キース・アウト
(キースの逸脱)

2017年 7月

by   キース・T・沢木

サルは木から落ちてもサルだが、選挙に落ちた議員は議員ではない。
政治的な理想や政治的野心を持つ者は、したがってどのような手段を使っても当選しておかなければならない。
落ちてしまえば、理想も何もあったものではない。

ニュースは商品である。
どんなすばらしい思想や理念も、人々の目に届かなければ何の意味もない。
ましてメディアが大衆に受け入れられない情報を流し続ければ、伝達の手段そのものを失ってしまう。

かくして商店が人々の喜ぶものだけを店先に並べるように、 メディアはさまざまな商品を並べ始めた。
甘いもの・優しいもの・受け入れやすいもの本物そっくりのまがい物のダイヤ
人々の妬みや個人的な怒りを一身に集めてくれる生贄
そこに問題が生まれれば、今度はそれをまた売ればいいだけのことだ。


















2017.07.04

公立小中学校の教員数 全国で700人以上不足

[NHK 7月 4日]


全国の公立の小中学校の教員の数が、ことし4月の時点で定数より少なくとも700人以上不足し、一部の学校では計画どおりの授業ができなくなっていることがNHKの取材でわかりました。これまで欠員を埋めてきた臨時採用の教員の不足が要因と見られ、専門家は「国や自治体は早急に実態を把握し、対策を検討すべきだ」と指摘しています。

全国の公立の小中学校の教員は、国が学校ごとの児童や生徒の数に応じて毎年、定数を算出し、それをもとに各地の教育委員会が配置しています。

NHKが全国の都道府県と政令指定都市、合わせて67の教育委員会に教員の定数とことし4月の始業式の時点での実際の配置状況について尋ねたところ、全体の半数近い32の教育委員会で定数を確保できず少なくとも717人の教員が不足していたことがわかりました。

このうち福岡県内では担当教員の不在で技術や美術の授業をおよそ2か月間実施できない中学校があったほか、千葉県内では小学校の学級担任が確保できず教務主任が兼務する事態も起きています。

専門家によりますと、背景にはこれまで欠員を埋めてきた臨時採用の教員の不足があるということで、教員の配置に詳しい慶應義塾大学の佐久間亜紀教授は、「臨時採用など非正規の教員は雇用が不安定で給料が低く確保が難しい状況にある。国や自治体は早急に事態を把握し、採用計画を見直すなど対策を検討すべきだ」と指摘しています。

義務教育の授業に支障
臨時採用の教員不足で授業が出来なくなっている学校が相次いでいます。

関西地方の中学校では美術の教員が病気で休職し、学校は代わりの教員を教育委員会に求めましたが「とにかく見つからない」という回答が来たといいます。
その後、教員は見つかりましたがおよそ3週間にわたって別の教科に振り替えることになり、美術の授業ができなかったということです。

また、熊本県天草市の本渡中学校では、ことし5月に英語の教員が病気で休職したあと2か月近くたった今も代わりの英語教員が見つけられていません。
この中学校では昨年度まで、1年生の英語の授業でクラスを半分に分け少人数できめ細かい指導を行ってきましたが、今年度は教員が足りず大人数のままでせざるをえない状況です。
中学校は県の教育委員会に「臨時採用」の教員を要請しましたが、隣の県まで探してもらったり、ハローワークに求人を出してもらったりしても見つかっていません。
本渡中学校の岩崎宏保校長は「子どもたちの学力保証に大きく関わる問題だが、教員はなかなか見つからず非常に厳しい状況です」と話しています。

苦肉の策でしのぐ学校も
「臨時採用」が見つからず「特例制度」を活用した苦肉の策で教員を確保している学校もあります。 
高知市の大津小学校では4月から産休に入った教員に代わり、幼稚園の教員免許しか持っていない教員を「臨時採用」として、音楽の授業を受け持ってもらう苦肉の策で急場をしのいでいます。

