会に言うぞとか...」

 ブログ記事は17年2月7日、「はてな匿名ダイアリー」に投稿された。タイトルは「教育困難校に勤務してるけど、もう無理」。

「毎日、授業にもならなくて、毎日、ババアとかブスとか、死ねとか言われまくって、ちょっと強く言ったら、教育委員会に言うぞとか、体罰だとか騒がれて、でもそれが教員の仕事でしょ、って言われて、そういう子に情熱を傾けるのが教員でしょ、それがやりたくて教員になったんでしょ、って」
「公務員の給与プラスアルファで、朝7時から夜9時まで、昼休みなんて、パンを体内に詰め込む5分くらいで、クレームにうまく対応しながら、全く学校に行かない日なんて月に2、3日でも、休みの日だって狭い生活圏で、あの人は先生だって周囲に見られながら生活して」と生徒とのコミュニケーションの難しさ、仕事の辛さをぶちまける。

さらに、
「こんな目に遭うことまで想定して、教員になる奴なんていねーよバーーーカ!!」

と吐き捨て、
「高校は、社会に出てから少しでも苦労しないように色々経験するところで、好きにやりたいなら、社会に出たらいい。そう思ってしまうのは、教員失格なんだろうか」

と読者に問いかけた。最後には、次年度で退職するつもりだと報告している。やり場のない不満、鬱憤が文章からにじみ出ている。

 タイトルのインパクトもあり、ブログは投稿後すぐに拡散。

「逃げ出さずに良く頑張ってるよ 」
「かつての私がここにもいる」
「デキる人ほど貧乏くじ回ってくるよね」

と労り、共感の声が集まった。


生徒が「お前も鬱でやめさせたろか」

いわゆる「教育困難校」とは、いじめ、不登校、学業不振、貧困、家庭崩壊などさまざまな困難を抱えた生徒が多く集まる学校で、特に高校を指すケースが多い。

今回のブログに限らず以前から、教育困難校の教師らはネットで愚痴をこぼしていた。たとえば、掲示板サイト「2ちゃんねる」の「教育・先生板」には、「困難校勤務教師の本音」と呼ばれるスレッドがある。2月9日時点で「パート25」と、かなり「住人」が多い。

そこでは、教師と思われる「住人」が悲惨な実体験を明かしている。最初の授業で、女子生徒から「前の教師も鬱で学校辞めさせた。お前も鬱でやめさせたろか」と言われた、という例や、複数の生徒が、授業中に教室内を徘徊したり、トイレに何度も立ったりするという嘆き節などが書き込まれている。




 読んできて最後の一行で心理的に躓いた、というか前のめりに倒れそうになった。
「で、ナンダ!?」
 みたいな文だ。

 おまけにあれだけ激しい文を
嘆き節の一言で片づける冷淡にも驚く。

 その表現にしろタイトルにしろ、尻切れでトンボで切り上げる手口にしろ、
 
でもそれが教員の仕事でしょ、って言われて、そういう子に情熱を傾けるのが教員でしょ、それがやりたくて教員になったんでしょ
という記者の内心の声が聞こえてきそうだ。
 だったら取り上げなければいいのに・・・。

 さて、教員の仕事が過酷だということは常識だと思う。
 少なくとも「よくわからないが大変らしい」程度には知られた話だ。

 だから「はてな匿名ダイアリー」の投稿者が決してお上品とは言えない表現で、
「こんな目に遭うことまで想定して、教員になる奴なんいねーよバーーーカ!!」と嘆いているのは仕事の大変さではない。

毎日、授業にもならなくて、毎日、ババアとかブスとか、死ねとか言われまくって、ちょっと強く言ったら、教育委員会に言うぞとか、体罰だとか騒がれて、でもそれが教員の仕事でしょ、って言われて、
という指導の対象者からの、残酷な扱いのことなのだ。

 
金八先生の生徒だったら反抗しながらも目の表情や態度から信頼のサインがチラホラ見られたものを、現実のガキは容赦がない。

 感謝しろとは言わないが、尊敬城ともいわないが、尊重ぐらいはしろ!

「誰のために苦労してるんだ!!」と叫びたくなるのを(言っても煽るだけなので)ぐっと我慢して言葉を飲み込み、その悪態をつく子どもたちのためにまた歩き出す、その空しい繰り返しが耐えがたいと言っているのだ。
 
 さらに、
 子どもはそういうものだと覚悟して、立ち向かおうとしても教師の背後の大人の社会は、これがオール与党とはいかない。

 どんなに真剣に叫んでも、J-castの記者にとって投稿者は 
ブチ切れ女性教員でしかないし、
 その言葉は
吐き捨てであり、不満、鬱憤であり、ネットで愚痴であり、嘆き節でしかないのだ。
 
 
前門の生徒、後門のメディア
 
 確かに若い教員が「もう、無理」と思うのも分からなくはない。
 
 この仕事、もうひとには勧められないものなのかもしれないな。誰も教員を志さない時代が来ればいい!!


