4、好き嫌いでけっこう!

子どもの言い方が良いか悪いかということは、つまるところ好き嫌いの問題である。

「きちんとした言い方が好きで自分もしたい」という気持ちを、われわれは「道徳心」と呼んでいるが、例題の父親にはそうした感覚がない。

教育評論家の言う「子どもは納得しさえすればなんでもするモンです」の裏返しで「近頃の子どもは納得しないと何もしませんからねェ」などと呑気に構えている人もいるが、それこそ大問題じゃないか?

世の中、納得できることだけやってたらラチが開かんだろう。

「足を投げ出してメシを食うな」
「変な服装はするな」
「言葉遣いに気をつけろ」……
「先生の言うことはしっかり聞け」
「たまには庭仕事も手伝え」
は、理屈じゃない。

「勉強が将来いかに役立つか」とか「一流大学を出た方が得だ」とかといった話も理屈じゃない。
これらはすべて、きちんと説明しようとすると必ずドロ沼にはまる。

この点息子の方はしっかりしている。
好き嫌いで言われると勝負にならないから「好き嫌いで言われちゃかなわないよ」と言うのだ。
だったらこちらは好き嫌いで話をするべきだ。