教員の免許は、幼稚園・小学校・中学校などにわかれていますが、この学校では、「いずれかの免許を持っていれば指導能力があることを条件に、3年間に限って免許の範囲を超えて指導できる」という法律で認められた特例制度を活用しました。
大津小学校の西尾豊子校長は、「教員がきちんと配置されていないと、十分な教育が提供できないので積極的に制度の活用に踏み切った。教員の絶対数が足りない中、のんびり構えている訳にはいかない状況です」と話しています。

                  
文科省「教員の働き方改善を議論」
全国の小中学校で教員不足が相次いでいることについて、文部科学省の佐藤光次郎教職員課長は「最近、特に出産や育児などで休職する教員が増えていることもあり、臨時教員の確保が難しくなっている課題があることは受け止めている。子どもたちの学習環境を維持するために必要な教員を確保することは基本なので、国としてもしっかり対応しなければならない」と話しています。

そのうえで佐藤課長は、対策について「教員の仕事の負担が重かったり多忙になったりということがネックとなり、教員のなり手を十分に確保できていないことが背景にあると思う。教員の働き方は使命感や、やりがいと表裏一体だと思うので、それについてもどう改善していくか幅広く議論し、人が集まるような環境にしていきたい」と述べています。


専門家「国の予算増必要も」
また、教員不足の問題に詳しい慶應義塾大学の佐久間亜紀教授は「臨時教員を含め教員になりたいと思う人を増やしていくために、給料だけではなくて働き方や待遇を改善するなど各教育委員会や国は教員の魅力作りを進めていく必要がある」と指摘しています。

そのうえで、佐久間教授は「将来的には正規採用の教員を充実させていく必要があるが、国の予算が増えない中で各教育委員会の努力だけでは難しい状況がある。自治体の裁量の範囲では格差が出てしまう問題でもあるので、国の支援、対策は欠かせない」と述べ、将来的には国が予算を増やすなどして教員採用の在り方自体を見直していく必要があると指摘しています。




 今朝(2017.07.04)のNHKニュースの一部(「今朝のクローズアップ」7:20ごろ)で「全国で不足する教員」といった内容の特集があり(タイトルは見落とした)、思わず耳を傾けた。その中でさまざまに問題を感じ、Webに記事が上がるのを待ってもう一度考えようと思った、その待っていた記事が上のものである。

 ところがWeb記事と放送、同じ内容で同じ場所に取材に行ったはずなのに、扱いが少しずつ違う。そしてその結果、全体の印象も変わってしまったように思うのだ。

 Web記事の方は読んでもらうことにして、朝のニュースはこんな扱いだった。
@ 出産などで欠員が生じた場合は臨採(臨時採用者)で補充するが、その確保が難しくなっている。背景にあるのは少子化を見越した教員採用の見直しだ。
A 今後少子化が進むと教員の定数が削減されるため、教育委員会は予め正規教員の採用を抑え、臨採の枠を広げている。
B しかし枠を広げる一方でなり手の方は思うように増えていない。そこで現場が「教員不足」といったことになる。
C 一昨年、全国で発行された助教諭免許(例えば幼稚園の教諭免許所有者に小学校で働いてもらうために与える3年の期限付き免許)は5000件。いかに現場が切羽詰まっているかがわかる。
D ただし実は教員免許の取得者数はそれほど減っていない。過去5年間で見るとほぼ横ばいである。さらに子育てなどで現場を離れているいわゆる「潜在教員」もいる。
E つまりすぐにでも臨採教員になれる人は一定数いるのであって、そういう人たちをいかに取り込んでいけるかが対策のカギとなる。
F そこで文科省は教員の仕事のやりがいなどを広く伝えることで、教員志望のすそ野を広げていきたいとしている。
佐藤光次郎課長の話
「待遇改善は間違いなく働き方改革のひとつの論点に出てくるが、教員という仕事の重みとかやりがいがひとつの選択肢として確実に出てくるような、魅力の発信であるとか、そういったことについて取り組みを進めていきたい」
G しかし専門家は教員のやりがいを訴えるだけではなく、国が財源を確保して採用構造を見直す必要があると指摘する。
慶應義塾大学の佐久間亜紀教授の話
「教員の採用計画を長期的に再検討するということは各自治体がしていかなければいけない。しかし自治体の裁量の範囲では格差が出てしまうので、国の支援は欠かせない」
H ただし現実の問題として今日、困っている自治体もあるので何か即効性のある方策はないものか。
I 教育委員会の中には一定の期間臨採として勤務すれば、正規教員になるための採用試験の一部を免除するなどの措置に乗り出すところも出てきている。
J 特効薬はないにせよ、義務教育の現場で起きっている事だから教育委員会や国はあらゆる対策をとって教員不足の解消を急いでほしい。