*「はてな匿名ダイアリー」の投稿原文はこちらから→「教育困難校に勤務してるけど、もう無理」







2017.02.16

教諭過労自殺、父親が県など提訴
「校長が安全配慮義務怠る」


[福井新聞 2月15日]


 福井県若狭町上中中の新任教諭だった嶋田友生(ともお)さん=当時(27)=が2014年に長時間過重労働で精神疾患を発症し自殺したのは、校長が安全配慮義務を怠ったためとして、嶋田さんの父親が県と若狭町を相手に、慰謝料など約1億100万円の損害賠償を求め14日、福井地裁に提訴した。

 訴状などによると、嶋田さんは4年間の臨時職員を経て14年4月、新採用で同校に赴任。1年生の学級担任や野球部の副顧問を務めていた。過重労働により6月にうつ病など精神疾患を発症したとみられ、10月に車内で練炭自殺した。発症前の4〜6月は月128〜161時間の時間外勤務があった。勤務していた記録がないのは、月2〜3日だった。

 訴状では、生徒指導や保護者対応、上司からの厳しい指導などによる、強い心理的負荷が嶋田さんにあったにもかかわらず、校長が業務量の軽減や新任教諭への配慮を怠ったなどとしている。県は県教委の設置主体で校長の費用負担者。県教委は校長の任用権者。若狭町は同校の設置者。

 地方公務員災害補償基金県支部(支部長・西川一誠知事)は昨年9月、遺族の公務災害認定申請に対し、長時間労働による精神疾患が自殺の原因だとして、公務災害と認定した。

 県教委は「これまでも長時間勤務の縮減を進めているが、今回の訴状はまだ届いておらずコメントできない」、若狭町教委は「今後訴状の内容を見て誠意をもって対応したい」とコメントした。




 毎朝1時間早く出勤して夜は9時まで。月に21日勤務だとこれだけで超過勤務は105時間。さらに持ち帰り仕事が1日2時間で土日には部活・・・まあ軽く
128〜161時間の時間外勤務にはなるわなぁと思う。
 
 私と同じ社会科だそうだが、この教科、教材研究が際限ない。
 例えば「織田信長」は教科書上は「尾張(愛知県)の織田信長は天下統一に乗り出しました」程度だが、それだけの知識では授業にならない。

 まず「天下統一」という言葉自体を、中学生に分かるように説明できなくてはならない。
 どういう手順で、どういう政策をもってそれが果たされたか、その影響はどうだったのか。信長という人がどんな人なのか、子孫は今も生きているのか等々、およそ中学生が思いつきそうな質問の大部分に答えられるようにしておかなければならない。
「この先生は何も知らん」と思われたら授業にならない。

 また知識があればそれで授業になるわけではない。知識が増えれば増えるほど捨てるものも多くなる。何を捨て何を拾うのか、どういう資料がもっともよく事象を説明するか、
 探し出して整理して、生徒たちの目に見えるようにしなければならない。

 文章ならWordに向かう。図版ならスキャナを動かす。プリントする、ラミネートして裏に磁石を張る・・・そんなことをしているうちに時間はどんどん過ぎてしまう。
 
 しかし中学校の教諭は
教科を教えていれば済むという仕事ではない。
 担任だったら
道徳の授業総合的な学習の時間
 一口に
特別活動とっても学級活動に学校行事(入学式・卒業式などの儀式的行事、修学旅行・遠足などの旅行的行事、音楽会・文化祭などの文化的行事、運動会・体育祭など体育的行事)、キャリア教育。

 
部活の副顧問として練習には可能な限り出席し、安全にも配慮しなければならない。それで対外練習試合の申し込みだの体育館の確保だの、あるいは電車切符の手配だの練習計画プリントの作成などがない分、主顧問よりは楽だと言える。
 
生徒会顧問としての仕事も少なくない。自分一人でやればよほど早い仕事も生徒に指導し、やらせなければならない。教育だからだ。
 それらはすべてを丁寧にやっているところに突然電話が入る。

 教頭だったり、教務主任だったり、学年主任だったり。保護者や警察からの電話も同じだが、外から入る電話がいい話だったためしがない。
 
生徒指導事案がひとつでも入ればすべてのルーティーンワークが停止し、後回しにされる。
 解決可能な問題だけならいいが、不登校だのリストカットだのといった話だと埒が開かない。努力が成果に結びつかない。
 問題は長時間労働ではない。
見通しがつかないこと、先が読めないこと、がんばっても評価されないこと・・・。
 
 30年以上待ったが一歩も進まないところをみるともうだめかもしれない。
 天下の電通社員の死と一介の田舎教師の死とでは重みが違うのだ。
 
 
 
参考
教員採用半年で自殺、残された日記 長時間労働で精神的不安、睡眠恐怖(2016年12月9日)

 疲れました。迷わくをかけてしまいすみません―。福井県若狭町の中学校の社会科教諭、嶋田友生(ともお)さん=当時(27)=は中学時代から毎日欠かさず付けていた日記にこう残し、自ら命を絶った。教員採用されてからわずか半年だった。長時間労働などにより精神的に追い込まれる教員は福井県内でも少なくない。教育現場からの「叫び」をリポートした。

 ■希望と不安

 友生さんは4年間の中学校学習支援員、講師を経て2014年4月、中学校教諭に採用された。1年生の担任を受け持つことが決まり迎えた入学式。同6日の日記には「21名の子どもたちを前にしてワクワクするとともに、不安もひしひしと感じた」と記した。

 半年後の10月6日。初めて学校を休んだ。体調が悪そうな友生さんに母が病院に行くよう勧めたが「病院かあ。ぼちぼち行くわ」。昼すぎ、友生さんは学校に行くと告げて車で家を出た。母は毎夕、友生さんにメールをするのが日課だったが、この日は返信がこなかった。翌7日、母の実家で友生さんの車が見つかった。車中には練炭。友生さんは一酸化炭素中毒で死亡していた。

 ■161時間

 友生さんは、講師時の中学校と当時の勤務校との授業スタイルや指導方法の違いに悩んでいた様子だったという。友生さんの父・富士男さん(56)は「5月ごろから疲れた表情を見せるようになった」と振り返る。初任者研修の一環としての授業を10月中旬に行う予定だったが、この指導案作成にも苦労しており、口内炎ができたり、食欲が落ちたりと様子は悪化していった。亡くなる前日には頭を悩ませている様子で、「あかん。なかなかできん」と母に話していたという。

 使用していたパソコンなどの記録から、4〜6月の時間外業務は月128〜161時間に上ると見られている。