 そんな流れだった。

 Web記事と放送原稿を書いた人がそれぞれ別だったようで、そのことが全体の印象を変えてしまったのだと思うが、文部科学省の佐藤光次郎教職員課長の発言など、放送とWebでは正反対で気の毒なような気がした。
 
 佐藤課長の発言はWebでの発言中心に要約・忖度すると、
「負担が重かったり多忙だったりということが、教員のなり手を十分に確保できていない背景だと思う。教員自身が使命感ややりがいのために自らを多忙にしてしまうという側面もあるので、それについてもどう改善していくか、幅広く議論し、人が集まるような環境にしていきたい」

ということで十分理解できる話だが、放送の方は(これも行間を読み込むと)、

「(仕事が大変ということもあるがそれは別に考えるとして)教員という仕事の重みとかやりがい、魅力についての発信を進めていきたい」


といった感じになり、清々しい朝の気分に浸っていた私の頭をうっ血させる(一瞬にして血が昇った)。

 ただしこの部分についてはWeb記事の方が正確なのであって、佐久間教授の言う、
教員になりたいと思う人を増やしていくために、給料だけではなくて働き方や待遇を改善するなど各教育委員会や国は教員の魅力作りを進めていく必要がある
とほとんど同じだったはずだ。
(私は少し留飲を下げる)


 そーノーうーえーでーだ!!(←雰囲気は「ちーがーうーだろー!! バカーーー!!)、
 佐藤課長も佐久間教授もNHKも分かっていないのか、
 佐藤課長や佐久間教授は分かっているのにNHKが分かっていないのか、
 佐藤課長が分かっていて佐久間教授とNHKが分かっていないのか、
 佐藤課長が分かっていなくて佐久間教授とNHKが分かっているのか・・・と、全部の組み合わせを書くと大変なのでこれ以上は書かないが、それぞれツッコミどころが山積である。

 とりあえず記事の順番に従って言えば、佐久間先生、
「臨時採用など非正規の教員は雇用が不安定で給料が低く確保が難しい状況にある」
それは違うだろう。

 佐藤課長、
「最近、特に出産や育児などで休職する教員が増えていることもあり」
なんて、晩婚非婚化・少子化の時代にあって教員のみが多産に走っているってことか?

 NHK、
「つまりすぐにでも臨採教員になれる人は一定数いる」
 それも違う。

 臨採不足の原因のひとつは、言うまでもなく放送の中にあった、
 
今後少子化がさらに進むと教員の定数が削減されるため、教育委員会は正規教員の採用を抑えて臨採の枠を広げている
 つまり需要が増えたことだ。

 そして供給が追いつかないのは、なんと言っても現在の就職状況が超売り手市場だということだ。
 
先月(平成29年5月)の有効求人倍率1.49倍、新規求人倍率は2.31倍。そんな状況で誰が好んで「過労死、基準越え6割」の超ブラック業界に、臨時で身を置くというのだ?それでも臨採に身を投じようという若者はほとんど「聖人」みたいな人たちなのだ。
 そして呆れたことに、「どんな状況でも教師になって、日本の教育に身をささげたい」と思う聖人のような若者は、実は常に一定数いる。ありがたいことだ。
 しかしそれでも拡大する臨採の枠を埋め尽くすほどはいない。聖人は何万人もいたりはしない。
 
 さらにNHK、キミたちはとんでもないことを忘れている(これについて佐藤課長も佐久間教授もアドバイスしなかったのか?) 
 すぐにでも臨採教員になれる人は一定数いる
 のは間違いないが、その数は2009年から激減しているのだ。その年から
教員免許更新制が始まって、免許を持っているだけのペーパー教員は金を払って30時間の更新講習を受けないと、教壇に立てなくなっている
 
 しかも講習を受けられるのは現職教員の他、「教員採用内定者 」や「臨時任用(または非常勤)教員リストに 搭載されている者」「過去に教員として勤務した経験のある者」などに制限されているため、「いつか教員になるかもしれないから一応更新しておこう」といった人は更新できない。
 
 一方、需要の方は計画的な臨採配置や産育休のように、予め分かっている場合だけではない。特に年度途中の需要は
突然の退職、病気療養、懲戒免職、等・・・つまり「明日から来てほしい」といった緊急な場合も少なくない。更新講習を受けていない「潜在教員」は、そこから30時間の更新講習を受け直さなければならないのだ。
 例えば校長の直々の依頼に対しても、こんな返答をする元教員は少なくないはずだ。
「私にまで電話をくださるなんて、先生もよほどお困りのことと思いますし、他ならぬ先生の依頼とあらばお応えするのが当然かと思うのですが、4万円もかけて30時間もの講習を受けなくちゃいけないんですよ。それに夏休みでもないのに、今、受けられる講習ってあります? そもそもこれから取りに行っても間に合いませんでしょ?」

 さらに放送で扱われた例のほとんどがそうであるように、
足りなくて困っているのは単なる「先生」ではなく、「美術の先生」だったり「英語の先生」だったり「音楽の先生」――つまり「特定の免許を持った先生」なのであって、免許があればなんでもいいという訳にはいかない。
 
 教育行政や学校の状況は地方公共団体ごと、ずいぶん違っているので日本全体の様子は分からないが、実は私の県では10年以上前から臨採の不足に苦しんできた。したがって教員免許更新制の概要が発表されたとき、愕然として今日の状況が予想できたのだ。

 ご存知の通り私は元々そんなに人の良い方ではない。
 だから予想が当たった今こそ、「ザマーミロ!!」と叫びたいところだが、困ったことに切羽詰まっているのは文科省や教委ではなく、ましてや免許更新制を言い出した教育再生会議(なんという名だ! 日本の教育は死んでいたのか?)でもなく、最前線の現場なのだ。

 どうする?







2017.07.20

理科実験で爆音、生徒18人病院へ 加東の中学

[神戸新聞NEXT 7月20日]


 兵庫県加東市立滝野中学校(同市下滝野)で1年生の理科の授業中、水素を扱う実験で爆音が発生し、生徒38人のうち耳に違和感を訴えた18人が病院で診察を受けていたことが19日、分かった。いずれの生徒にも異常はなかったという。

 同校などによると14日午前11時半ごろ、若手の理科教諭をサポートしていた教頭(51)が空き缶に水素と酸素を注入し、火を近づけて音を鳴らそうとしたところ爆音が発生した。「耳がおかしい」と訴えた生徒18人に養護教諭が聴力検査を実施。うち7人が聞き取りにくかったため、全員を病院へ連れて行ったという。

 同校は校長と教頭が18人の家庭を訪問して謝罪。後日、他の20人にも聴力検査を行い、教頭が生徒宅に電話で事情を説明した。教頭は現在も耳に違和感があるといい「水素の量が多くなってしまった」と説明。同校は「安全に配慮し、二度と起きないように注意する」としている。(桑野博彰)



 20年前に私が大病した際、医者である友人にこんなふうに言われた。

「お前は大丈夫。少なくとも手術では絶対に死なない。有名じゃないから。
これが有名人だとか財界人だったりすると、大病院なら医院長、大学病院なら学部長とかが出てきて横合いからヤイノヤイノ言うので、時間はかかる手は狂うでみんな殺されてしまう。
しかしお前は無名だから30代で、毎日何例も切ったり貼ったりしている生きのいい外科医があっという間に済ませてくれる。
 だから安心して(手術を)受けてこいや」

 
 これはなかなか名言で教員についても同じことが言える。
 教科指導だの生徒指導だの、
毎日最前線で戦っている生きのいい教師こそ腕がいい。教頭だか校長だか、はたまた元教員だか知らないが、現場を離れて何年も経った者がしゃしゃり出て行って手出し口出しをするとろくなことはない。
 
 私は友人の言葉を教訓として、現場を離れてからは無闇に口出ししないようにした。
 その方がお互いにとって安全なはずだ。
 






2017.07.26

夏休みも休めない、残業も「自発」…先生の「働き方」

[ベネッセ教育情報サイト 7月24日]


政府が進める「働き方改革」の学校版として、中央教育審議会が、国公私立を通じた先生の働き方改革について議論を行っています。とりわけ公立学校の教諭に関しては、小学校で約3割、中学校で約6割が「過労死ライン」にあるという衝撃的な調査結果が明らかになっています。
先生が多忙であることは近年、知られるようになってきましたが、そもそも先生の働き方はどうなっているのでしょう。

子どもに関わる仕事は時間で測れない

公立学校の先生には、残業代が出ないことをご存じでしょうか。
欧米などと違って、日本の学校は、授業だけでなく、生活指導や学校行事などを含め、子どもの知・徳・体に関わる全人的な教育を特質としています。
時間外にも指導に当たる必要性が、日常的に出てきます。そのため戦後以来、一般公務員のような勤務時間の測り方はなじまないとして、給与を優遇する一方、超過勤務手当(残業代)は支給されないこととされてきました。

しかし、既に1960年代から超過勤務が問題視され、66(昭和41)年に当時の文部省が初の全国的な勤務状況調査を実施。その結果に応じて1971(昭和46)年、教職給与特別法(給特法)が制定されました。
残業代の代わりに、教職調整額として給料月額に一律4%を上乗せする一方、時間外勤務を命じることができるのは、(1)生徒の実習(2)学校行事(3)職員会議(4)非常災害等やむを得ない場合……の「超勤4項目」に限定すると明確化されました。

では、それ以外の実質的な残業はどういう扱いなのかというと、教育の専門家である先生個人が「自発性・創造性」に基づいて判断している……と見なされているのです。それも含めての4%というわけです。


「上乗せ」名目で超過勤務が放置

ただ、教職調整額が4%に決まった1966(昭和41)年当時、残業時間はせいぜい月8時間程度でした。それが2006(平成18)年の調査では約42時間と、5倍以上になっていることが明らかになりました。そもそも調査が行われたのも、4%の上乗せ分を何とか削減できないかという財政当局の求めに応じたものだったのですが、もし残業代に切り替えたら、それ以上の財政出動が必要になることがわかり、給与見直し論議はそれっきり沙汰やみになってしまいました。

その後、2016(平成28)年10〜11月にようやく3度目の教員勤務実態調査が小・中学校に限って行われ、10年前よりもさらに小学校で週4時間ほど、中学校で週5時間ほど勤務時間が増えている実態が明らかになりました。
学力向上はもとより、いじめ・不登校・発達障害などへの対応など、先生に求められる仕事は増える一方なのに、あくまで「自発的」という建前から、超過勤務が放置されていた側面は否めません。

ところで昔、先生は夏休み中、子どもと同じように休んでいると世間からは思われている時代がありました。今でもそう思っている人がいるようです。しかし昔も、あくまで出勤・退勤管理に縛られないというだけで、校内外で「自発的・創造的」な研究・研修などに従事していたのが実際です。その後、2000年代になって、多くの教育委員会で勤務管理が厳密化され、特に理由がなければ学校に出勤するよう求める運用がなされています。2006(平成18)年の勤務実態調査でも、夏休み期間中に1時間前後の残業・持ち帰り仕事をしていることが明らかになっています。

学習指導要領の改訂で、先生の仕事は今後ますます増えそうです。正確な実態を踏まえた「働き方改革」を論議してほしいものです。

教員の働き方改革(6月22日の中教審配付資料)

1966年と2006年の教員勤務実態調査の比較

(筆者:渡辺敦司)



 まことに要領よく、端的にまとめていただいてありがたいことだ。
 とくに、
そもそも調査が行われたのも、4%の上乗せ分を何とか削減できないかという財政当局の求めに応じたものだったのですが、もし残業代に切り替えたら、それ以上の財政出動が必要になることがわかり、給与見直し論議はそれっきり沙汰やみになってしまいました。
という部分、2006年のことは私もよく覚えているので懐かしく笑ってしまった。

 実はこの調査の直前、財務省は周到に種まきをしており、4%の調整手当を「仕事(時間外勤務)をしなくても貰えるヤミ給与」みたいな話を先に出していたのでネット社会でも大騒ぎだった。
「ホラ見ろ!! やっぱりあった教師のもらい得!!」
 そこで「働かなかった分は教員になった時まで遡って返納させろ!」といった話まで出て大いに盛り上がったが、蓋を開けたら5倍の時間外労働。「教員になった時まで遡って」どころか来年の分も払えないことが分かって一斉に黙ってしまった、そういう珍事件だった。
  
 もっとも残業手当を創設してその分を払って貰えれば教員は満足、という話にはならない。そんな制度ができあがったら校長や副校長の最重要の仕事は職員を帰宅させることになり、
仕事は減らないのに家に帰された職員は残りを全部持ち帰らざるを得ず不満はさらに高まる
 どうひっくり返したって仕事を減らすか教員定数を増やすか――そのどちらあしかないのに、それもしないで「働き方改革」とか言ったって結局は教員の負担による、見せかけの労働時間削減しか道はない。
 
 2006年にみんな黙ってしまったように、今回も1〜2年あれこれ騒いだ挙句、国や都道府県は「教員の時間外労働30%を支持!」とか打ち上げて、学校も最初の1年間は曲りなりにも守っているふりをして、2〜3年後には元の木阿弥。
 国や都道府県は「ボク、やれって言ったよな、言ったよな。やらなかったのは結局お前らの方だよね。だからボクには責任ないよ。覚えていてね、ボクたち本当に言ったからね」
ということになって、またいつか、たくさんの教員が死んだり病気になって問題がぶり返したら、その時はその時で別に考えればいいんだ! (と思っているのかな?)

*渡辺先生の記事はとてもよくできているが、できれば4%の調整手当について、普通の人間の感覚に響く表現にしていただければよりよかった。
 そこで私がやる。

 日本全国でもっとも給与水準の高いのがおそらく東京都なので、そこで4%がどの程度の金額か確認してみる。
(ちなみに4%は支給額に対するものではなく、本給に対するものであってしかも管理職は貰えない)

【東京都の場合】
 初任給      247500円(*1)  それに対する4%の調整手当、 9900円
 平均給与(本俸) 342472円(*2)  それに対する4%の調整手当  13699円
 給与表上の最高額(6級85号俸はおそらく管理職用と思うが一応計算すると)
          505200円  それに対する4%の調整手当  20208円


 これで無限に働いてくれるのだから日本の教員は使いやすい。

 また、更にちなみに、それが過労死基準ギリギリの80時間の時間外労働だったとすると、
 初任者の場合で時給124円。平均給与者で時給171円。本当は存在しないが最高額を貰っている非管理職教員で時給253円。
 ・・・なんか吐きそうな気分になってきた。

*1)「東京都公立学校教員採用案内」
*2)「都職員の給与の状況」(第35回)の概要について)
*3)東京都職員給料表(平成29年4月1日適用)